「結局、何だったんだか」
「何だったんでしょうねえ……」
呆れた調子で肩を竦めたアイリーン・アドル・アルケイン(
r2p008018)にカロル・フライシュッツ(
r2p008014)が苦笑いをした。
本国からの帰還命令の強度は当初より強いものになっていた。何でも本拠を襲った天使軍は数万体以上にも及ぶそうで……まぁ、それが陥落に繋がるものではないとしても、流石の彼等も口笛を吹きながらこれに対応するのが難しいのは良く分かるというものだ。
「観光は出来たんだから十分じゃない」
「お気楽モデルは人生楽しそうでいいわねえ」
「
人生の楽しみ方を知らないような芋女に言われたかないわよ」
丁々発止とやり返したアレクシア・ゴールディ・キャッシュマン(
r2p007971)にアイリーンは嘆息する。
天使の願望機は我欲なる願いを叶える為に有用なパーツだった筈だ。
同じく
探し人の為にこの力を欲するアレクシアなら幾分か気持ちは分かり合えようというものなのに。
(……ああ、違う)
そこまで考えたアイリーンは
考え直した。
あの忌まわしい滝壺で行方不明になった恩師の事をアイリーンは心から案じている。
アレクシアがドゥームス・デイを契機に行方をくらませた
金色の野獣を求めているのも事実だろう。
だが、そこに横たわる違いは余りに甚大であると言わざるを得ない。
「け、喧嘩はダメですよ!!!」
「してないわよ。じゃれてるだけ」
慌てたようなカロルにへらと笑うアレクシアはアイリーンとは違うのだ。
彼女は今すぐ彼に逢ってキスでもそれ以上でもしたいだけで彼の安否等最初から何一つ心配等していないのだ。
どんな出会いがあったかは知らないが、うっすらと聞いた限りでは
性悪を参らせる位のインパクトがあったという話だったから、きっとそれはそういう事でしかないのだろう。
焦れる時間が伸びるのはアレクシアとて本意では無かろうが、アイリーンは違う。
もう何十年も彼女は彼の事を心配し続けて過ごしているのだから。
「どうした。憂鬱そうだな、アイリーン」
「理解しているなら、気の立っている女には安直に話しかけない事をお勧めするわ」
「ふん」と鼻を鳴らしたエルネスト・モンテシーノス(
r2p008023)はアイリーンの言葉に頓着する気はないようだった。
「邪険に扱って後悔しても知らんぞ。何だったんだか、とか何とか言っていたがね。
お前達凡百は兎も角、僕が手土産の一つも無しに無駄な時間を過ごすものか」
「……どういう事?」
「フィールドワークでコスモスの正体は大体知れた。
命空骸戯とやらの術式構成もな。
欧州に戻ったら、願望機とやらの試作はしてみる心算だよ。尤も出力は本物には及ぶまいがね」
「……」
「
お前の望みにはそれで充分ではないかとも思うがね」
「……………」
「どうしたアイリーン」
「チューしてやろうか、と思ってさ」
「御免被る!!!」
「何時まで茶番してやがる」
アイリーンとエルネストのやり取りにうんざりしたようにジャック・ザ・リッパー(
r2n000177)が言った。
彼の背中にはスオル・A・メノラトス(
r2p005614)がぺっとりと張り付いている。
「帰るですよ、ダーリン。
二人の愛の巣に!」
「茶番の極みのような男に言われたくないのだが?」
「それは変な女にだけ言え」
「貴様等も大概に飽きぬなあ」
欠伸を噛み殺したパトラ・プトレマイオスXVI(
r2p007986)が呆れた調子で零した。
何れにせよ、Baroqueは欧州へ帰還する。
運営サイドとBaroqueサイドの利害は帰還で一致しているからだ。
本来ならばもう少し時間は掛かろうが、自分達を追い出したくて仕方ないタラリアの意向は嫌と言う程知れていたから問題は無い。
「……む」
無 極聖(
r2p005893)が面々に警戒を促したのはその時だった。
魔性の領域であるBaroqueの間合いにずかずかと踏み込む者は多くない。
彼の鋭敏な感覚が
異物を捉えたのは招待した覚えの無い客が現れた事を意味している。
「どこのどいつだ。命知らずは」
ジャックは唇を舐めて愉悦した。
匂いからして女だったからだ。
「……早速浮気ってヤツですか、これは」
「帰るぞ」って言ったのに、とぶすったれるスオルの殺気も研ぎ澄まされていた。
「出てきたらどうか。生憎と
己達に時間は無い。戯れる猶予は無い故にな」
「――――」
一瞬の躊躇いのその後に、夜闇の向こうから一人の女が姿を現した。
「……お仕事帰りのOLさん?」
「にしちゃあ、物騒よ。沁み込んだ硝煙の匂いがする」
アイリーンの言葉にアレクシアが応えた。
「専門家はどう思う?」
「ご指摘の通りかと。あの方、お洋服の中に最低五挺は仕込んでますよ!」
天真爛漫に言ったカロルの目が輝いていた。
Baroqueの面々の前で淡々とした風情を見せる女は「命は大事な方です」と惚けた返事で嘯いている。
「で、貴様は何処の誰じゃ。態々ワレ等の前に何をしにきた」
「私はオーレリア・ナイトフォール。長く傭兵をしていましたが――」
「……が?」
「――」
「――――!」
パトラの問い返しに答えたオーレリア・ナイトフォール(
r2p009056)の返答はまさにベルリンに帰還せんとするBaroqueにとっても実に意外なものだった――
※Baroqueがベルリンからの帰還要請を受け、命空骸戯から離脱しました!
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