濃霧を進む船は、ゆらゆらと何時しか沈むのではないかと思えてはならない程に波に揉まれ続ける。
「これ、行けんのか」
声を荒げた藤代 柘榴(
r2n000030)に「いける、いける」と雀居 影臣(
r2n000218)は軽く返す。
「いや、無理だろ! 行けねえって!」
「いける、いける」
「バカゲオミ!! 無理だって!!」
「いける、あー、でも重てぇなー、藤代。飛び降りろ」
「くず!!!!」
柘榴が叫べば影臣が軽く返す。からからと楽しげに笑っている男をじらりと睨みつけた柘榴は膨れ面をしたままでKPA-MS-008・オフィーリアにぐらりぐらりと揺られていた。
相模原湖の濃霧を越え、その先に花蝕障の原因がないかと探索をし続ける。ぐらりぐらり、揺らいでいる。
柘榴と影臣がぎゃあぎゃあと言いあっている様子を微笑ましそうに眺めていた奥空 奏音(
r2n000250)は緩やかに顔を上げる。
「……なんだか、風の気配が変わったような……」
頬を撫でた生ぬるい風。花弁が運ばれる方向が変化したように感じられたか。湖面に揺らいでいた花弁を掻き分けるように棒を差し入れてみた奏音はその下には何もない事を幾度となく確かめる。
「奥空? 何かあったのかよ」
「いえ、その……このまま何処に辿り着くのだろう、と思いまして……。この風に従ってみますか?」
オフィーリアを押し出すように風が吹く。霧を掻き分けて進むその船の針路を確認していたカゲオミは「まあ、帰り道は分かってるし行くか?」と振り返った。
「帰るって選択肢はないと思うけどさ、どうする? ハカセ」
「錬金術師だ。ハカセと呼ばれるには不似合いだが……まあ、行こうか」
静かにそう言った錬金術師ロウは葛井 キセイ(
r2p009062)をちらりと見遣った。此処までの情報は集めているか、とその瞳が確かに告げていた事を理解してからキセイは大きく頷く。
「……ロウ、此処まで来たけれど凄く花蝕障の気配が濃い気がする」
ぽつねんと呟いたキセイにロウは「そうだろうな」と呟いた。念のためにと空気を採取しながら此処まで進んでいるが魔力汚染度を測る装置の針は大きく揺れ動いている。
「肉体的に汚染があるわけではないだろうが、眠気などが心配ではあるな……」
「そうですね。身体的に大きな影響がある訳ではなさそうです」
奏音はそう呟いてから、棒がごつりと音を立てた事に気が付く。少しばかり、底が浅くなってきているか。
徐々に霧が晴れてくる――ふと顔を上げた柘榴が「何これ!」と声を上げた。
「洞窟がある!」
そう叫んだ柘榴にロウは「青い洞窟か」とぽつりと呟いた。
薄暗い洞穴は薄い青いヴェールに包まれて入り込めないようになっている。影臣は奏音を一瞥してから棒を寄越せと手をやった。
つん、とヴェールを突く。入れないだろうか。つん、つんともう一度突く。いや、これは入れそうだ。
「行くか?」
影臣は振り返った。ロウは頷いてから「これ、見る限りは
防御障壁にも似通っている……結界だろう」とそう言っただろうか。
緩やかに、緩やかに、ざぱりと音を立てて船は洞穴の中に入り――
「だ、誰だぁ、と、止まれ―――――!!!!!」
何者かの声に、制止をかけられた。
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