「――成程、多摩の一件は解決をしたんですね。
お疲れ様です。皆さんがこうして東京に無事に顔を見せてくれた事が私は何よりうれしいです。
……ああ、けれど、東京もこんな状態ですから、いいのか、悪いのか、定かではないのですけれど……」
肩を竦めたのはカタルモイが開催されている東京の第一戦区:台場に存在している旧展示場要塞の管理人である桜叶(
r2p008406)だった。
幼い姿をした付喪神は春の香りをその身に宿し、能力者達を快く出迎えてくれる。
彼女の言う通り、近隣での戦闘が終了し、誰も欠ける事はなく能力者が帰還したことは喜ばしいが、カタルモイが開催されている現状ではその再会を喜ばしいと口にしてよいものかは憚られるところもあったのだろう。
「いいえ、それでも誰も欠けていないという事は喜ばしい事です。桜叶さん、カタルモイの現状はいかがですか?」
「そうですね……要塞側のLogには何ら観測情報は乗っていないのですけれど……いくつか。
第二戦区ににわかに動きがあるように思います。様々な派閥の乱入がある程度行われて紛争状態のフェーズに変化があるのかも。
それに、第三戦区にもさらに敵影も見えますね。缶蹴りは熾烈になって行くようです。あとは――
第六戦区」
「第六ってどこだったかしら?」
その場に同席し、マシロ市から持ち込んでいた簡易食料をぽりぽりと齧っていた糸瀬 きい(
r2n000055)へと嘉神 ハク(
r2n000008)は振り返った。
「西部と呼ばれる地域です。具体的には、そうですね……旧時代の地図で表すと練馬区、中野区、杉並区があったあたりでしょうか。
ただ、その場所は僕達の進軍も難しい場所です。僕たちの関わりなく何か、変化がありそうですか?」
「何とも言えないから今は
ニイナや
奈鬼羅が探ってくれているのですけれど。
二人が言うにはゲイムマスター・タラリアが何か企て始めたのではないかなとのことでした。何かが開始されるなら必ずアナウンスされる……まあ、嫌な信頼なんですが」
「本当ね。彼ったら本当に耳障りのいい事ばっかり言うわ。終鐘教会の姿が見えたって聞いてげんなりしたもの。
あの人たちは使えるものなら何でも欲しがるわ。それこそ、
指導者は信者って呼ぶべき終末論者の事をただの駒だと思って接しているから……まあ、
報酬品目当てだという事は頷けるのだけれど」
忌々しげにつぶやいたきいに「そうですね」と肩を竦めたのは立花 空葉(
r2n000034)その人だった。
彼女自身も第三戦区で姿を見せた天使陣営『焔狗』――アーカディアVIII陣営であるという事は分かっている――に親しい仲ともいえる相手の姿が見えた事を憂いている。
「……誰もが様々な思惑と共にこの場所にやってきていることはよく分かります。
それでも、見過ごすことはできませんから着実に各戦区で勝ち残っていく必要がありますね」
「そう、だね。そうしないと……本当に星が見えなくなっちゃう」
悔し気に呟いたソフィーリア・ペンスフォード(
r2n000028)は己の胸に手を当てて息をついた。
――彼女の父親は、今やどこかに姿を消した。手掛かりとなったのはルートセレクト時に更新された行動ログだけだ。
「……パパ」
今、何処で何をしているかもわからぬ人を思うことほど苦しい事はない。肉親というのはそれだけ、強い結びつきであるからだ。
ハクは自身の妹であろう天使に関するよりも親子として日々を過ごしてきたソフィーリアの方がその心に強く衝撃があっただろうとも感じている。それは、これかでも、そしてこれからも、他の能力者にも降りかかりつつある苦しみでもあるのだから。
「と、とにかく、第二戦区でも、第三戦区でも動きがあるんだよね! それから、第六?
……何が起こるかは分からないけれど、頑張らなくっちゃ。アナウンスとか、ログの動きとかがあればちゃんとチェックだね!」
明るく笑ったソフィーリアにきいは「ええ、そうね」と頷いて、それから頬をぷにぷにと突いた。
「ひえ」
「一つずつやっていきましょう」
「なんひぇ、つつくの?」
「きいの気分だっただけ。さ、次は何が起こるかしら?
楽しみにしましょう。ええ、だって……こんな状態だもの。楽しんでやった方が
あの男は嫌な顔をしそうでしょう?」
命空骸戯 - 旧展示場要塞システム/ゲイム・ルール
旧展示場要塞内「カタルモイ」専用ツールアクセス