西街と呼ばれているのは巨大なお屋敷そのものであった。
自らの世界を
天使によって滅ぼされたという巨人はこの一帯を守り抜く為に人類と協力したらしい。
彼が住まう屋敷は人類にとっては巨大だ。旧八王子市一帯に佇むそれは様々なアザーバイド達の隠れ家となっていたらしい。
しかし、彼は死んだ。彼は志半ばで命を落とし――そうして屋敷は放置されたという。
「うん、誰だって死ぬからね。そういうもんではあるんだけどね。
でも、無念だったのかもしれないね。それとも守りたいって気持ちだけが動いたんかな?
わからんけど。まあ、ボクがその
おとぎばなしの巨人がどーこーってのは言えないんだけど」
ニニニ・フェノメナル(
r2n000157)はぱちくり瞬いてからくるりと仲間たちを振り向いた。
「でも、この屋敷の中にはすげーね。魔力ってんの? 巨人の力が溢れかえってる。だからなんだろね。見てみて」
「んえ? えっ!?!」
ぼふりと、尾を驚きに膨らませたのは畑井 瑠卯菜(
r2n000129)だったか。
「ど、どうして、るーなの頭の上に立ってるの!?」
「ん? ここフツーの足場、足場」
歩き回るニニニを追いかけるように瑠卯菜は走り出した。「ほゃゃ……すごい」と彼女は震えるように呟いた。
巨大な階段が目の前に見えている。一段、一段、登っていくが最早登山の域である。見上げた先には天井を歩いているように見えるニニニが降り、振り返れば
下に居るように見えた
少し上にいる凪汐 万尋(
r2n000181)が首を傾げた。
「上も下も、右も左も何もかもがちぐはぐで、あべこべですね。
……屋敷の中に亡き巨人の魔力が溢れかえって、大きく変化したのだと聞いています。
あちらキッチンシンクはまるで海のようでした。ティーカップが小舟の役割を果たしていると聞いています」
「すっごいね! ほゃ~、本当にここは日本?」
ぱちくり、大きな瞳を瞬かせた彼女に万尋も同じ感想を抱いたのだと頷いた。
「どこも彼処もおかしなものね。私、さっきは階段を上ったつもりだったの。けれど、横向きに進んでいたのかも知れないわ。
どこかへと辿り着かないかなとアザーバイドに聞いてみたのだけれど……彼らは自分たちが住まう為に改築作業を行っていたわ。
この大きなお屋敷では私たちはただの小人だもの。
瓶の飲み物をふざけて飲んでしまったのかと思ったわ」
じっとおのれの掌を眺めていた朝機 楪(
r2n000188)は「でも、私達こそ
普通のサイズで、街一つサイズの屋敷に住んでいた巨人が想像もつかない程に巨大だったのかもしれないわ」とそう言った。
「彼はここに逃げ込んできたアザーバイドを守ろうとしていたのかしら?」
「……そう、かも。本当に現実ではないみたいだよね」
石動 結斗(
r2n000024)はゆっくりと歩いてゆく。何か光るものを見かけたかと思えばそれは靄のように霞んで揺らぎ、そうして霧散したかのように思えた。
「あれは?」
「巨人の魔力が、何かを作ったのかもしれない……? 分からない。でも、あっちに可愛いぬいぐるみが居た、けれど……」
「ええ、私も見たわ。私が見たのは可愛らしい西洋人形だったわ。一礼してくれたのだけれど、彼女たちにも何か事情がありそうだった」
ふと、二人は「お~い」と手を振っているニニニと瑠卯菜に気が付いて「行ってみましょう」と歩き出す。
「ティーカップの船には乗りますか?」
ゆらゆら、ぐらぐら。万尋が問いかければ、結斗は「楽しそうだね、……乗ってみてもいいかな?」と囁いた。
此処は空白地帯――その西側。亡き巨人が棲んでいたという、停滞と
残心の街。
※限定クエスト「ピアシング・ブルー」「シャイニング・ブルー」は3月10日23時59分に終了予定です。
ロストアーカディア二周年!
