濃い群青の夜に星が瞬く。
何処までも続く夜空の中に浮かんでいる感覚。星の導きに呼び出されたのだろう。『星導逆行』ウィリアム・ペンスフォード(
r2n000022)はゆっくりと視線を上げた。
「やぁやぁ! 元気にしてるかい? ウィリアム」
「……お前の顔を見るだけで不快になるよ」
「つれないなぁ。昔は僕のこと大好きだったくせに」
星の導きはウィリアムの周りをくるりと一週する。
「でも……もうそろそろ君の『輝き』も尽きる頃なんじゃない?」
愉しそうな星の導きの声が空間に響いた。
タラリアとの接触により星の導きはコスモスの影響を受けている。
願望器として似通った性質を持つが故に濃く深く侵食するのだろう。
故に、星の導きの宿主であるウィリアムは非常に強力な力を得た。その代わりにカタルモイフィールドから出られないのだ。
それは『アーケダマル』と同じく――
長くは、持たない
「それに、こそこそと美夢に掛けてた術式……あれは身体の機能を補うなんて便利なものじゃないだろう? 君自身の身体機能で肩代わりしているだけのものだ。
つまり、自分の寿命を食い潰してあの女を生かしているんだ。どうしてそこまでするのかなぁ?」
「大切な家族だからだ」
「家族! ペンスフォードから逃げた君が家族! でも、一番星は? 家族より大切な一番星が君には必要なんじゃないの? マシロに置いてきてさ。そんなの面白くないよねえ?」
夜の空間が真っ白に解けていく。
ウィリアムは辺りを見渡しながら星の導きを睨み付けた。
「何をする……!」
「ふふふ、何って君が一番苦しむ姿を見たいんだ。その激情、慟哭、心からの叫び。なんて愉しいんだろう! 君も愉しいことが好きだろう?」
視界が真っ白に弾け、ウィリアムの意識は現実世界へと戻って来る。
けれど、何かがおかしかった。
自分が自分で無いような感覚がある。
足を動かそうとしても、ウィリアムの意に反して手が動いた。
「ふふ、君の身体乗っ取ちゃった!」
自分の声が聞こえる。
けれど、それはウィリアムではない『星の導き』の言葉だった。
「やっぱり、一番星は必要だよねぇ?」
星の導きは懐から星が煌めくペンデュラムを取り出す。
それはホムンクルスたちと意思疎通が出来る魔道具だった。
「――Y15号。聞こえるか?」
Y15号は結斗と一緒に居るホムンクルスだった。彼らは今、東京を離れマシロ市に戻っている。
『はい。マスター聞こえています』
何をする気だ。止めろ、とウィリアムが心の中で叫んでも、身体を乗っ取った星の導きの言葉を止める事はできない。
「結斗を東京に連れて来て。僕の所まで」
『承知しました』
伝達を終えたペンデュラムが輝きを喪う。
「ふふふ、どうだい? 僕からの最高のプレゼントだよ! 君の目の前で結斗を殺してあげよう。そうすれば君は心からの悲鳴を上げてくれるだろう?」
――約束したんだ。あの昔日に。
自分に着いてくれば面白いものが見られるって。
ペンスフォードの
少年と約束をした。
最初は些細なおまじないだった。
けれど、大妖精の欲は底無しで、面白いものを貪欲に求め続けた。
その為には多少手助けをしたり導いてやったりもした。
人間の情動や命が一番輝く瞬間が好みだった。
それは、死の瞬間。絶望に打ちひしがれた時が一番輝くのだ。
「ああ、楽しみだなぁ!」
星の導きの愉しげな声を聞きながらウィリアムは冷静に魔力の巡りを辿っていた。
意識があるということは精神は乗っ取られていない。精神まで乗っ取ると『楽しめない』からだろう。悪趣味で反吐が出る。
奪われたのは身体の主導権のみ。魔力の巡りもこちら側にある。
驕り、慢心していろ、星の導き。
人間はお前の思い通りになんてならない!
※イラストオプションに『
祇化』が実装されました。(用語説明:
呪創/
祇化)
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