「やっぱり」
岐阜から富士橋頭保まで険しい道程だった。
八尺瓊勾玉をコスモス制御の容れ物とする為にその運搬を能力者達は担っていたのだ。
「そうだと思った。
御津那海を離れて良かったの?」
その声に覚えがあった。その動きに癖があった。その雷撃に、その一撃一撃の重みに、体が反応をした。
ロロ=ヴァントーズ(
r2p003282)は目の前に佇む少女を見る。
結えた黒髪。左右色違いの眸。
大きなキャンディを思わせる武器を手にした笑みを絶やさぬ子供。
第八熾天使麾下天使が
三種の神器だ、御津那海だと、カタルモイにも参加する
魔術師の秘宝を奪取する
魔術結社テオフィロとわざわざ手を組んで動いていた。
「現場責任者が祇化や厭離衆で騒がしい御津那海を離れる事はないと思ってはいたのだけれど。
でも、思っていたよりもしっかりと追いかけて来ていた。
焔狗も含めて、京都に降臨した第八熾天使は余程コスモスにご執心なのかな?」
目の前に佇み、じっと能力者を見下ろす天使カランフィルはころりと表情を変えた。
「ねえ、教えてよ」
ロロは確かめるように、そして確信したように言った。
「ちゃちゃまる」
笑顔。
楽し気に微笑んでから、手をぱんと打ち合わせる。
「わあ~~、すごいですね。
流石は
あの第五熾天使アレクシス・アハスヴェール様に
ちょっぴりひどいことをしたK.Y.R.I.E.です!」
ずんぐりむっくりとした犬の着ぐるみ。
少しおまぬけな第八熾天使直属の主天使級ちゃちゃまる。
その、
中の人と呼ぶべき少女は一歩、踏み出した。
「改めましてちゃちゃまること、ワタシ、カランフィルさんなんですよぉ、人間さん!
それでぇ~……人間さんには悪いんですが、それ、渡してくれますか?」
「……渡さないし、渡せないよ。きみはコスモスが何かを知っているの?」
ロロは自らの後方にて
八尺瓊勾玉を護る仲間たちがいる事を確かに確認した。
カランフィルは無理には動かない。この天使が本気になれば
兵隊を使って蹂躙するくらい易い筈だったのに。
――いや、京都と呼ばれた地は紫之宮の本拠でもあったという。無事に京よりマシロまでの参勤交代を果たした刀剣令嬢の在り方を見るに相当数の人間が残っており、人類と天使の小競り合いなどが起こっているとみるべきか。
カランフィルは自身に宛がわれた任務に、無理に兵を徴用する事はなく。同時に、音に聞く第五熾天使を退けた人類拠点最前線の状況偵察に訪れたという事だろう。
地球というフィールドで見ればこの極東は狭い。
そんな場所に、
「
第十一熾天使様の落とし物だと、第九熾天使ディオン様より聞いています」
熾天使の欠片とまで言わしめた願望器の卵があれば?
コスモスは、
自身よりも尊い存在だと彼はそう語った。
蜂須賀 タクヤ(
r2p000055)は第十一戦区の戦場で確かにそう耳にしていた。
――だったら、私たちのお願いも聞いてくださいよ。私たちだって、たくさん頑張ってるんですから。それくらいのご褒美があってもいいと思うんです。
第十一戦区にわざわざ降りてやってきたタラリアに神代 くるみ (
r2p000888) はそう告げた。
相変わらず飄々としていた彼が「え~? このボーナスゲイムをクリアしたらね」と意味ありげに提案をしたことを思い出す。
あの時、彼は決勝戦での勝者枠の増加を求めての署名提案について把握しているような素振りだって見せた。
彼はその位階による驕り故かある程度、話し相手をしてくれるタイプだが、カランフィルはどうだろうか。
「でも、すぐにバレちゃうとは~。もう少し、謎のカランフィルで居られるかと――」
「貴様が分かりやすい天冠などしておるから、正体が露見するのだぞ、この愚図め!」
「ええ~~!? ウ、ウサビッチェルちゃん酷くないですかぁ!? 天冠はアイデンティティですってぇ」
尊大にして傲岸不遜なるウサビッチェル(
r2p009244)の傍で「元気を出すっすよ、パイセン!」とひのまる(
r2p008585)が励ましを送る。
うさぎだ、動物だ、犬の着ぐるみだ、子供だ。
まるでおもちゃ箱のような姿をした第八熾天使直属の天使達。
カタルモイに参加していたのも子供だった。純粋無垢な姿をして、戯れるように人々を使い倒して戦功点を稼いでいた。
無邪気な子供のようにカランフィルは笑っている。
余りに、悪意も何もないような顔をして。ただの幼い子供のような振りをして。
「あ、そうだぁ~、焔狗がお世話になりましたよね。カタルモイで。
シュウリ君たちも頑張ってくれてたと思うんですけどぉ……皆さん、やっぱり優勝候補になりますよねえ~」
カランフィルは幼い子供がそうするように瞬き、それから首を傾げる。
「様々な主義主張があって一枚岩ではなくって、天使と分かり合えちゃう気がしてて、お優しいって聞いてたんですけど。
敵って思うと容赦ないんですっけぇ。こわいですねぇ~、ちゃちゃまるも悪い奴扱いされますかぁ?」
カランフィルはぱちくりと瞬いてから、何かを思いついたように笑った。
「でも、コスモスが無条件にお渡しされて、大丈夫ですかぁ?
あんな願望器、人類の皆さんが扱いきれるんですか?
あの方の欠片。
あ、噂で聞く
片翼のお姫様にでもプレゼントなさるんですか?」
「……その噂は何処で?」
「噂は噂です。でも火がない所に煙は立ちませんしぃ、風なければ木の葉も落ちませんよねぇ」
カランフィルの背後で「これからどうするのだ、愚図」とウサビッチェルが問いかける。少し悲し気な顔と大げさな泣き真似をするカランフィルは気紛れに何かを思いついたようにころりと表情を変えた。
「えへへ、もうすぐ決勝戦ですよねぇ。
いいな、タラリアさんに言って、ちゃちゃまるたちも遊びに行かせてもらおうかな?
折角、此処まで来た縁ですし」
「……カランフィル、デバイスがなかったら意味は――」
「だいじょ~ぶ。
お友達枠ってコトで遊びに行っちゃおうかな。
あっ、でもそしたら
第八熾天使派と
第九熾天使派が仲良しって、ばれちゃうかな?」
※イラストオプションに『祇化』が実装されました。(用語説明:呪創/祇化)
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