#0118

馬の骨の眼

 ――胡散臭い集落だな、とは思った。
 嫌いなタイプの臭いがしたから。
「うわぁ……」
 思わず閉口する。あの、村の彼方此方に立っている道祖神のような石像から感じる、はなんだ。家を覗き込んだら、大体の家に祭られている、あのは?
 此処は何を祀っている?
 あの全てから、嫌な臭いがする。嫌いな臭いがする。いっそ憎いとすら思う臭いがする。

 ――ああ、ああ、これはこれは。■■■■殿。

 そう、佐竹 黄蓮が笑って言ったのを思い出す。

 ――好いところでしょう、鎌倉は。お義父上の作り上げた、にござりますれば。
   
   ええ、お義父上より、貴方様の事はうかがっております。
   貴方様の、目的も。
   衆生済度の時まで、まもなく、まもなく。
   それまで、お過ごしいただけますれば!

 いっそ哀れだ。いっそ無残だ。いっそ道化だ。いっそ愚鈍だ。
 とはいえ――『佐竹 黄蓮』という道化の事は嫌いではない。あれはおそらく、間抜けなだけで真っすぐなのだろう。そういう奴は嫌いではない。きっと必死なのだろう。この楽園を維持するために。それは良い。
 良いのだが――。
「あのアホ、なに祀ってっか理解ってンのか?」
 苛立ちに、思わずが出てしまった。。いや、おそらく――鎌倉に住むほとんどの人間は、自分たちが何を信仰しているのかを気づいていまい。
 気づいていないから、あんな顔ができるのだろう。気づいていないから、あんなへらへらと笑う事ができるのだろう。
 救われると。
 救いの時は来ると。
 あのようにへらへらと――。
「うぶすながみ――」
 つぶやく。いや、これは憶測にすぎない。すぎないが……。
「うーん、やっぱり、地下ですかねー。
 怪しいものは埋めて隠す――というか。
 元々そこにあったのを、利用していますね?」
 つぶやく。ああ、まったく、趣味が悪い。地下に囚われている、本来の結界の主せをりの事も気になるが――いや、それはおそらく、別件だろう。自分のやることではない。自分のやるべきことは――。
「観光ツアー、ですねぇ。
 ええ、なら、なんらか打開策を見つけてくれるでしょう」
 ふと、マシロ市の方へと視線を投げた。
 アイツはまだ、あそこにいるのだろう、とふと思った。
 まぁ、綺麗だからな、マシロ市は。そう思う。
 だから、
 大嫌いな親友だいすきなきみの事も。
「だから――クッソキショイんですよねぇ、鎌倉は!」
 思わず笑ってしまった。自分の活動は、あまりにも個人的なもので――。
 そう、これはあれだ。
 解釈違い、という奴だ。終末論すばらしきおわりに関する!

 ――シュヴァル・クノッヘンと名乗る自称女スパイから、鎌倉観光のお誘いがレイヴンズへと届いたのは、二月の良く晴れた日の事であった。


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ワールドトピックスいま世界で起きていること
過去のトピックス

鎌倉の結界内へと歩を踏み入れる事に成功しました――

2053年2月1日

鎌倉守護結界防衛の結果報告が返り始めています!

2053年1月28日

バレンタインボイス2053が開始されました!

2053年1月23日

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