通賢黙娘(
r2p003175)――
ミラーミスの成す黒波は、まるで『破滅』の具現の如く。
暗い昏いその海が意思持つように蠢いた。暗澹と灯る幾つもの双眸。
邪精霊は全てを水底に沈めるべく、海上で息をしている遍くへと襲いかかる――
「くそ! 海にかわいい子がいるって聞いたのに
こういうのは聞いてないぞーッ!」
機動防衛浮島『アイギス』上、エース(
r2p004524)はガムシャラに
電光刃を振るってシーゴーントを斬り捨てる。いっそ泣いてしまいたい、頬を濡らすのは嵐だけじゃない。
「かわいい子? サキュバスじゃダメかしら」
含み笑うのはナンカさん(
r2p000147)である。「えい♡」と治癒の術にて皆の傷を癒して回る。こんなにも敵だらけの戦場だ、回復役はモテモテである。これにはナンカさんもニッコリ。
即座に体勢を立て直す仲間の姿に、弥樹 所縁(
r2p001966)はホッとして。さて、敵影へと目を向ける。嵐に震える空気を吸い込んで、紡ぐのは神秘の童歌――
「おにさんこちら てのなるほうへ……♪」
襲い来るシーゴーントの敵意を一身に引きつけよう、仲間達を護る為に。
――生きて、皆で帰る為に。
『負傷者はこっちに、すぐ治すよ』
青白い文字はベアトリーチェ カルミーナ(
r2p004365)の声。魔力を宿した双眸は鮮やかな緑色に、暗い嵐に仄かに煌めく。
かつての世界で、数多の怪物と相対したけれど。よもや『異界の神』『規格外大怪物』の両方を同時に相手取ることになろうとは……流石にそう経験のない出来事だ。
(それでも……)
自分達なら
越えられると、ベアトリーチェは信じている。
だから、絵空 白紅(
r2p000568)は筆を奔らせる。絶望のカンヴァスに希望を描こう。軽やかに、春風のように。
「妹分達が死力を尽くしているのです。私がどうして
のうのうとできましょう」
描き出すは自由自在、一筆は迷いなく、軍神の紋を、連なる城壁を、翼もつピアノを。
人類軍の攻勢はますます勢いを増した。
今こそ好機とPOSEIDON隊員がアイギスと共に一斉射撃を行い、黒い波を押し返す――
仲間達の万全たる支援に背を押され、エクレア・千夜・クルート(
r2p000543)は思う。こんなにも自分を支援してくれる彼らは、きっと自分のことが好きに違いない!
「ふふふ。私も、キミ達のことが好きよ……!」
好きピの為なら頑張れる。彼らの素敵な『夢』の為に、
夢魔は薙ぐように指先を振るった――四重苦の魔曲が、嵐を切り裂き奏でられる。
攻撃を止めてしまえば、瞬く間にシーゴーントは人類を呑み込んでしまうだろう。ならばアリサ・リヴィングストン(
r2p008180)の役目は、その攻撃を止めさせないことだ。
「
自由の奉仕者たれ」
決意を口に、リヴィングストン家伝来の治癒魔術を展開する。一族が連綿と築き上げ続けてきたその術は、傷ついた仲間を鼓舞し、支え、あらゆる苦痛を拭い去る。
「ありがとう」
おかげさまで九重 セナ(
r2p001747)はまだまだ戦うことができる。息を整え、刃を構えた。こんなところで留まっているつもりはない。セナがまことに
剣を届けるべき相手は、この向こう――海の魔女イェラキ、否、『鷹宮心海』なのだから。
この『黒』に、圧し潰されるのもか。
「……弾け飛べ」
シャルロット(
r2p008100)は
炎のアートを海へと繰り出す。噴き上がる火柱は暗い嵐を赤く染め、シーゴーントを焼き潰す。死にたくない。だから戦う。極めてシンプルだ、ならばアートなる神秘の御業を用いるものとしては、それを
如何に彩るか。
生きる為に戦うのは往螺尾 とらこ(
r2p008239)も同じくだ。なぜならば――
「とらこはとらでねこだもん! にゃー!」
野生のままに、本能のままに、襲い来るシーゴーントを斬り払う。斬り捨てる。フシャーと威嚇し、跳びかかる。
少しずつ――少しずつ。
人類軍は黒い波を押し返していく。
大丈夫、負けやしない、きっと勝てる――真月里(
r2n000190)はここに居る全ての人間を信じている。だから、その想いをいっそい強く歌に込めて。心の中のありったけを――紡ぐ!
「あたし達はひとりじゃない。だから、絶対、大丈夫!」
一条の光が闇を裂いた。
ならばそこからこじ開ければいいと、獅堂 琳(
r2p000609)は即座に理解する。
リボルバー銃を向けよう。狙って、撃つ。簡単なことだ。引き金の軽さにならば自信があった。
「いやはや、
修道女が神の手先に仇成すなんて」
「神様って実在するのね。でもまあ、殺すけど」
琳の弾丸と共に、氷ヶ﨑 黒宵(
r2p007957)は凍てつく
刺突剣を突き出した。天使が憎い、まだ殺したりない、だからそれの邪魔をするこいつらは『敵』。絶対零度の殺意を以て、立ち塞がる一切合切を凍らせる。
六花がひとひら、ふわりと舞って。
冬終 苹果(
r2p005500)の
りんご色の頬を撫でた。
神様。運命。天使。悲劇。別れ。
様々な、あらゆることが、苹果の目の前で起きている。
絶望の海。青き地獄。昏い波。「沈んでしまえ」と精霊が嘯く。
「――そんなの、もうたくさんだわ!」
私は私。私の結末は誰にも決めさせない。
終わった筈の物語に続きがあるなら、今度こそ
掴み取ろう。
学校に通って勉強をして、街を守るために戦いに行って、眠る時には、天使の病も治せるようになることを夢に見る、ただの未熟な
苹果でも。
「本当のハッピーエンドの為に、この海を越えるの。この海を照らすの!」
「まあ……そうだよね。
折角ここまで来たんだし」
苹果の支援に手を引かれ、坂上 瑞希(
r2p000207)はライフルを嵐へと向ける。跳びかかってくるシーゴーントのその咢を――精確無比に、射貫くは弾丸。
「横須賀を奪還して。
第五熾天使も倒して。……ここで行き止まりだなんて、ちょっとね」
リロードしながら小さく呟く。まだ、まだ、地図で見ればひとしずくほどの領域しか取り戻せてはいないのだ。海を取り戻せたら、きっと、もっと、世界は広がる。その果てに――失った瑞希の記憶のひとかけらも、どこかにあるかもしれないから。
――自分が何かも分からないまま終わるなんて、怖いから。
「それにさ……」
装填を終えた銃を向けて、少女は言った。
「私、空は晴れて青い方が好きだから」
弾丸が奔る。
また一つの黒い波が消えて。
そんな中、真っ白い悪魔は戦場に立つ。
白痴の演奏者、星空 凪(
r2p005001)。
彼女は戦えないし護れない。できるのは歌と応援だけ。
ならば――歌おう。目眩く煌めく日々の唄を。
この世界に来て、仲間と出会い、そうして知った楽しい日々を。
「これが
今の私を表す唄......だよ」
羽翼の唄。花唇より紡ぐ歌に治癒の力を。
この声が届く範囲が、凪の戦場。
人間に居なくなってほしくない――それは奇しくも、異界の神とは真っ向から違える思想。そして、月の神霊と同じ想い。
真月里の歌と共鳴し、凪の歌声はどこまでも響く。
この青い地獄を――照らしていく。
ロストアーカディア二周年!
