「元気してた? 実は近くで見つけたミシシッピアカミミガメなんだけど遂に産卵をしてね。
いや、もう変異体だからあれはその名前で呼んでいいのかは定かではないけれど――」
「カメの話をしに来たのかい。しかも、
私以外も呼び立てて」
その手にはいつもの如く血濡れた金属バットが握り締められている。
此処は第九戦区新宿と第六戦区西部の丁度境に当たる場所だ。そのような場所にわざわざ呼び立てたのだから理由があってしかるべきだろう。
「怒らないでくれ、咲願ちゃん。魔法少女は微笑みを大事にするもの、だろう?」
舌を打った栞 咲願(
r2p008061)を護るように 武良井 仁菜(
r2p008414)はじらりと目の前の男――タラリアを睨みつけた。
「え~、この度、天使の襲撃などなどを? 警戒している皆さんでも戦功点にボーナスが付与され、容易に死なないようなスペシャルゲームを用意しました。
どうやら、咲願ちゃんは私との約束をしっかりと告知する事なく、自分一人で抱えるように考えたようなのでね。
隠し事はいけないな。やっぱり、そういうのは
信頼関係に溝が出来るよ。そう思わないかな、仁菜ちゃん?」
「……隠し事……?」
プシュケーと呼ばれる子供たちの派閥は、この東京でカタルモイ終了まで生きていくだけの生存に必要な物資は与えられる。
食事を中心とした生活物資、という意味だ。その後押しを行う様にプシュケーの人員には他派閥よりも多くのボーナスチップを配られている。
大量のボーナスチップと、生存のための生活物資の庇護――それが現状はカブキチョーの本拠地も庇護下という意味合いには違いはない。塩の天使は攻めてこず、安全地帯として今は設立されている――は失う訳にはいかないライフラインとして機能している。
「そう。私と君達との取引は、戦功点を稼ぐことだ。君達プシュケーは常にカタルモイの中で5本の指に入るチームでなくてはならない――それが叶わないならば統一チップは没収。ゲームオーバーだ。」
「……咲願……ッ!?」
どういう意味だ、と仁菜が振り返ったが咲願は唇を噛みしめる事しかできなかった。
――プシュケー自体を護るならば常に仲間には死んでくれと言い続けなくてはならない、というのか。
「だから、君達含めカタルモイ参加者にボーナスゲームを用意したよ。プレゼントだ。受け取って欲しい」
「どうしてそんなものを用意した?」
「優しさだよ。結構斥候やら物資調達の理由で仲間たちを外に出してただろう?
まあ、私にとっては招かれざる客人がいたけれど……? 彼らとの戦いもしっかり終えたようだし?」
「あれも君の手引きじゃないの? そもそも、K.Y.R.I.E.って何、アイツらだってこっちに恩を売ろうとしているだけで――ッ」
仁菜、ともう一度咲願は止めたか。背後から羽搏きの音が聞こえてきた事で二人のやり合う声はすぐに薄れる。
「それでそのボーナスゲームについて、教えていただいても構いませんか?」
羽搏きと共にやってきたのは図書館を率いる天使――
図書館長たる
ארמיאל(
r2p002402) だったか。
「全ては、智の為に。興味があったので伺っただけですが……愉快なことを考えているのでしょう?」
「お話を聞くの? そんなことをする必要ってあるのかな」
問い掛けた Chelsea(
r2p006189)にアルミエルは「何だって記録するべきがそこにあるならば、でしょう?」と問い掛けた。
「ええ。ボーナスというならばわたくしだって興味がありますもの。それは若輩者でも利用価値があると?」
魔人ナインイドナイトメアに拾われ、ネオフォボス幹部となった発条 ウサラージャ(
r2p008518)はきらりとその瞳を煌めかせ問うた。
周囲に他派閥の参加者が姿を見せる。一瞬その怯えがかんばせに張り付いた仁菜を護らんとする咲願の周囲に淡い春の風の如き防壁が張り付いた。
「私が呼び出したから」
ウィンクを一つするタラリアに咲願と仁菜は舌打ちをする。ウサラージャはその様子をじいと見つめてから後方よりその状況を伺っていた赤金 一虎(
r2p003916) にひらひらと手を振った。
「さて、お集まりをありがとう。ちょっと待ってくれたまえよ。今からアナウンスモードに切り替えるからね。
あ、あー……マイク、テステス。あー……キューバソレノドン、キューバソレノドン。うん、聞こえているね。
やあ、ゲイムマスターのタラリアだ。きっと会いたかったね? 寂しがらせたお詫びに今度、私のチェキをプレゼントするよ」
この第九、第六関係なくカタルモイ全域に響くその声は何処までも愉し気であったか。
「この度、第六戦区にはボーナスゲイムの設置が行われることになったよ。
マシロ市にはアリーナという能力者同士がその実力をぶつけ合う興行施設があるらしい!」
Chelseaはぱちりと瞬いてアルミエルを見た。彼が何を言っているのかを伺う様な視線である。
「と、いう訳で、カタルモイでもアリーナをやろうとおもうんだ。でも一対一で戦う時に、天使と人間には差がありすぎる。
……これじゃゲームは面白くないよね。私は面白い方が好きだから、いろいろと用意してみた❤
デバイスにジョブカードをインストール! すると天使も人間も、カードの強さに大変身❤
これなら生まれたての小鹿だって、フラミンゴのように羽ばたける!
けれどカードは、配られたものを使うしかないから、そこは注意が必要だね。
勿論、タダで参加しろとは言わないよ❤ 参加者にはちゃーんとご褒美を渡すし、参加率でもしっかりとゲイムに還元するとも!」
第六戦区の中に見る見るうちにスタジアムめいた何がしかが作り上げられていく。
ボーナスゲイム会場は第六戦区の特別イベントとして唐突にその姿を顕現させたのだろう。
「私も様々なデータをプリセットしてあるから、カタルモイに参加していない者のデータが利用される可能性もあるかもね❤
ほら、私って物知りな天使なんだ。貪欲で、知識を増やすことに価値があると思っている。その辺りは君達と気があうかな? 図書館。
……何処に居たって参加の申請さえすれば第六戦区のボーナスゲイム参加者に名を連ねる事が出来る。
仮想死亡状態になる事はないよ。ただ、
戦闘の経験は君達にはきっと残る筈だ。よく考えて利用しておくれ!」
――ボーナスゲイムだと彼は言う。成程、確かにこの戦線の参加率や戦歴で
戦功点を得られるというならば利用しておくべきだろう。
ウサラージャはくすりと笑って、囁いた。「ああ、楽しい事になりそう――」と。
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