「ホント、クソ真面目だよねえ、おねえは!」
長い黒髪に赤目の女が小さく笑う。
死線、東京の渦中にありながら涼やかにお洒落な格好をした彼女に冷淡な青い視線を注いだのは判を押したようにメイド服に身を包んだ女――
エスメラルダだった。
「貴女が不真面目なだけです。ラムダイリス」
声色は硬質の宝石のように夜に輝く。
威圧的なその音調に「こっわ」と肩を竦めた女――ラムダイリスは唇をぺろりと舐めて話を変えた。
「……で、本題なんだけど。どうせお嬢の要求より余分に働いてるんでしょ?
どうなの? 状況」
「命空戯骸の決勝は
座天使タラリアの結界の中で行われています。
座天使のタラリアがあの
クソ男の力を借りて形作るのがこのゲイムなら、我々とてこれに干渉するのは不可能でしょう」
「まぁ、ね。だからお嬢はおねえに観測を頼んだワケでしょ?」
「……正確には貴女にも、です。ラムダイリス」
「そうだっけ?」
口笛を吹いた
双子の妹にエスメラルダは深い溜息を吐いた。
「
お嬢様はゲイムの顛末ばかりを気にしておられるようでした。
まぁ、お嬢様は誰も何も……ディオンめの策謀も
願望機さえ気に留めるような方ではありませんが……
ラムダイリス。貴女の言う通り、可能であれば願望機は我々が回収するべき、とも考えておりました。
勿論、タラリアのゲイム等に乗せられる訳ではない、実力行使で、です」
「ふぅん。まあ、それもいいんじゃない?
結局は熾天使のゲイムはバトルロイヤル。
お嬢が最強無敵なのは分かってるけどさー、遊びすぎじゃん?
態々ディオンだかK.Y.R.I.E.だか
アーカディアIIだかに希望を与えてやる必要なんてないんだしさ」
「でも」とエスメラルダの眉が曇る。
「……?」
「この程、お嬢様から
釘を刺されました」
「ええー?」
「曰く『手を出すな』とのこと。
勿論お嬢様はディオン等歯牙にもかけておりません。その麾下のタラリア等、尚更。
と、いう事は……」
「アーカディアII、或いはK.Y.R.I.E.かー。買われたね、人類。
お嬢って超好き嫌いハッキリしてんのに、これめっちゃ愛されてんじゃん?」
「……………」
憮然としたエスメラルダは妹の雑な発言に辟易とした後、咳払いをした。
「……あながち、貴女の言葉も間違いでは無いのかも」
「ふぅん?」
「一度だけ私もマシロ市に赴いた事はありますが、お嬢様は大層上機嫌でしたからね。
別れ際には、
人間の女の困り事に
おまじないをしてあげる程に。
……珍しい事もあったものですが。ええ、確かに貴女の言う通りなのでしょう」
「納得してない所が、おねえが真面目過ぎる理由なんだけどなあ」
顰め面の
姉の一方でラムダイリスは愉し気に言った。
「それなら堂々とサボ――特等席で
観測させて貰おっか!
いやさ、興味はあったんだよね。
噂のK.Y.R.I.E.。
第五熾天使に煮え湯を飲ませたその実力は本物か、フロックか――
まさか、
座天使何かに好き放題にやられたら……
うーん、
アレクシスだって草葉の陰から化けて出ちゃう!
……ううん、うん、イイ! 盛り上がってきた!!!」
「……………」
――ラムダイリスのあまりにあんまりなお喋りにエスメラルダは今度こそ今日一番の仏頂面を浮かべていた。
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