「
それ、どうやって見つけたのか知らないけど、こっちに渡してもらえないかな? オマエらにそれを取られるのは流石のボクとしてもちょっと看過できないんだよね」
その手に紅蓮の炎を帯びてシュウリはその天使らを睥睨する。
「ふふ、こういうものは早い者勝ちだと思うのですけれど……」
不機嫌を隠さぬシュウリを見つめ射干玉の髪をした女、エミリアは柔らかく笑った。
「ボクらがカタルモイに参加してたのだってそれを探し求めてたからだ。
だからこそ、まさかこのタイミングで横から掻っ攫われるとか、流石に腸が煮えくり返るんだけど」
眉を顰め、赤黒い焔を手にした少年の戦意は苛立ちに燃え続けている。
カタルモイにおいて、
焔狗とそう名乗る派閥があった。
第八熾天使の麾下戦力でありながら、第九熾天使とその麾下が織りなす東京を使った儀式に参戦していた派閥である。
彼らは第八熾天使派の例にもれず子供達で構成されながら、大人達をゲーム上の駒として扱ってきた。
それは大人といういつでも切れる駒を使い、あくまでも第八熾天使派の戦力を損耗させないという小狡い子供の浅知恵であったか。
決勝戦を前に焔狗のシュウリは
リタイアを選び、子供達は離脱し、その派閥は解体されたと言えるだろう。
だから此処から先の焔狗やちゃちゃまるのような第八熾天使派はカタルモイの参加者ではなく、
第九熾天使派とも仲が良い、
第八熾天使派というゲストともいえようか。
そもそも彼らは何をしに態々遠路はるばると東京なんて場所にまでやってきて、
ゲームを楽しんでいたのか。
京都に降臨した第八子熾天使派は京都と御津那海町と呼ばれる旧岐阜県東濃地域にて活動をしている。
そんな彼らが、態々第九熾天使派の手が伸びる東京にやってくる理由なんて言うのは表向きにはそう多くはない。
「そんなにこの
玩具が気がかりなのですね、第八熾天使派の中位天使様が目くじらを立てて探し求めるような物でしょうか?」
エミリアはそう言いながら手にした長剣を軽く振るってみせた。
美しい黒い剣身から放たれる
朧気な神気を放つその一振りの剣は、草薙剣。
この日本呼ばれた国家においては
三種の神器の一つ、武の象徴として伝わってきた代物だ。
三種の神器のうち剣と呼ばれる物は二つある。御津那海の地に存在する草薙剣は、
二つに別たれた。
折れた神剣の片割れはスクナと呼ばれる神様の手で殺され続け、もう片割れはK.Y.R.I.E.の能力者と共に抵抗を続けているらしい。
それは名古屋の地にずっと存在し続け、大戦期に遍座し御津那海に遷っただけの剣だ。
その一方、嘗てこの国で最も栄えた町――その中枢に草薙剣はもう一振り存在していた。
形代として旧江戸城に存在したそれは、八尺瓊勾玉が東京から姿を消したのと同時期にその姿を確認できなくなった。
「勾玉が東京に戻ってきた――あぁ、そっか。だからか? ちゃちゃまるさん達が東京に勾玉を運び込まれたって言ってたな。
コスモスを安全に制御するための楔にする、だっけ……そのために勾玉が東京に入ったから、身を隠してた剣も姿を見せたって話?」
そうして、
それこそが第八熾天使派である焔狗がわざわざ東京での活動をしていたその理由である。
第八熾天使様に傷をつけうる可能性を持つ神秘兵装には出来れば折れていてもらうのが
ちゃちゃまるとシュウリの共通見解だった。
――だからこそ。目の前の女に奪われているのは、少しだけ気に食わず。
同時に都合がいい。
「渡す気はなさそうだね。だったらいいよ、渡さなくて。ボクの仕事は
それを壊すことだ。
形代として使えないぐらいに完膚なきまでに焼き尽くして、へし折るまで」
「――ふふふ、それは楽しみですね」
目を細めてエミリアがそう告げたシュウリへと笑い、魔力の刀を展開していく。
「東京には、私があります」
深蘇芳の瞳が静かにあなたを見つめていた。
実に少女らしい声音と言葉遣いで接しているいつもの彼女とは、纏う雰囲気がどこか違っていた。
ただの八重(
r2n000260)ではなく、神霊『草薙剣』として其処に立っているというのが空気から感じ取れた。
「八尺瓊勾玉――アオノちゃんが無事に東京へと辿り着いたと聞きました。
実はアオノちゃんが東京に行く時、こっそりともう1つ話をしてたことがあります」
困ったように眉を顰めて八重はそう呟いた。
「それがもしかしたら東京にいるかもしれない
もう一つの草薙剣の事です。三種の神器の剣と呼ばれる物は2つあります。
それが、この御津那海にいるわたし
達と東京にある
形代と呼ばれるもの。
勾玉が東京を離れた時、東京にあった形代は姿を隠しました」
そう言いながら八重はその手に一振りの剣を抱く。
「わたし達と形代は神秘解釈上は同一の存在です。
わたし達が折れても、形代が折れていなければ修繕することは出来ます。
どうか、形代を原形を保ったままで回収をしてきてほしいのです」
少しだけ困ったように笑って、八重はそう言った。
命空骸戯 - 旧展示場要塞システム/ゲイム・ルール
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