Barソムニウムに乾いた音が響いたのは、
『召喚士』イーリロスと
『時計屋』アヴァリティアとの交戦を終えた能力者が帰還した時だっただろう。
「ッてェ、藤代。お前アイドル止めて武闘家になれ。センスのいい張り手だぞ。あと、乳はない方がそう言うの動きやすい」
「だからそれなりだろうが。反省しろ、反省」
ぎらりと鋭い眼光に光を灯す藤代 柘榴(
r2n000030)を見遣ってから雀居 影臣(
r2n000218)はひらひらと手を振った。
「立場も立場だ。心配かけて申し訳ないとは思ってる。でも、一応仕事はしたんだぜ。
アヴァリティアの行方を追うように仕掛けて貰った。俺は仕掛けを作っただけで実働はあいつ等だけどさ」
影臣が指さした先に居たのはしろ(
r2p007926)やニーナ・モロゾフ(
r2p003427)、ミア・レイフィールド(
r2p000284)であった。
「藤代、睨むなって。分かってるって。
ヴァントーズやら
ママは心配してくれただろ? んで、
都築はキレつつ心配するだろ。
いや、人望あるな。俺。……睨むなって……。さっき見たよ。
一桜とか
立花の事。遊んでる場合じゃねぇってのもさ」
「そうだ。
仕掛けたんだ。早くシェナを迎えにいこう。しろはシェナにマシロ市を案内してやらなくちゃならない」
しろはじっと影臣を見た。アヴァリティアには通信機がつけられている。彼女の動きを追い、拉致されたシェナ(
r2n000219)の救出を急がねばならないだろう。
「でもでも、アヴァルティアは強いにゃ。ニーナんとミアはあの強さを目にしているにゃ」
「……強い。けど、すぐに
紫恵那をどうにかする……とは、思えない」
ミアは「ニーナんと意見を同じく!」と手を上げた。ノエ(
r2n000225)は「今、彼女たちの現状は?」と影臣に問い掛けた。
「チェックする。手伝ってくれるか、そこの巨乳――……じゃない、美人のシスター」
「ええ、お手伝いいたしましょう」
朗らかな微笑みを浮かべるエクスセリア(
r2p001259)を見遣ってご満悦の影臣の脛を柘榴が蹴った。「痛ッ、嫉妬かよ」「誰がだ、誰が」――ぼそぼそと呟いている彼らをジュヌヴィエーヴ・イリア・スフォルツァ(
r2p000400)は微笑ましそうに眺めていた。
「それでは、何をすれば宜しいのでしょうか。わたくしも影臣様のお手伝いをさせていただきます。
そちらの記録媒体を利用する……? のかと、思うのですけれど……」
「ああ、そうだ。スフォルツァ。KPAの奴らはすごいな。そこの機会に魔力を流してくれ。すると、歯車を通じて盗聴した情報が流れるようになる」
頷くジュヌヴィエーヴとエクスセリアがそっと手を翳し、記憶媒体の内部で歯車がかちかちと嚙み合い始める。
――イーリロス。シェナの身元は引き受けました。
それで……これからどうするんですか?
――エーデレッセンは、良い働きをしてくれたね。それに、
彼の言う通りマシロ市の人間は強い。
東京のゲームに彼らを招待したいという話の意味がよく分かったよ。……僕達を、踏み台にしてね。
「東京のゲーム? ……それって、
東京の天使が言っていたっていう?」
不思議そうな顔をする星鳳 縁(
r2p000343)に二階堂 朱鷺(
r2p001201)が渋い表情を見せた。
――それでもね、僕はまだ満足していない。僕はまだ
ノエ先生を……。
だからね、アヴァリティア。僕たちはまだ止まれやしないよ。
やはり、と見るべきだけれど能力者達は相手の事を大切にしている。
壊したら感情は二度と戻らないと知り、大切な相手の心を守るために僕達の所に来るはずだ。
――それでどうするというのですか?
ああ……
人形師におねだりしていた
ウーアツァイトを使うんですね。
あの子達は感情宝石に寄生して、それを
心臓にして動き出す。機械仕掛けの可愛い、可愛いお人形が居場所を乗っ取るんです。
あ、そっか。良いですね。シェナの感情を飲み込ませたお人形にその場所を乗っ取らせたらあの子は帰らなくって済むんですから!
――ああ、そうだね。大切な感情を奪って東京にでも放り込めばいい。
すると……ああ、アヴァリティア、ゴミが――
ぶちん、と音を立てた。朱鷺は「今の」と唇を震わせる。イーリロスがノエに何か仕掛けたいと願っているのは確かのこと。
「ウーアツァイトって、言ってた。機械仕掛けの人形に感情宝石を食わせて動かすって。
厭な乗っ取りかただね。壊すに壊せない、なのにそれが私たちの前に来ようとしているって……?」
アイラ(
r2p006664)に「本当に……酷いです……」と百合垣 純哉(
r2p002190)は唇を震わせた。
「今、通信が切れたのは……その、通信機の場所が……露呈してしまった、ということですか……?」
「……アヴァリティアのお腹にぶっす~~ってしてたにゃ。それがバレちゃったってことはこのままトンズラかにゃ!?」
ミアに純哉は「違うかも、しれません」と呟いた。
「……あの、今の話、私たちに聞かせたかったのでは……? 東京の天使と、彼らの思惑は違う様な……」
「そうだな。こちらを引きずり出そうとしているのかもしれない。……ノエ、一つだけ聞きたい」
真っ直ぐに、白雪姫 エクエス(
r2p004375)はノエを見た。彼の脳裏には自らが相対し、言葉を交わしたイーリロスの姿が浮かんでいる。
「君とイーリロスはどうした関係だったのかだけ、教えて欲しい。きっと言い辛いこともあるだろう。だから――」
「……オレは、西洋の魔術師です。あまり褒められた出自ではないのは確かですが。
彼……イーリロスは、街に住んでいた少年で、幼い頃からオレの傍に居ました。
あの頃から、ずっと彼はオレを追ってきてくれていた。彼は……オレの
相棒と、名乗っていましたから」
ひどく、居心地が悪そうな声を漏らした彼にエクエスは唇を引き結んだ。それ以上の言葉に迷うように彼の
琥珀色の瞳がぎらりと輝いている。
「ノエ……」
「さーて、話の途中悪いがどうする? 相手は仕掛けてくるつもりだ」
朱鷺の肩を叩いてから腫れた頬を摩っていたカゲオミに柘榴は「決まってるでしょ」とはっきりと言った。
「シェナを助ける。みんな、そう思ってるでしょ。感情を取り戻すしかないんだ。
それにね、心は原動力だ。それをアタシは一番知っている。誰かを動かすにも、誰かが間違えるにも、心がある。
――もう、
もう一度はないんだよ。だから、動き出したいと思ったこの衝動だけがアタシたちを前に進めるんだから」
→K.Y.R.I.E.茫失者名簿が作成されました
