「ロウ博士、皆さんの歯車の解析が終わったって本当ですか?」
太ももに包帯を巻いた奥空 奏音(
r2n000250)が中央街に入って来るやそう言った。
「奥空、相模原から戻ってきたか」
草臥れた表情をした錬金術師――ロウは彼女の姿を見るやそう言った。
フォーカポーカと呼ばれたアザーバイド達、『召喚士』イーリロスら多摩南の天使達との戦いが終わった後の多摩では祝勝会が行われていた。
「奏音、大丈夫? 怪我してるみたいだけど、どうかしたの?」
それに気づいたシェナに奏音は「えへへ、少しだけ無茶をしました。でも、大したことないですよ」と笑いながら返す。
「奥空達は相模原の調査に行ってたんじゃなかったか?」
「はい、無事に終わりました。その事は後にしませんか? 実は私もあの歯車がどう言ったものかずっと気になってるんですよ」
彼の決戦の中で、能力者達の手元に
3種類の不思議な歯車を手にした者達が居た。ロウ博士はアザーバイドたちにつけられていたりしたそれらの歯車の解析を行っていたのだ。
「ああ、当然全部終わっている。彩心石の技術を用いて記憶を抽出して、それを元に色々な物が再現できた。
そろそろ持ち主の下へと帰っている頃だろう」
「色々な物、ですか?」
「ああ、それが何なのかは、各々の持ち主が知ればいいだけの話だろう」
ロウはそう続けると視線を落として自分の作業に戻ったか。
「ロウの話はもう終わりか? ならそろそろお前の話の方だな」
雀居 影臣(
r2n000218)は椅子に座りこんだ奏音へとそう声を掛ける。
「はい、
蟻の巣の調査と整備は終わりました。
皆さんのセカンドハウスとして使用できるように解放できると思います。
そちらの方は完璧です。褒めてくれてもいいんですよ、支部長」
「はいはい。ご苦労さん。なら……」
ちらりと影臣を見やって奏音が言えば、影臣はそう軽くいなして狗瀬 永利(
r2p000300)に視線を向けた。
「相模原の調査の結果ですね。相模原の魔女、の正体自体はまだ分かっていません。
ただ、これまで座間市で見られていた異常繁殖した蕾と蔦、それから水没した都市の上部が
溶けて崩れたような現象については正体が分かりました。
奥空さんはこれを
花蝕障と名付けました。
原因はまだ分かりませんが、魔力の花弁が拡散して周囲の建物や土壌などを浸蝕、崩壊させる現象のようです。
この現象によって侵蝕された土地は花一杯の美しい風景となりますが、建物や土壌を浸蝕するような現象が真面なもののはずがない。追加の調査と、進撃の準備が必要かもしれません」
「それに……そこに棲息、しているような怪物を見ました。体中を花に浸蝕されたみたいな、人型の怪物です。
私はこれを
花人と名付けてみましたが、最初は踊ったり、笑ったりしていました。
でも私達に気づいたのか、急に襲い掛かってきました。
その時、まるで花に対する蜜蜂みたいに、花蝕障の花びらを運んで汚染地域を拡大させてきました。
まるで活動範囲を広げようとしてるみたいに」
「花蝕障に花人……ですか」
今まで黙っていたノエが静かにそう呟いた。
「花蝕障って現象は私も前に見たわ……なんだか、あそこで凄く眠くかったのも分かったかしら?」
「魔力の花弁が運んでくるということは、もしかすると魔力酔のような状態なのかもしれませんね」
奏音の応急処置をしていたシェナが顔を上げれば、ノエがそう言った。
「相模原へ向かう時は俺とシェナも相模原には向かいましょう」
「えぇ、もちろん。わたし達も皆と一緒に戦うわ」
こくりとシェナが頷きそう言った。
「奥空さんも、ひと先ずはゆっくりしてください。今日は南街との戦いの祝勝会ですから。
これからの事はまた後で考えましょうか」
そう、ノエは緩やかに笑った。
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