――ぼくらだって、そろそろどうするか決めなくちゃならないぜ。
その通りだ。流れに合わせているだけでは
クソ野郎の思う壺。
ティティフィティアを率いる冬青のかんばせを思い浮かべてから栞 咲願(
r2p008061)は深く息を吐き出した。
――あいつらは恵まれた人間だ。どれだけ不幸な境遇に身を置いていたって今は暖かい布団で眠り、食事だって特権の様に与えられる。
確かに、そうだろう。プシュケーは
一度は旧横浜市救済キャンプに見捨てられたと考えるべきだ。
咲願だって知っている。大人たちは都合よく楽園行のバスに乗り合わせた人間だけをマシロ市と言う救済キャンプに受け入れ、その他の救出は一度たりとも考えなかった。
生きるためだから仕方がなかった? ――そうだろう。
悪気があったわけじゃなかった? ――そうだろう。
――ぼくらはあいつらに見捨てられたんだぜ。今、恵まれてるから
今更此方にどうぞ何てツラしてさ。
理解はできる。プシュケーは何方かと言えばもとより中立派閥だ。
マシロ市と呼ばれた旧横浜市街に立ち上がった都市計画に恨み節をぶつける人間はティティフィティアに大半が離脱済みである。
今を生きる者から見れば過去の話であり、いかんともしがたい実情があった事は確かだろうが。
――ぼくら全員を楽園行のバスには乗せられなかった奴らが、今は人類の英雄気取り! 手の届く範囲も救えない癖にさあ!
「冬青……
浅紗、それでも僕達は……」
咲願は俯き、意を決してからプシュケーの面々へと向き直った。
大原 努(
r2p008440)は鼻先で笑ってから
リーダーを見遣る。
「迷ったにしては良い顔してるんじゃない? まあ、でもさあ。賭け事ってのはどう転ぶか分からないもんだよ。
バカはバカらしくまっすぐ進んでった方が良いんじゃない? ま、未来ってのは見えない方が面白いもんだけれどさ」
咲願の前に幾つかボーナスチップがじゃらりと落とされた。1、2、3――プシュケーがタラリアから貰った特権が彼の手から手放される。
「……そうね。まだ時間はあるかもしれないけれど。
皆で生き残れたらいいわね。って、こんなことを言うべきかは分からないけれど?」
くすりと笑ってから指先でそうと自身のデバイスに触れた甘良 黄昏(
r2p008537) が咲願の肩を叩いた。
「決めたんだろう?」
目の前には本庄 宗助(
r2p008410)が立っている。
栞 咲願は彼を見つめ、真っ先に――
陽一と呼んだ。
「……ああ、ごめん。宗助」
「いいよ。ある意味、それが答えだよ」
宗助はこれから、この場所を離れる事に決めた。咲願は確かめるように一人、一人に向き合っている。
第三戦区での
決戦が急ぎ足で始まってくれたのはある意味プシュケーにとって幸運だった。
その分、一人一人に向き合う事が出来る。
「まるで、冬青が居なくなったときみたいだね。あの時も、ボクたちは仲間に武器を向けるのかと葛藤した。
……冬青みたいに力を手にして、引きこもるんじゃなくて外に走って行っていれば、今、こんな選択をしなかった?」
「どうかな」
「天使たちがやってきて、防衛だけじゃ耐え切れなかった30年だった。
確かに、
軍場 冬青の様にただ我武者羅に戦う事を選んだ奴が居なかったらボクらはカタルモイ所ではなかったかもしれないね」
「……そうだね」
「でも、次は咲願が
同じ道を選ぶんだ」
皮肉なものだな、と宗助は肩を竦めた。こういう時、
陽一なら何て言っただろう。
冬青は陽一を好ましく思っていた。「陽ちゃん、咲願を護ってね」なんて笑っていたあのクソガキだって――
「あの時、ボクが死ねば」
「宗助。それは言わない約束だっただろ」
「……うん、ごめんね。咲願。
どうか君の願いが叶いますように」
宗助のその言葉に、咲願は唇を噛みしめてから俯いた。
いつだって、
魂は繋がっている。それが何よりも、苦しい。
――咲願、どうかきみの願いが叶いますように。
そう笑った冬青を思い出してから、咲願は嘆息してから「またね」と宗助たちの背中を見送った。
「きっと、冬青は怒るよ。あれで居て勘が良い方なんだから」
そう告げる御徒待・小町(
r2p008548)の頬をつんと突いてから清光寺・聖架(
r2p008442)がくすりと笑う。
「そうですね。……そよちゃんはなんだかんだで咲願ちゃんのことをちゃんと家族だと思っていたようですし。
けれど黙ってサンドバッグにはなれませんからね。私達も、選びましょう。
他の子にも伝えるのならば多少の荷物を分けてください。共に、背負いますよ。
私達は
一人ずつ決めなくてはならないのですから。この居場所を護るために、如何して行くのかを」
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