「嘘じゃないって、さっきさぁ、ケツに手紙挟んでる二足歩行の大根が走ってて」
「はいはい、今日も元気ですね。ほら、偵察終わったらこの辺の物資運びますよ」
揶揄うようにそう言ったのは 速水 音々(
r2p008423)だった。拗ねたような顔をした仙導 成継(
r2p003473) は「マジなんだってば、ケチャップ賭けてもいい」とぶつぶつと繰り返している。
二人が居るのは第二戦区:浅草――彼女たちのプシュケーの拠点である
新宿からは地下鉄通路を通っての偵察だ。
ゲイムが動き出した事もあり、生き延びるための物資はあれども武器等の類が不足していることから各地に偵察要員と物資調達要員を送り
生き残る為の作戦を取る必要があったのだ。
成継が見たという謎の大根はさておいても、音々は早々にこの場を撤退してしまいたかった。
運び屋の勘と呼ぶべきだろう。
奇妙な大規模陣営こと、
人類の代表者気取りが第一戦区:台場での勝利を収めたらしい。
第四戦区:丸の内に巣を置いたバンダースナッチは時折身を揺らがせてどこかへと飛び立つ可能性だってある。
あまり無防備な姿を曝け出したくないのは本音であっただろう。
「二人とも。こっちに銃器類があった。大破局時代の遺物だろうけど使えそうだ。あと、
煙草も」
竜胆寺 マツリ(
r2p008405)がひらひらと手を振れば音々は「出て来た甲斐がありましたね」と肩を竦めて揶揄って見せた。
「急ぎましょう。
ティティもそうですが
ブレンダーズとの接触もあるかもしれない。
……どうやら、K.Y.R.I.E.と呼ばれる陣営も第二戦区方面への出立を決めたようですから」
「えっ!? 鉢合わせ、は流石になあ……。ややちゃんときたちゃんもまだ見つかってないんだよね。すれ違ったかな」
「どうかな……」
マツリは嘆息してからポケットに乱雑に煙草を仕舞い込んでから歩き出す。
そうしてからその柘榴色の瞳を細めたマツリが「撤退」と囁いた。頷く音々に手引っ張られてから成継は「天使か」と呟いた。
清廉なる巫女の装束。色素の失せた髪を結わえた老婆はその凛然とした佇まいを崩すことはない。
白い翼は折りたたまれ、彼女はプシュケーのこどもたちに気づくことはなくゆっくりと降り立った。
鈴鹿 燐音(
r2p002025) 、其の人は個人参加を行っていた天使達に
居場所を与えたイレイサーである。
ごちゃ混ぜは何処の派閥にも所属せず、ただ、
自己欲求の為にカタルモイ参戦を決めた天使たちの派閥であった。
「成程、次の戦場はここか……」
燐音が静かに囁けば、その傍らに立つルエトワール(
r2p005066)は緩やかに女を見る。
「来るんでしょ? ここに」
「急くな」
「でも、来るんでしょう? K.Y.R.I.E.。なら、殺そう。ゲイムなら、一網打尽に出来る」
「……おいそれと統一デバイスを有する人間は前に出ないだろう。落ち着きなさい、ルエトワール」
「でも、殺さないと。あいつら、殺した。友達、殺した、なら、殺そう?」
「急いては仕損じる。人間の気配がするという事は歌舞伎町の子供たちか、もしくは
デバイス泥棒が居る。
前者であれば狩ればいいが、後者は面倒だ。あれらは戦い慣れている上に早い段階からデバイスを奪取していた」
「……」
ルエトワールがじらりと燐音を見た。
第二戦区:浅草の入り口にK.Y.R.I.E.の人間らしき姿があった。ひとつ、ふたつ、いくつも――増えていくのは明らかだ。
それら以外にこの戦区に入ってくる者がいるとするならば、K.Y.R.I.E.を目的としているか戦功点稼ぎが目的の者に違いはない。
――ゲイムエリアで最終順位を着けてチップを配布する明確な指針が欲しい?
ああ、成程ね。鈴鹿お婆さんは、そういう所にこだわるタイプ……予測はついているだろうけれど、教えてあげよう。
「『エリア内での敵撃破数』『エリア内でのデバイス破壊数』『エリア内部での派手な立ち回り』『メイちゃんポイント』……」
「最後の、何?」
「さあ。単純に1つ目は勝利数、2つ目は死亡に追いやった数として、3つ目と4つ目はただの
奴の主観でしかない。
――が、比重を置いているのは前者二つであると見ても構わんだろう。
まだチップが行き渡っていない状態ならばその点数を稼ぎやすい」
燐音はルエトワールに姿を隠すようにと手招いた。物陰に、二人が姿を隠したならば目の前には一人の天使が降り立った。
「……クワイエットドール」
ルエトワールは呟く。都立
黑殘小学校教育研究会のリーダーであるクワイエットドール――
ツヅラザカ先生も戦功点稼ぎに訪れた一人だろう。
彼女だけではない。陰鬱とした学風を引き継ぐような雰囲気をその身に纏った都立黑殘小学校の教諭たちの姿が次々に見える。
クワイエットドールが少々不機嫌そうに眉を潜めたのは余りにも元気いっぱいな声が辺りに響いたからだろう。
「こっちだよ~~!」
フェネックを思わせる外見の少女は「さっき入り口にい~~っぱい、ほもさぴいたよね~~~!! みんなでがっんばろ~~~!!」とぶんぶんと手を振っている。
どうぶつさんファミリーを名乗った派閥のリーダーである
リフィネちゃん園長はその背後で優しい微笑みを浮かべながらバナナを食べ続けているゴリラ飼育員さんを振り返った。
「アッ! 待って、怒ってる人がいるからストップ~~~!! 廊下は走っちゃいけなさそうな気配~~~!!!!」
「わかりみ」
ゴリラが頷けばリフィネは幼気なそのかんばせに少しの朱色を差してからにんまりとクワイエットドールへと笑みを浮かべた。
クワイエットドールはその眼球だけを動かして周囲を確認する。燐音は確かに目が合った気がして唇を噛んだ、が。
「ロクリュウ先生、作戦会議をしましょう。予想より数が多くなりそうよ」
「ああ、そうだな。他の先生方も、
職員会議としましょうか」
クワイエットドールの指示に
六六 大六教諭は応じ、その場から一斉に引き上げる。
残されたリフィネとファンシーな飼育員たちは顔を見合わせた。「リフィネちゃんたちも作戦会議しよっか~?」と明るく告げる彼女もこの戦場には波乱の気配を感じていただろうか。
「……燐音」
「ご覧の通りだ。プシュケーの子供達、それに偵察要員として歩き回っているだろうティティフィティア。
戦功点とそれらの
餌目当てのどうぶつさんファミリーとやらと都立黑殘小学校教育研究会。
そして、我らブレンダーズに――人間たち……K.Y.R.I.E.。まだこの戦区は
決戦は開戦状態にない。どうすべきか見極めるべきだろう」
「……狩ろう、今のうちに」
呟く少女の声を聴きながら燐音は「好きにしろ」とそう囁いた。彼女らの派閥は何人でも受け入れる。
故に――何が起ころうとも構うまい。最終目的だけが統一されていればいいのだ。
「好きにしろ。我々はコスモスを手に入れるという目的だけで繋がっているのだから」
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