第四戦区:丸の内。それは日本最大のオフィス街であり超高層ビル街として中心業務地区としての機能を有する場所であった。
ただし、戦区分けとしては丸の内そのものだけではなく、中央区に千代田区、港区を含んだ都心三区がこの区画に割り当てられている。
銀座や秋葉原、日本橋に新橋、虎ノ門。名を聞くだけでも「東京だ~!」とフォルテール(
r2p008473)は瞳を煌めかせたことだろう。
フォルテール、いや、
トモリは新宿はカブキチョーに存在したプシュケーに拾われて過ごしていた少女だった。
物静かな彼女は終末論に触れ、天使とは如何に素晴らしいかをその性格故に口にすることも出来ず告解した。
トモリはそうしてひっそりと姿を消して、今現在は第四戦区に存在する地下鉄駅を転々としながら過ごしていたのだった。
「少し前にややちゃんときたのちゃんが居たなあ……。それに、
ボブさんとか
転音ちゃんも。
みんなも、動き出したのかな。魔術師の人たちも見たし、この辺りは危険だと、思うけれど……」
天使フォルテールは今は
ブレンダーズの一員としてゲイムに参加している身の上だ。
それでもかつての友人たちを切り捨てる様な非道な真似は出来るまい。
フォルテールが地下に身を隠しているのは電波塔に巣食うバンダースナッチを避ける為であり、地の利を生かして地下鉄線路を伝って他の場所へと逃げ果せる為だった。
噂によれば第一戦区で見事勝利を収めたという人類派閥K.Y.R.I.E.は第二、第三、第四、それから第五戦区への進出についてのルート選択をしているらしい。
今は第二戦区:浅草のみに向かっているが、この第四戦区にやってくる可能性だって否めない。
(さっき、サーカス団の人がいた。……猛獣も居たし、曲芸師も居た……あの人たち、地下の事詳しいからこの辺りに居るんだろうな。
バンダースナッチもあんまり動いてない。普段ならぐるぐる何処かを飛び回るのに……どうかな? 大丈夫かな)
息を潜めたフォルテールは視線をゆらゆらと揺れ動かした。
自分は天使だ。K.Y.R.I.E.と相対した時に真っ先に
狩られる自覚がある。
サーカス団だって信用ならない。彼らは
金の姫君の為ならばなんだってするだろう。
(あ、それに、ティティフィティアとか、私たちブレンダーズだって浅草の偵察しているだけで東京駅とか、その辺りを押さえておきたい気持ちもあったし……危ない事には、違いはない……?)
フォルテールは自身の考えを纏めてから一度はこの場所を離脱し、
リーダーの元に調達した情報の伝達を行わねばならないとそう考えていた事だろう。
彼女は戦う事を好まない。元人間の天使だ。
ただの子供であった過去から戦に慣れていないの事は確かだ。
――だから、気が付かなかったのだろう。
「ねえ」
軽やかな少女の声色だった。ぴたりと足を止めたフォルテールが振り返ればフードを被った少女が立っていた。
猫の耳に、同じ色彩の尾。柔らかな色をした瞳がじっとフォルテールを見ている。
(天使……?)
フォルテールからすれば、同胞にも見えた。が、カタルモイでは天使同士でも争う事はある。目的が違えば、この場では敵だ。
「こんにちは?」
「こんにちは。リノンだよ。キミ、は……ブレンダーズとかの人かな?」
リノン(
r2p008435)と名乗った少女は朗らかに微笑んでから少しずつフォルテールに近づいた。
「え、あ、うん。そう……リノン、ちゃんは? 違うのかな? もしかして、個人参加?」
「うーん、個人ではないけれど。でも丸の内周辺で活動はしているかな。この辺り、人が多いし……。
何よりも、バンダースナッチが居るからみんな地下に逃げて来るでしょ?」
リノンはにんまりと微笑んだ。フォルテールは「あ、たしかに!」と明るく頷く。
話しやすくて優しい人だ。敵じゃなければいいのにな、天使同士だから仲良くできるかも――でも、おかしいな。
丸の内は上空だけじゃなくて地下鉄にも恐ろしい化物が居たはず。
バンダースナッチを避けて地下に潜る人々は、それでもその化物の動きを警戒していた筈だ。
大きく、通路を塞ぐほどの巨体。その体を乗り越える隙間もない程にみちみちと太った桃色の大きな毛玉。
「でも」
フォルテールはリノンを見た。
「
大きなピンクの化物も――」
いるでしょう、と続ける前にフォルテールは後方から何かの息遣いがした気がして振り返った。
至近距離に大きな大きな桃色の生き物がいる。口の端から血潮が垂れ下がり、今まさに何かを食べていましたと言わんばかりに口を動かしている。
「テバサキッ!」
「あ」
フォルテールは一歩、下がった。リノンと逃げなくては――この化物は、 アーケダマル(
r2p006335)は悪食だ。
なんだって食べる。天使でも、人間でも、なんでも。本能のままに腹を満たしてしまう。
「リノン、ちゃ」
「ねえ、その化物ってこの子の事?」
微笑んだリノンは動かなかった。アーケダマルの手がぐっとフォルテールに伸ばされる。
「イケジメッ!」
「あ――――」
――あの子、どうなったの?
問い掛けた白き少女にサーカス団団長ジュールヴェールは「生きているよ」と笑った。
奈落のプリマ(
r2p007406)は「まあ」と驚いたような仕草を大仰なほどに取って見せた。
「生き残れたって言うの?」
「あの飼い主はお利口だね。天使の腕を丸呑みしたアーケダマルに制止をかけてから彼女を逃がした。
アーケダマルはその場で腹を一杯にさせる事はなく、追いかけまわして丸の内地下を暴走中だ」
「ああ、だからあなたも
東京駅に出て来たのね? ジュールヴェール。
困ってしまうものね。駅の外に顔を出せばバンダースナッチ。地下では獲物を追い回しているアーケダマルがお散歩中。
ねえ、どうするのかしら? サーカス団は此処で遊んでいるの?」
「K.Y.R.I.E.諸君がやってくるならば敢て地下に潜ろう。アーケダマル達との楽しいゲイムになるはずだからね!」
「まあ、酷い」
揶揄うようにそう言ったプリマにジュールヴェールは「こういうのは楽しい方が良いものだよ」とそう囁いた。
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