二月のビッグイベントと言えば――そう、バレンタインである。
「――ああ、道理で学園中がソワソワしてるわけですね!」
刻陽学園でも、横須賀キャンパスでも、
その空気感は同じだった。横キャン生徒である新田 カヤ(
r2p003472)は、廊下を行き交う生徒達のどこか浮ついたかんばせに合点がいく。
「想い人や友垣、お世話になった方へ親愛や感謝の証としてチョコレートを贈り合う……この地球の素敵な文化ですね」
傍らを歩くユリーシア・アレクサンドラ・サレザー(
r2p004935)は神秘的な美貌をニコリと微笑ませた。
「僕、いっぱいチョコもらいましたよ!」
オルフェウスである晄(
r2n000120)はすっかりこの世界の文化にも馴染んできたようだ。嬉しそう~な顔で「いいでしょう~」と微笑む彼に、友人二人も優しい気持ちになる。
「マシロショッピングストリートでは
バレンタインフェアも開催されているんですって、楽しそうです」
「ネットニュースで紹介されていましたね。チョコレートのスイーツがたくさんあると……そちらも気になりますが、チョコレートの香りがするという薔薇にも興味があります」
ユリーシアは端末を操作すると、「ほら」と画面を二人に見せた。「へえ~素敵」と覗き込んだカヤは、ひとつ思い浮かんだ冗句に含み笑った。
「チョコを食べすぎて鼻血を出した人が担ぎ込まれないといいんですけどね!」
「チョコって多量摂取すると鼻血が出るんですか!?」
「あはは、迷信ですよ迷信」
ビックリした晄の顔に、カヤは掌をひらひらさせた。まあ、医療職としては食べすぎや固食は推奨しませんけれどもね。
と、通り過ぎる掲示板がふと目に入った。大海食堂ではチョコレートを扱った限定メニューが提供されているようだ。
「……横須賀キャンパスバレンタインリミテッドスペシャルブルーチョコレートドリンク?」
「長いですね、メニュー名が。ちょっとした早口言葉ですね」
淀みなく発音した晄に、そっとユリーシアが付け加える。
「チョコレートドリンク……青いですねえ……?」
カヤも張り紙を二度見した。すごい色である。横キャン=海というわけで青いようだ。チョコレートと言われて思い浮かぶ色ではない。真っ青だ。ちなみに上にはクリームが波に見立てて載せられて、雪に見立てた銀色のアラザンがまぶされている。
「インパクトがあって横キャンらしいとは思いますが……」
「飲みに行ってみますか? 気になります!」
晄が声を弾ませ提案する。ちょうど、ユリーシアもカヤも次の授業までは時間があった。
「そうですね、試してみるのも一興です」
「二人が行くなら、わたしも飲んでみましょうかね?」
そう頷けば、決まりだ。三人は大海食堂へと歩き出す。
――最中。窓の向こうには青い海。
ちら、と誰もがそれとなく水平線を見やった。
この場に居る誰もが知っている。晄たちも、バレンタインにそわそわしている生徒達も、そして教師達も……
あの海に大怪物クラーケンがいるのだと。
決戦の時は近い。全てを呑み砕く咢の如き波濤の気配を感じながらも――
……今は、バレンタインの浮足立つような
日常を謳歌していたい。
どうか次の年も、
皆でこうやって過ごせますようにと、誰も彼もが願っている。
ロストアーカディア二周年!

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