多摩南街――その場所はアザーバイドによって
汚染された領域だ。
この区画はアザーバイド『フォーカポーカ』によって作り上げられている。彼らは人類がとてもじゃないが生存できない程に汚れ切った街でしか生きていけないらしい。
天使によって自身らの世界が滅ぼされ、命辛々転移をしてきたとされるフォーカポーカの王『ポルカ・ポルカ』は自身らの種の保存の為にこの地に自身らがかろうじて生存できる程度の環境を構築したらしい。
その技術力は高く、されど人類には決して役には立たないものであると
中央街代行政府のノエは判断していた――が。
「ノエ先生は優しいからね。僕達のような判断をしないだけなんだ。
フォーカポーカたちを
飼育して、人類にぶつける爆弾に育て上げておけばいい。手段とは多いに越したことはないからね」
そう告げるのはペストマスクを身に着けていた青年だった。硬質な鋼の翼を有するその天使は崩れる歯車の天冠を有しているか。
その傍には幾人もの天使たちの姿が見えた。一人の天使が「イーリロス」と彼へと呼び掛ける。褐色の肌に、琥珀色の瞳の可愛らしい少女だ。
「もう
行きました?」
「……ああ、そうだね。幾人かは残っているだろうけれど、彼は――
サーカス団団長はもう東京へと抜けただろう。
彼は……東京のゲームの事になると目の色が変わるからね……あまり関わりたくはないんだ。
僕の目的はノエ先生だし、君の目的はシェナちゃんだろう? 東京のゲイムはどうでもいい」
少女は「そうかもね」とそう言ってから肩を竦めた。
召喚士を名乗る天使イーリロスは、少女たちを始めとした天使に
飼育者の役割を与えている。
そうして、フォーカポーカを始めとしたさまざまなアザーバイドを
彼らの技術を用いて使役するのである。
アザーバイド、フォーカポーカは街を一つ作り上げる程度に素晴らしい技術力を有している。その技術の中の一つが
失われた遺産を駆使した使役の機構だ。精神的な支配を行い歯車が肉体に食い込み一体化することで完璧な傀儡とするらしい。
その技術を奪い取る事に成功したイーリロスが今や多摩南街の王者のように君臨しているのだという。
「それでもね、ゲイムの事は無視できない。僕たちにとっても
あれは気になるものだからね」
「あれって……東京のお姫様が持ってる?」
「そう。
彼女が持っているあれがあれば……」
イーリロスはそこまで言ってから「でも、ジュールヴェールには会いたくないんだ」と肩を竦めた。
サーカス団の中で幾人もの天使たちが南街に残っているのは残酷なゲイムには参加をしたくはないと考えた者も多いのかもしれない。
ジュールヴェールは団員たちに何処へ行くにも強制力を持ってはいないだろう。此方の方が幾分か動きやすいと考えた団員たちが遊びまわっている可能性だってある。
「きっとね、人間がこの街を歩き回ってフォーカポーカのからくりに気づいて……支配が逆転してしまったとき。
僕たちが彼らに協力して東京でのゲイムの戦力になる事を狙ってここに呼び寄せたのかもしれないけれど」
「イーリロスは、サーカスの味方はしたくないんですね?」
「しないよ。僕たちの目的は此処にしかないんだ。
……ああ、そうだよ。ここは行き止まりの街なんだ。外の事なんて、何も知りやしなくていい。
東京の海が大荒れであっても、西街に漂う気配がこちらを手招いていたって」
イーリロスはそうと息を吐き出してから、少女を振り返った。
「人間を招く準備だけはしていかないとね。僕達にも相応の準備時間が必要だろうけれど。君は?」
「イーリロスの思うままでいいですよ。だって、
海の暴威なんて誰かが制御できるような代物じゃないでしょうから」
どう足掻こうとも周囲は否応なしに変化していく。今しばらく
停滞の街並みの中で過ごしていたって悪くはない筈なのだと彼女は一層美しく微笑んだ。
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