「今日は雨~。明日は晴れるかな~、んふふ~♪」
「……何を、歌っているの」
ざあざあと雨の音が響いている。メイはその指先でタラリアが作ったばかりのてるてる坊主をつんと突いた。
メイはこの奇妙な首つり人形らしきものが何かを知らなかった。
タラリアがこれはメイが産まれた日本の風習であり、翌日の晴天を願うちょっとした願掛けなのだとそう言った。
「ねえ、このてるてる? ってやつ、どうして緑の目をしているの? 他と比べると少し目も大きい」
「それはメイだよ。それから、これは私❤ 二つ並べて飾っておこう。
あ、これは可愛いだろう? 最近東京で見かけたんだ。
眠たそうな子だったよ」
「……並べないでくれる? それに、わたしにしないでほしい。この隣のやつは?」
「マシロライダー」
「……なにそれ」
タラリアはマシロ市で放送中の特撮番組『マシロライダーアクセル』についてをメイに丁寧に教えてくれる。マシロライダー アクセル(
r2p007848)と名乗っている能力者がいるというのも彼は知識として持ち得ているのだそうだ。
何故か? それはカタルモイッセオの第一回目に彼が素晴らしき結果を残したからだろう。
「これ、何処かに飾ろうか。可愛くできたと思うのだけれど、どうかな? 私は手先も器用だから小道具もしっかり用意できてしまう」
「何のために必要だったの? その首つり人形」
「てるてる坊主だ。ああ、明日は❤七夕❤だからね。折角だからそれに合わせて天の川を挟んでゲームでもしようかと思って」
メイは不可解そうな眼差しをタラリアへと向けた。相変わらず楽し気に次に彼が作り出したのは大きな列車だ。壊速列車 ジャガーノート(
r2p007139)でも模しているのだろうか――?
「って思ったんだけれどね、護るっていうのは素敵だと思ったのさ。いや、ロイヤルナイト(
r2p005240)君と言う子がいて、カタルモイッセオで良い成績を残し続けるから……ゲイムでもその名前に肖ってロイヤルな防衛をしたいなって思ってね」
彼はいそいそと制作物をすべて軒先に吊るし始める。楽し気に飾る彼は明日の天気が晴れる事を願ってやまないようだ。
七夕、とは言っていたがメイはそれが何かはあまり知らない。何故か、タラリアはこのカタルモイが始まってからメイにそうした知識を教え込んでくれている。
テーブルマナーや挨拶、仕草などから始まったかと思えば奇妙な雑学まで「知識を蓄えるのが趣味だ」と言う彼はまるで家庭教師の様に甲斐甲斐しい。
こののち、七夕とは何かを教え、星座について彼が持ち得る知識をメイに教え始めるのだろう。
(まるで、わたしに知識を与えようとしているみたいで、ちょっと気味が悪い)
メイは生まれた頃に天使になった。生物が1度死ねばもう一度はないという事を知らなかった程度に、彼女には一般的な常識や知識が存在していなかった。それを補う様にタラリアがたくさんの知識をメイへと与えてくれる。
と、同時に、嘉神メイの手にはコスモスは持てあます物であるという事だって彼は幾度となく繰り返すのだ。
早く誰かの手に渡るように、誰かに定着させていかなくてはならないねと彼は言う。
この領域を作り上げているのはタラリアの権能というだけではない。
敬愛するべき主の手を借り、コスモスの影響を受け、タラリアはきちんと
遊戯めいた儀式を続けているのだろう。
「ねえ、タラリア。次のゲイムは何をするの?」
「織姫と彦星よろしくそれぞれがグループに分かれてね、銀行強盗❤」
「……なにそれ」
「七夕なのだから、ぱっと遊びたくなってね。ああっと、そうだ。うっかりしていた。
まるで貯食した場所を忘れてしまうリスのようなうっかり具合だ! メイ、短冊に願い事を書くと言い。私も書くよ」
「何て書くの?」
手作りしたというたんざくを差し出してくるタラリアにメイは受け取ってからそうと問うてみた。
この人の事が、良く分からない。自分に沢山の事を教えてくれる。コスモスを引きはがそうとしている気がする。
――でも、この人がコスモスを欲しているわけじゃない。ただ、自分を護るために彼はあまり外には出ないようにしている、ような。
「
お願い事が叶いますように」
ばかね、おねがいをかくんでしょう、とそう言いかけたメイは一度瞬きを繰り返してから「逢いたい動物の名前でも書きなさいよ」とそう言った。
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