
幸せの光の中で
「祝言をあげるのならば、それなりの恰好が必要だろう?」
少し照れくさそうに『甘縄家の守り神』ハシバミは応える。
ハシバミの姿は清らかな正装に変わっていた。
「僕は……」
戦いが終わり擦れた衣装を恥ずかしく思っているのだろう。
ハシバミは白菊の手を取り指先に口づける。
「どんな姿とて、君の愛らしさには変わり無い。それにほら、皆も同じ気持ちだろう。見てごらん……」
白菊は頬を染めながら見守ってくれているレイヴンズを見上げた。
僅かに残された二人の時間。
夜明けと共にやってくる、別れの時。
ささやかな結婚式を、皆が祝ってくれる。
「ありがとうございます……」
白菊はハシバミの手に指先を乗せ幸せそうに微笑んだ。
幸せだった。
本当に、幸せだったのだ。
レイヴンズたちがくれた言葉の数々が浮かんでは消えていく。
「僕は、貴方たちのことが大好きでした」
ありがとう。
ありがとう。
ありがとう――
この幸せな気持ちのまま旅立てること。
大切な人と共に歩めること。
寂しくない、なんて嘘だけれど。
笑顔で見送ってほしい。
だって、きっと泣いてしまうから。
笑顔で旅立ったと覚えていてほしいから。
だから。
ねえ、どうか――
「では、いってきます」
僕は幸せでした。