「ふふ、やっぱり貴女達ったら第六戦区でやんちゃをしていたのね」
反響する地下鉄の中を歩きながら、花月 麻柊は軽やかに笑った。
「えぇ、いつも通りに戦えるわけではないのですけれど……麻柊さま、お叱りにはならないのですか?」
可憐な面持ちに花が咲くように笑みを浮かべたアメリア・レイナード(
r2p008573)は麻柊を見つめてそう首を傾ぐ。
「まぁ。私を遅刻しておいて先に来ている人を怒るような碌で無しだと?」
「……いえ、麻柊さまがそのような方ではないとは分かってはいますよ」
わざとらしく目を瞠って麻柊が言ったのに、アメリアはふるふると首を振って否定しよう。
「ふふっ、冗談よ。私が到着するまでの間、情報を集めておいてとお願いしておいたのは私。咎める理由なんて何もないわ」
アメリアがまだ幼少の時分から良く知るその人は揶揄うように言ってから「頑張ったわね」とそう微笑むのだ。
気安い態度の麻柊にアメリアも碧の瞳を向けて小さく笑みを作った。
「それに、貴女達が第六戦区で暴れてくれているのもタラリア様の目的を達するに当たって重要な事でしょう。
結果的に見れば貴女達が好きに暴れてくれていたことも私達の利益に繋がっている。むしろ褒めてあげる所でしょう」
「……そうであれば良かったです。あの、麻柊さま」
「なぁに?」
「私達はこれからどうする予定なんですか? 終鐘教会の
指導者さまは既に東京を後にされたそうです。
今、私達が居るのは第三戦区を抜けて第二戦区……ですよね?
アルマ=ミラ修道院やアルコ・イリスの皆さまは第三戦区に居られたはずです。会主様は終鐘教会へ協力せよと私達を送り出したはずですが」
そう言いながらアメリアが立ち止まって少女の身の丈よりも巨大な斧を寄せる。
会主への忠誠心の高き娘は、執行者と呼ばれる劔醒会へ反抗的な存在、スパイ、思想に従えぬ裏切り者を粛正する役目を持つ。
「あ、もしかして和魂同塵紫雲の会やネオフォボスの方々が居るという第五戦区へ向かうのですか?」
「いいえ。第五戦区には行かないわ。私達はこのまま第二戦区に残るの」
「それは会主様のご命令に反するのではないですか?」
「いいえ。会主様のご命令にも反しもしない。私達はこれからカタルモイに
本格的に参加するわ。
会主様のご命令の通りに、終鐘教会に協力して今のK.Y.R.I.E.がどれほどの勢力かを調べに来ただけ、だったけれど。
でも状況はとっくに変わってしまった。此処に居るのは終鐘教会の協力組織であって教会ではない。
墓守ゲームでK.Y.R.I.E.の力を知ることも出来た」
「だからカタルモイに参加するんですか? でも――」
「私達はね、
タラリア様の望むとおりの形でこのゲイムを終わらせるの。
第三戦区には第八熾天使派の子達が居たみたいだけれど、劔醒会の総体を見たら子供達の王国と組む理由なんて何もないわ。
第九熾天使派に少しでも顔を覚えて頂ければ充分」
「……カタルモイは、第九熾天使様に顔を覚えて頂くには丁度いい、ですか」
「そう言うことよ。第九熾天使様に
この程度の事を恩だなんて思って頂けるかは知らないけれど……
少なくとも多少は覚えて貰えるでしょう……きっとね」
「そういうこと、でしたら……」
「だからまずは、これから起こるっていう第二戦区の決戦、電波ジャックゲームに参加するの。
K.Y.R.I.E.は当然として、ティティフィティアやブレンダーズに都立黑殘小学校教育研究会、どうぶつさんファミリーの天使達に。
それから第二戦区からは退いたっていうプシュケーにも覚えてもらいましょう、ね?」
麻柊がそう言って首を傾げれば、アメリアはこくんと頷いた。
「私達は劔醒会よ。会主様の手足として幾らだって殺してきた。神秘と俗世の境界線なんて、とっくの昔に曖昧になったこの世界で、律儀にそれを守ろうだなんてする
花蔭流と対峙して、一般的に終末論者だなんて言われるとおりの所業をしてきたわ。そうでしょう?」
こくんとアメリアがまた頷く。少女を慰めるように麻柊は微笑んだ。
「今更、この
儀式を望まれた通りに繋ぐことに何のためらいがあるのでしょう。
大丈夫、貴女が死ぬ前に私がきっと死ぬからね。まぁ、まだ死ぬつもりなんて毛頭ないけれど」
碧眼が瞬いて、少しだけ悲しそうに揺れる。その少女の頬に触れて麻柊は「それにね」と続けよう。
「
会主様が探し求めていた伴侶が……巫がK.Y.R.I.E.の能力者の中に居たそうよ。
彼を手に入れることが出来るのなら、どちらにせよ参加する価値があるでしょう」
目を瞠って驚いたアメリアにくすりと麻柊はもう一度微笑んだ。
命空骸戯 - 旧展示場要塞システム/ゲイム・ルール
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