山あり谷あり。人生の苦楽とはそうとも称される、が、この場合は比喩表現ではなく本来の意味での事である。
富士橋頭保としてK.Y.R.I.E.が御殿場周辺に新規設置を行う拠点を出立し、数度の野営を行いながらも辿り着いた山頂より見下ろした甲府盆地の姿に『無墜の織り手』キキ(
r2p000208)は「すげえな」とそう呟いた。
「
アストラチカの情報通り水没してやがる。それで、どうする? 一先ずここにも拠点設営するか?」
これまで能力者達は精霊や変異体との戦闘をこなしながらもいくつかの中継ポイントを作り上げてここまでやって来たのだ。
「ほあ~~~~~~」
見下ろせば、眩いばかりの湖面が映る。うんと背を伸ばすぽろちょ(
r2p000634)はぱちくりとその大きな瞳を瞬かせてから振り向いた。
「すっごくない? これなに? ロケーション良すぎない? 映え地っぽい。ここをぱっぴーにょ出張店とする!」
「ぽろ、ぽろ。ここ、何か分かってる?」
問い掛けた『ブリッツシルト』門司 司(
r2p001053)にぽろちょは「えーと?」と首を傾いだ。
目の前に存在するのは旧時代の呼び方をするならば
甲府盆地である。
山梨県の中央部に位置する逆三角形の扇状地に築かれた街は今や湖底へと姿を消してしまったのか。
「そーいや、甲府盆地が湖底だったっつー湖水伝説とかあるんだったか?」
「え~~? そうなの~……? キキちゃん詳しいねぇ~……♪
あ、でもでも……K.Y.R.I.E.の
資料で、地底湖とかも書いてあったかも~……?」
キョトンとした『ゆめは持っていくね』ヒュプリル・ヒュプノス(
r2p000012)にぽろちょは「ともかく! ぽるとぅぬす? ここに荷物下ろして~!」と声を掛けた。
「そうだね~……♪ ハクさんたち司令部も、ここに中継地を作るって言ってたし~。ヨシ~っ」
前方確認をするヒュプリルは可愛らしいぬいぐるみや飾り付けが出来る小道具を降ろしながら余裕をその表情に浮かべていた。
富士山はキャンプの名所、とも言われている。そしてこれは
山岳訓練みたいなもの。
『お姉ちゃんだもの』ライカ・カルディア・孟夏(
r2p001323)は「ヨシッ!」と前方をびしりと指さした。
「どうやらアガルタ
甲府支部が此処に発足される模様ですし、今はキャンプ△と参りましょう!」
「そうそう……それも山中でなかなかの距離ってなると……それすなわちキャンプ△じゃなぁい?
ここに野営地を作る……。精霊の協力得て街道綺麗に引けば、富士からここまで安心安全だし……」
『一意驀進』結樹 ねいな(
r2p000031)にライカは「キャンプ! キャンプ!」と弾むようにそう言った。
「いやあ~、キャンプ合宿も楽しいだけじゃなくて役に立つもんだねぇ。
いや役に立てれるかどうかはあたし達次第なんだけど、具体的にはごはん作るのに自信がない! 助けてちーちゃん!」
ゆるゆるキャンプガールを楽しむ『英雄の✨光✨』星河 綺羅々(
r2p000053)を『彷徨う心』神籬 チトセ(
r2p005823)はじいと見つめた。
刻陽学園のキャンプ合宿はこうした行軍の際にも役立つようにと必要最低限の備えだけを持ち込むことを推奨されて行われてきた。
それには食材の確保から調理なども行程に含まれていたはずだけれど――「ちーちゃん!」
「……うん、カレー……カレーでしょ? ……カレー粉は、あるけど……。ええい、粉よりルーでしょ。一から作るの面倒なんだから。
私は
こっちやっておくから、設営よろしく。後でシェス先生たちもここに来るなら、ちゃんと拠点整備しなくちゃね」
「あ、そうだね……瓦礫どかして……いい場所探さなきゃ……」
「おっけ~! 天使出たら皆でフクロにしたらいいね! 安全確保するぞ~!」
