「さあ、決勝戦を始めようか」
派手な服装。四枚の翼。何時だって楽し気に歪められた唇。
微笑みを浮かべたその男の周囲が揺らぐ。淡い陽炎の如く、蜃気楼がその全てを覆い隠すかのように。
「さて、私は優しいゲイムマスターだからね、きちんと順序良くお話をしよう。
御機嫌よう。参加者諸君。
会えてうれしいよ。君達がどんな人間であったか、そう! それをねッ、確認したくって、はは、はははは、ついつい、クラーケンと喧嘩をしている所にも会いに行ってしまったね!」
彼はゲイムマスターと呼ばれている男だった筈だ。
タラリアと。そう名乗っている男は楽し気に微笑みを浮かべている。
「さて、カタルモイ参加者の諸君は改めてゲイム景品であるコスモスと呼ばれるものを知っているかな?」
願望器の卵。
それは
第十一熾天使の落とし物であるとされている。
地球を滅ぼすが為に顕現していた
彼女は2026年頃にその動きを沈黙したという。
彼女のその身に何があったのかは人類は知る由もない、がそんな彼女の落とし物というのがこの
コスモスだ。
「素晴らしいだろう。これはね、その時の欠片なんだ。
主天使
程度であれば、これに飲み込まれてしまうかもしれないが、それと同等までの出力を約束されている。
勿論、願い事を
正しく叶えてくれるなんてことは言えないよ。それども、願望器としてそれなりの性能を誇っているとそう認識しているさ」
男の声色はいつもと変わらず、そして嘘などついていない。
それでも、違和感たるものは膨れ上がっていくことだろう。その違和感が積み重なれば破裂する、奇妙に、悍ましい恐怖として膨れ上がって――目の前に得体の知れない生物が存在していると思わせるのだ。
徐々に、その声色が変貌していく。
タラリアの蜜色の瞳に淡く混ざりこんでいく
別の色彩。
「カタルモイはそもそも、このコスモスを安全に彼女から引き剥がす為、そして、
コスモスを閉じ込めておく為のものだった。
他の熾天使の手に渡るのは我々第九熾天使派としては? まあ? 喜ばしくないしネ?
Baroqueのような人類に渡れば、
私位まで吹き飛ばされちゃう可能性もある」
タラリアは大仰な仕草でやれやれとそう言って見せた。
「そうしたら、どうかな? 丁度、現コスモスの持ち主は
物心がつく頃からこの願望器に愛されてしまっていた。
羽化し、コスモスと共に過ごした彼女はこの世界で第十一熾天使とその
欠片以外に最もコスモスに近しい存在となっただろう。
メイはきっと座天使にだってなれる。だからこそ、花園へと招待したのだけれど……」
タラリアは「間違えたな」と呟いた。おとがいに指先を当ててから少しばかり首を捻って見せる。
「あー……うーん、うん」
タラリアは小さく笑ってから咳払いをした。
「時間がね、あまりなさそうだ」
男は愛情深くメイに接していた筈だ。だと、言うのにその唇はメイへの失望に溢れている。
「彼女はコスモスに
飲まれかけている。
無垢で無関心で無感情であらねばならない。願望器って言うのはね、
人間の欲望に強く反応するものさ。
――ああ、だから東京という慾の街にそれは落ちたのだろうか。
ティティフィティアの
あの子供も、プシュケーの仮想願望器のように動く
魔法少女だって、コスモスにとっては美味いとしか言えない代物だったろうに……」
男はメイを安全無事に連れて帰りたいとそう言っていた。だと、言うのにその唇はメイを一度たりとも心配しない。
「どうにも、主天使メイの感情はコスモスを動かしてしまったようだね。
私――ああ、いや……うん、面倒だな。
俺は彼女の本当の願いを知らないのだけれど。まあ、
何かを叶えようとするなら仕方がない」
タラリアの唇は、他の誰ぞの声でそう言った。
「期待外れだったね」
タラリア――いや、タラリアではない。この座天使の体を、声を、瞳を使って
こちらに干渉してきているのは。
「タラリアは俺に近しい存在なんだ。だから、こうして時に体を借り、声を借り、瞳を借りている。
はは、俺が誰かわかるかい? いや、分からなくても構わないのだけれど……勘が良い君達ならば分かるだろう?」
男はその肩を竦め、わざとらしく笑って見せただろうか。
「答え合わせはコスモスの後だ。
――ほら、もう時間がないよ。君達が心を砕き話をしたいと願ったお姫様は、夢と馬鹿げた理想にご執心のようなのだから!」
※東京編決戦『ラスト・ゲイム:アルケー』が開始されました――!
命空骸戯 - 旧展示場要塞システム/ゲイム・ルール
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