「祇化ね。神性存在の干渉によって発生するエネルギーの計算ってのは興味ありにけりな。
まあ、かわょなぼくだけじゃなくて神祇院陰陽寮神秘対策課エトセトラと連携必須系だと、いろいろ手続きだるめなんだけど」
「そのメカニズムを解明する事が出来れば、御津那海だけでなく京都でも……と考えてしまいますね」
何せ、京都には
第八熾天使が存在している。2054年の始まり、アップデートが行われた
広域地理情報管理システム『アストラチカ』を参照する限り、最もK.Y.R.I.E.に近しい位置にいる熾天使は第八の座。その名前がリ=ルとエイ=ルという
双子であるのはK.Y.R.I.E.人事統合部の司令官たちも承知の上である。
諏訪や御津那海での干渉が見られ、その上でカタルモイにも焔狗を名乗る第八熾天使派閥天使が見られるとなれば、京都そのものも放置はできないだろう、が――どのように戦っていくかは命題だ。
「カタルモイを通して戦ってっと、時々思う事あって。
コスモスって熾天使に対してどれ位通用すんだろ? てか、あれの正体は実際なんだ」
「願望器……」
「でもハクち。願望器ってもさ、そもそもなんだって話じゃん。
コスモスってのは主天使級程度の出力が認められている。
景品としてチラつかされてるけど、真意はコスモスを現所有者のメイから引き離すコト」
「どうして引き離すのか、ですよね。コスモスがそれだけ危険であるのか、それとも
渡したい理由があるのか」
「コスモスが何らかの火種になるから熾天使たちが手にしたくないのかもしれんね。
厄モノっていうか? そんな感じ? それで人間に渡したい。面倒事は現地民、まあ、分かるよ」
「嫌らしい話ですが、何もかも憶測の域を出ない」
「そ。その正体が何か――われわれはそれをも理解していないってのはちょっと、さあ。ってなわけで、情報収集としようか」
七井 あむ(
r2n000094)が緩やかに顔を上げる。その傍に佇んでいた嘉神 ハク(
r2n000008)は「そうですね」とそう囁いた。
「わーざわざ、
仮想死亡停止に対する署名のお願いなんて送ってくるなんていい度胸じゃん? 敵ぞ」
そう笑ったあむに対して軍場 冬青(
r2n000257)は「バトルスタンバイとか叫んだ方がよさげ?」とそう笑った。
ハクとあむは冬青にではなく、その背後で冬青の肩に手を添えて微笑んでいる力天使に警戒するように一歩だけ下がった。「安心して、何もしないワ」などと信用も出来やしない台詞を吐き出すイサーク・サワ(
r2n000206)がにこりと笑う。
「それにしたって、来てくれるなんてネ。K.Y.R.I.E.の統一デバイス持ちの司令官サマ。良かったの?」
「なんかあったらかわょなぼくが盾になって死ぬだけだし、何もないと思って来たんだよ。何かある? ないなら信頼と友好の証で熱いベーゼでも交わすか?」
「アリよね。ン~~~マッ😘」
「サワちゃん、浮気止めなよ」と冬青が肘で小突けば彼はやだぁと身をくねらせた。妙な小芝居だが、安心して欲しいとでも言いたげな様子である。
「では、本題。K.Y.R.I.E.側を呼び出した理由について。
第十一戦区にいる天使たちが制御不能状態に陥っているのはコスモスが引き金となって、使用者のメイの権能が暴発しそうになっているから。
その理由を紐解けば、
仮想死亡はコスモスが発生させているのではないか――ってことだっけ?」
あむは真っ直ぐに冬青を見た。冬青は一度イサークを見る。それから大きく頷いて「推察ね」とそう言った。
「願望器は願いをかなえるためにそれなりの力を必要とするわよネ。なら膨大なエネルギーが仮想死亡からって思うのは普通のコト。
カタルモイがコスモスを定着させる儀式のようなもので、体を慣らしてコスモスの所有権譲渡を円滑にするためのものだったと考えれば、まあその推察って、ハズレてないんじゃなぁい!?」
「本音は?」
「タラリアちゃんから聞いたのヨ❤」
「……じゃあ、仮想死亡はコスモス由来ね、オーケー」
あむはじっとイサークを見てから嘆息した。その仮想死亡を停止させる理由はコスモスの暴走を早めないという意図があるそうだ。
「ぼくらのメリットは?」
「ぼくは決勝戦の勝ち残りを3位までに拡大してくれって申し入れようと考えてる。
そうすれば、お優しい君らがプシュケーを勝者に残して生き残らせられる可能性も増える。他の派閥だってそうだぜ。
……
決勝戦に出ないで済むの方法がどこかにあるだろうけれど、まだ知らされない今、ぼくらは出来る限り生き残る方法を探すべきだろ」
冬青の言葉には、きっと嘘はない。
嘘はないと思えるのは、今の
2位までという枠では余りに狭すぎるからだ。
K.Y.R.I.E.が1位になる保証はあまりなく、その上でたびたび顔を合わせているプシュケーと
1位2位で終了が確定しているわけではない。
3位までに幅が広がれば――例えば目の前で本気で仕掛けてくるかもしれない
案外有力株なティティフィティアとミハイル派閥と遣り合っても勝ち残れるという可能性は増加する。
「仮想死亡がなくなるデメリットはねェ、アンタたちがこれまでと同じ戦い方してたら死んじゃうコトでしょ?
でもメリットは多くない? 決勝戦の枠が広くなる。コスモスの暴発をある程度は抑えられるカモしれない、こと」
抑えられるとはイサークは言わなかった。そんな保証がどこにもないからだ。
「……話は分かった。んじゃ聞いてやった代りに意見欲しいんだけど。
コスモスは主天使級レベルまでは何とかなるお墨付きの願望器。かわょでかよわいぼくらが手にした時、それをちゃんと制御できる保証がない。どうする?」
あむはこれ幸いと言わんばかりに自身の中で常に上がり続けていた願望器との向き合い方について整理するつもりであったのだろう。
冬青はぱちくりと瞬く。コスモスが1位に全て譲渡されるわけではなく、1位から3位にそれぞれ分割されると仮定したとしても、人の手には余るのは確かな事であろう。
「んーほら、さあ、きみら、噂じゃいいもん手にしたんでしょ。それの使い道になるじゃん。
ほら、三種の神器のさ――八尺瓊勾玉。あれ、容れ物なんだから、やってみりゃいい」
それはたしかに一考の価値がある。そちらについて考察してみるべきかとあむは唇を引き結んでからハクを見た。
「お話は理解しました。持ち帰って検討しましょう。
……
今それを話したのは、貴方方も参加するつもりだからでしょう?」
「そうだね、第四戦区。丸の内。地下鉄歩き回ってたら避けるにも難しいあの区画だ。
決戦が始まるとなりゃ、戦功点は直ぐに稼がなきゃ
後に響く。
――だからフラットな今、話しておきたかったんだよね。ぼくもまた、情報集めとくよ。分からん事ばっかだから」
どうして、とハクはそう言った。
「どうして、教えてくれるんですか?」
「ん? 信頼ってそうやって得るもんでしょ。ぼくはそうやって色んな派閥に取り入ってるティティフィティアだぜ」
※イラストオプションに『
祇化』が実装されました。(用語説明:
呪創/
祇化)
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