――こうしてみれば日本と言う小さな極東の島国の中だけでも地形に大きな変化があるのだと嫌でも認識する。
『サン・ソルシエール』マリィ・E・テネブラエ(
r2p000287)は少しばかり頭痛がした気がして「本当に、変わってしまったのね」と肩を竦めた。
「これが甲府盆地だなんて……何て呼ぶべきなのかしら?」
「甲府盆地湖ですにゃ?」
「言いにくいじゃない。甲府湖?」
多数のポルトゥヌスとやって来た『安全運搬保証します!』ハイゼンちゃん(
r2p000184)は建築技能を生かしてハイゼンちゃんハウス――ではなく
アガルタ拠点の作成に着手する。
その様子を眺めていたマリィへ「マリィ様」とおずおずと声を掛けたのは『月を想う』月之瀬・レナ(
r2p000688)だった。
「八尺瓊勾玉。日本では有名な三種の神器、ですね。
自ら転移し、結界を張るなんて……本当に意思を持っているかのようですけど、もしかして、本当に
神のような存在が宿って居たりするのでしょうか……?」
「より力を持った
神秘的物品なんてそんなものでしょう。ましてや、それは日本では神器とまで呼ばれているのだもの」
レナは小さく息を飲む。ならば、その意思を有するかのような神器は自らを前にしてどの様な反応を見せるのか。
湖底に姿を隠した甲府地方に神璽結界の反応はない。『人で無し』紅邑 咲(
r2p000353)は「まだ暫く先でしょうか」とそう呟いた。
「有益な遺物を確保しておくことは、この先の戦いにも有効でしょう。未開の地、ここまで進んできましたが……この先こそが本番かもしれませんね」
マリィの護衛としてその傍に立っていた咲は「ああ、音楽でも流しますか?」と問いかけた。人使いの荒い
師匠は「悪くはないかもね」とそう小さく笑みを零して。
「では、詳細な確認をしておきましょうか。
各地点に中継ポイントをこれでは設置をしてきましたが、ここは要所となる筈です。
……新規の植生に情報のない変異体の多さからアガルタが拠点を欲しているのは確かですが、
湖水伝説の通りに水に溢れてしまっているという事は何らかの影響がこちらにあった、としか考えられない」
告げる『小田原守護役』狗瀬 永利(
r2p000300)に『刻陽大学院夕凪研究室』夕凪・レプト 明織(
r2p000450)は「どう考える?」と問いかけた。
「大破局以後の天使の襲来によるものか、それとも
神璽の移動による影響か。
そのどちらであるかがポイントにはなりそうだけれども、どうとるかだ」
「あ~……そうだね、まあ、後者であると考えた方が良いんじゃない?」
甲府盆地までもが沈んでいる。その様子を見れば『小指の呪い』早苗 秋作(
r2p006854)は心の置き場がない。
房総半島が沈んでいたその上でアストラチカで確認する限り
故郷も影響が大きい筈だ。アストラチカに反映された情報に嘘がないかどうか――それを確かめる糸口であるのがこの甲府遠征でもあったはずだ。
「この辺りには人類も居なさそうだからさ、うん。
運悪く人がいなかったのか、
運良く何もいなかったのかのどちらに賭けるかって話だけれど」
「……後者で。どうやら天使の姿も少なそうです。今後増えてくる可能性はありますが、たらればばかりを話すのも勿体ありませんから」
永利はそっと視線を美しい湖へと差し向けた。この
盆地は松本盆地や、諏訪盆地へと続く構造であるそうだ。
山を下り切ったならば行く先は決まっているか。一先ずは
下る事を意識せねばならぬのは確かだが――
「……次の行く先はどうやら
諏訪で構わないようですね。この水が導いてくれるでしょう」
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