刻陽学園学友会連合ブラックシープからの頼まれごとの書類を手にK.Y.R.I.E.にやってきていた黄鶲 リン(
r2p007094)は久方ぶりに
彼の姿を見た。
「あっ、ちくちくさん。こんにちは!」
「やあ。リンさん。今日は何かの書類を届けに来たのかな?」
朗らかに答えたのはずんぐりむっくりとしたハリネズミ――こと、K.Y.R.I.E.オペレーターのはしばみ(
r2p005874)だった。
初等部の生徒たちにK.Y.R.I.E.の案内を行う人事統合部所属の
ちくちくさんはリンのような
非能力者にとっても馴染み深い存在だ。
刻陽学園に所属する生徒たちは、能力者でなくとも事務方でK.Y.R.I.E.の職員となる事もある。
マシロ市の生活と天使特別対策室は切っても切り離せない関係性だからだ。
はしばみはリンから書類を受け取ってから、興味深そうに周囲を見回す彼女を見上げる。
「あ、ごめんなさい。その……東京? の方で大規模な作戦が行われてるんだよね?
クラスの子が東京とか、それに岐阜の方面……えっと、
御津那海とかに行ってて、心配で」
「そうだね。東京だと
カタルモイと呼ばれている天使のゲイムが行われているから心配だね。
わたしも、皆が無事であればなあとは思っているけれど。此処で待っている生活は、とても苦しいものだよ。
でもね、リンさん。わたしたちが日常を護り抜かなくっちゃならないから、君は笑ってお帰りって言ってあげてくれるかな」
「……はい!」
ぱあと明るい笑みを浮かべる
非能力者の少女。
マシロ市民は天使や変異体と対等に渡り合える
能力者が居なくては生活できないことを知っている。
能力者が得られる特権は戦闘員と言う立場故のものであり、非能力者は不平等、不公平と訴える事はない。
――多少、生活の質が劣れどもまるで旧時代の様に安全圏で過ごせるのは、誰かが命がけで戦っているからだからだ。
「ふぁー……キミたち、こーんなところで立ち話してるのかにゃ~?」
「おや、珍しいね。猫さん。日向ぼっこはお終いだったのかな?」
「んー……タバコで一服後~。お酒飲んで、そろそろ寝たいくらいなんだけどにゃ~。
さっき、多摩と連絡とり合ってるKPAの
あむにゃんが、多摩南と座間方面から
水没地帯の調査に行こうって提案してて~」
巻き込まれたくありませんでした、とそのかんばせに本音を張り付けている猫(
r2p004559)は気だるげにベンチへと腰かけた。
K.Y.R.I.E.設立当初より戦い続けて来た
旧世代の娘は隠居をしたいと、K.Y.R.I.E.内部でぐうたらと怠けている姿が見られる。
が、一応は小耳にはさんだ情報を総合戦略企画部に連絡して置こうと考えたのだろう。
情報は一つも逃さない方が良い。何が起こるかも分かりやしない世界なのだから
ほうれんそうは的確に行うべきなのだろう。
「へえ。座間と言えば相模川が氾濫していた影響を受けていた場所だね。
多摩の様子を見ていると、ダムが崩壊している可能性が高そうだから相模原市も、厚木市も、座間市周辺だって水没しているようだったから……調査なら船かな?」
「そうだと思うにゃ~……入り込めそうな場所から向かうとは聞いているけれど。
花弁が魔力汚染を運んでるって噂にゃ。
花蝕障が広がると周囲の建物も溶けるように崩れてるし、土壌汚染もあるみたいだから早めに対処したいにゃ~って」
花蝕障と名付けたのは奥空 奏音(
r2n000250)だった。
花人と呼ばれる花に肉体浸食を為された人型の怪物までもがその周辺で姿を散見されるらしい。
「そちらもマシロ市には近いから早めに対処、だねえ」
「あ、の」
まるで世間話の様に語らう猫とはしばみをリンはじいと見つめていた。
「また、怖い戦いが起こるの……? クラスの誰かが死ぬような……?」
不安げに告げるリンに猫はくあと小さく欠伸をしてからその頭をぽすぽすと撫でた。
「そうならないよーにするのがK.Y.R.I.E.の本部にゃ~。ね、ちくちくさん」
「頑張って働いてね、猫さん」
「い、いやにゃあ~………」
――できれば平和でありますように。夏休みが当たり前にやってきてみんなと楽しく過ごせますように。
そんなことばかりを、リンは思うのだ。もう、教室の机に花瓶が飾られている様子何て、見たくはないと。本心より、そう思いながら。
命空骸戯 - 旧展示場要塞システム/ゲイム・ルール
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