『おかえり、新人ども!』
BAR・ソムニウム・セカンド。
冒険者達が常騒ぎ立てる、まさに冒険者の酒場めいたその光景は、今日この瞬間、いつも以上に騒ぎ立てられることになっていた。
「ほらほら、もっと胸張ったら~? 無事に帰還できたんだからさぁ~❤」
高町清子……ハニーラブリーラビットが、ケタケタと笑いながら、
新人冒険者達をはやし立てる。
多摩、北区。それは、廃墟と未知なる迷宮の地域。東区、西区、南区とも違う、空白地帯多摩の姿を、レイヴンズ達はその身を以て確認、体験したわけだ。
多摩北区には、広大な迷宮が広がっている。このソムニウム・セカンドは、その迷宮に蓋をするように設置されており、同時に迷宮に潜るための拠点ともなっているのだ。
「……! 踏破成功、したのね! 私たち!」
猪市 鍵子(
r2p000636)が、はぁ、とため息をついた。胸がバクバクと高鳴ると同時に、
麻痺していた死への恐怖が復活する感覚を思い出す。
多摩北区の迷宮は、
三度死ねるという特殊なルールを課された迷宮だった。迷宮内では、死の痛みや恐怖は麻痺しており、迷宮から離脱することで、健常な状態に戻る。その際に肉体・精神的に影響が出ていないことは、多くのものが確認し、確定している事実である――。
「……無傷。とは……行きま。せん、でした。が……」
わずかに悔しそうに言うのは、北靈院 命(
r2p000308)である。実際のところ、
被害は出てしまった。
死亡カウントは確かに上昇していたのだ。もちろん、それを乗り越え、踏破に成功したことは事実であるが、パーフェクトゲームを目指したレイヴンズ達にとっては、いささか心残りにはなっただろうか。
「まぁ、無事に踏破できたことを喜ぶとよいよ」
健闘をたたえるように、七井 あむ(
r2n000094)はみなに笑いかけた。あむの言うとおりだ。今は、勝利を誇るべき時だろう。
「とはいえ――喜んでばかりも居られないのだよね」
ふむ、とうなる『白き魔狼』四方 ヤシロ(
r2p000334)の表情は、些か暗いものがある。
「多摩地区の東西、そして南区の問題は解決していない。
それに、クラーケンを突破したとはいえ、その先には――」
「……東京、だね……」
静かに、結樹 ねいな(
r2p000031)はつぶやいた。そう、我々の行き先には、様々な道が示されているはずだ。それは、新たな戦いの道行きを示す事実であり、我々は未だ安息を手にしたこと訳ではない、という厳然たる現実だった。
「でも……まぁ、今回もなんとかなったんだし……。
次もなんとかなるって……にへへ……」
ねいなは笑う。それは、あまりにも楽観的すぎるものの見方だろうか? 否、陰鬱な未来のみを想像することは容易く、その憐憫に己を浸すこともまた容易だろう。だが、だからこそ、楽観的といえようとも、前へ、前へ、進むのだ、と、考えるしかないのだ。
「うーん、走り続けないと生きていけない、なんてね。
でも、体力には自信があるから、どんな道だって、走りきってみせる!」
ふふふ、と、小鳥遊 凪(
r2p000422)は勇敢に笑って見せた。そう、どんな道があろうと、どんな困難があろうと、進んでみせる。突破してみせる――そう、こんなめちゃくちゃな迷宮だって、突破できたのだから!
「とりあえず、迷宮の本格的な探索は、もう少しまってくれ。
こっちにも準備がある――まぁ、びっくりするようなこともあるだろうからな」
ハニーラブリーラビットがそういうのへ、レイヴンズ達は頷いて見せた。
「まぁ、それはそれとして……今日は、のんびりして行ってねぇ~❤
ていうか皆もここで働く? らびちゃんの婚活邪魔しないならぁ、誰でもオッケー❤」
「……え、制服がバニーだったりする?」
鍵子がそういうのへ、ハニーラブリーラビットが、くすくすと笑った。
「別に、好きなの着てもいいけどぉ? 皆、同じかっこする?」
「考えておきます……」
鍵子が目をそらすのへ、仲間達は楽しそうに笑って見せた。
ソムニウム・セカンドは今日も
冒険者達の賑やかな声が響き、自分たちも
あの中の一人になるのだと、確信する日であった――
→K.Y.R.I.E.茫失者名簿が作成されました
