「へろぅ、みらくるきゃんでぃ? 今日もボク様の望む世界を見せてみなッ!
さ~て、良い子だ。ぐるぐる眼鏡。今日は何処にしようかな。多摩のデブアザラシが死んだなら――そうだ、トーキョー!」
きらりと花が咲き誇った極彩色の瞳を瞬かせた少女がスマートフォンを天高く持ち上げた。
自撮り棒としか形容しがたい可愛らしい
ステッキを揺らがせれば、霧の中にモニターのようなものが作り上げられていく。
「ラスピちゃん。東京の様子を覗き見何てして大丈夫なの?」
「大丈夫だぜ。アリア? 流石にチラ見する位で起こり始める程に第九熾天使サマんちの
走狗も文句は言わないべ」
「第一印象で相手のこと知ったつもりにならない方が良いよ」
「……貴女ね、アリアちゃんの言う通りよ。ラスピちゃんがお行儀よく
相模原に居るから、あちらは何もしてこないだけ。
わたし達が東京に踏み込んだとすれば、あの人はきっとお叱りの言葉を話すかもしれないわ」
ラスピと呼ばれた極彩色の少女が唇を尖らせた。「アリア」と黒い魔女帽の少女を呼び、「ヴィヴィ」と純白を纏った女を呼んでから振り返る。
「頭の上に漬物石乗っけてる?」
「ラスピちゃんが適当なだけじゃない?」
「そうね。ラスピちゃんが適当なだけよ」
二人揃って、ラスピの軽はずみな行動に対しての注意を口にした。
相模原の
魔女ラスピは唇を尖らせる。今までは暇つぶしの様に隣近所に当たる多摩南街にいる
デブアザラシだとか
陰湿男と粘着女を覗き見していたのだ。
だが、彼らが消え失せてからというものの退屈だった。暇で、暇で、ついつい作りこんだ
魔女のしもべを東京にまで飛ばせるようになった。
――と、言っても、
しもべが入り込めたのはせいぜいは第六戦区、つまりは
カタルモイッセオなるボーナスゲイムが設置された区画だ。
「ど~れどれどぉれ? はっ! 見てよ、ヴィヴィみたいに
真っ白な餅みたいなのが優勝してるぜ。
隣にリストアップされてるデータは
マシロの女だぜ、相変わらずマシロはちょっとやそっとじゃ負けないもんだなぁ。
それに、
羆とか名高い美女二人が
書架守とも衝突してたか」
「わたしは餅ではないけれど……。毎度観戦しているからすっかり、名前を憶えてしまうものね。
ロイヤルナイトさんという方たちのことはすっかりと覚えてしまったもの。あの人たち、
今回だけじゃなく、1回目と3回目の大会でも優勝をしていたでしょう」
「観戦が板についたじゃないか、ヴィヴィ。ボク様は嬉しいよ。お前さんが覗き見に対してあまりいい気分ではなさそうだったから楽しんでないかと思った」
からからと笑うラスピは手元に「カタルモイッセオボード」なるものを作って遊んでいた。
リストアップされた名前などを見て勝敗を楽しむだけの彼女にとってはただの暇つぶしなのかもしれないが――
「……東京って面白そうだよね。あたしも、少しだけ気になるな。
でも、『
沈まぬ太陽』とかには出会いたくはないな……」
アリアがぽつねんと呟けばラスピが腹を抱えてけらけらと笑い始める「違いはない!」と。
「次、第五回だっけぇ? 記念すべき回じゃないか! ボク様たちも
相模原から観戦して居ようぜ。
トーキョーも
バトってんしょ? なんだっけー」
『第二戦区だよ。それに、もうすぐ第三戦区もかな。ロイヤルナイト君だとかマシロライダー君を見てて思いついたことがあってさ』
「そうそう、第三――ってうわ、気持ち悪い! またお前さん、ボク様の
しもべをジャックしようとしたな!?」
カタルモイッセオを覗いて遊んでいた少女は唐突に目の前のモニターを手で引っ掻くようにして消し去った。
一瞬だけラスピの
ただ覗くだけの魔法に対して紺色の髪の男が映り込んだ。派手なサングラスと初夏を楽しんでいるかのようなラフな服装で登場した彼は相模原の魔女が覗いているならばと気合を入れて着替えでもしてきたかのようだ。
「ラスピちゃん……」
「ほら、言ったじゃない……」
魔女二人が呆れたようにそう言った。引き攣った息を漏らしてから振り返ったラスピは「ボク様のみらくるきゃんでぃが……」と肩を落とす。
「アイツ、お気に入りだったんだぜ。毎回覗き込むとあの男、気が付いたように変な服装でボク様のぐるぐる眼鏡に映り込む。
先週何て酷かったろ? なんだい、あのナース服! その前はメイド服だったじゃないか。初回の魔女ルックなんてアリアをオマージュしたんじゃないかい」
「普通に嫌な気持ちになったけれど」
渋い表情をしたアリアにヴィヴィが苦笑を滲ませた。
なんにせよ、だ。あちらは「楽しみにして居てね」とでも言いたげだ。そろそろ第三区でも
決戦が起こるとラスピたち相模原の魔女に宣言をしてきたという事は――
「K.Y.R.I.E.が手薄になるという事よ、ラスピちゃんどうするの?」
「うっかりとボク様たちの
湖の調査を許したからね、少し仕返しをしておこう。
魔女のしっぺ返しは怖いんだと覚えて貰っておけばいいさ。じわじわと僕らの花は土地を蝕む。
どうやら、走狗クンはボク様達が動き出せばK.Y.R.I.E.の能力者達も大騒ぎするとでも思っているようだ」
「どうする?」
もう一度、ヴィヴィはラスピへと問い掛けた。
「はは、面白いから乗ってやろう! いいかい、
花人。
踊ってらっしゃい!」
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