空白地帯多摩は5つのエリアに分かれている。
中央に存在する魔術仕掛けの街並みは、建物の損壊を魔力が多い植物が如く自由気ままに伸び上がっていく。
その中央より橋で通じる
東街――案内役であるアザーバイド、
スポルットは毛布でくるりと自身の身体を包み込んで能力者達を案内していく。
魔術仕掛けの壁には鍵が掛けられており、錠前を小さな体躯でコンコンと叩いたスポルットが振り返った。
「この先、危ないかもしれないよ!」
そう言ったスポルットにアルヴィナ(
r2n000127)は「承知の上だとも」と微笑みを浮かべながら頷いた。
東街の噂はアルヴィナとて聞いている。周辺に広がっているのは宇宙よりやってきた、とされている
星辰エネルギーと呼ばれているらしい。
「星辰エネルギーと言うのはどの様なものであるかは分からないが……それによって何らかの影響がもたらされるというならば解明はしておきたいものだな。
それにしても……これが明けない夜。常に輝き続ける星空か。圧巻だな」
息を飲むアルヴィナに桜庭 アンジェリーナ(
r2n000035)は「そうですね」と穏やかに頷いて見せた。
「この星空には何らかの意味があるのかもしれません。スポルットさんが仰る通り、ここから先はノエさんたちが中央に用意している魔術障壁は存在していない。
天使による襲撃に加え、友好的とはお世辞にも言えないだろうアザーバイドとの敵対も見込まれそうですね……」
「でも、すげー綺麗だよなあ。こういう星空見ると何か心躍るよな。
俺の
推しのドレスもこういう色味だったなって思った」
「推し……素敵ですね。マシロ市での生活ではそうした楽しみを見いだせますもの」
アンジェリーナが穏やかに頷けば、忍海 幸生(
r2n000010)は自慢げな顔を見せた。
「まあ……でもさ、星空は綺麗ではあるんだけどな、街自体はこんなにも破壊され尽くしてる。廃墟ばかりってのは……まあ、目も与えられないな」
――空だけは美しいというのに。
この場所は大破局以後、人々に忘れ去られ暴風に晒され蹂躙されるように何もかもを喪ってきたのだろう。
故に、このエリアは空白地帯と呼ばれているのだ。空白、人間がいなくなった場所。その意味を彼らはより強く感じたことだろう。
「あの」
燈明・彩(
r2n000137)はおずおずとアルヴィナやアンジェリーナに声を掛けた。
少し不安げな顔をした彩は「こっちに来てもらってもいい?」とこてりと首を傾げる。美しい星空の下、のんびりと歩いていく彩がそっと目の前に立っていた青年を指さした。
星と言えば――
宇宙偏執狂、時谷 雨竜(
r2n000050)だろう。
「雨竜さんがどうかしましたか?」
「少しだけ周囲の確認をしようと思ったのだけれど……唐突に雨竜さんが立ち止まって動かなくなってしまって」
「なんか
スゲー宇宙っぽいの見つけたとか?」
四人が雨竜の背中に追いついた時だった。彼はゆっくりと、ゆっくりと四人を振り返る。
「……生きてる?」
「へ?」
ぱちくりとアルヴィナは瞬いてから彼を見た。両の眼を見開いたまま、雨竜はまじまじと幸生や彩の姿を眺めている。
「いや……何かを見たんだ。違う。可笑しい。オレが見たのは
幻覚か?」
頭を抱えた雨竜が首をふるふると振った。宇宙を眺め、慌ただしく叫んでいた訳ではない。彼はじっと仲間たちを眺めてから唇を動かした。
「――天使を見た。美しい、夜空のような天使だ。それが……オレ達を攻撃しようとしていた」
「そんなこと、起ってないわ?」
彩は不思議そうに周囲を眺めてから「ほら、まだ天使もいない」と首を振ったが、雨竜は「いや」とぽつねんと呟く。
「……幻ではない、な……。あれは、変なノイズが奔って――」
「星辰エネルギーの影響だろうか。一先ず、調査は続けておこう。スポルットも何か知っているかもしれないしな」
ゆっくりとスポルットを振り返ったアルヴィナは「一先ず、戻ろうか」とそう声を掛けた。
美しい星が煌めいている。艶やかな夜空の向こう側、渦巻く
黒き風は、ただ、静寂だけを湛えていた――
※限定クエスト「ピアシング・ブルー」「シャイニング・ブルー」は3月10日23時59分に終了予定です。
ロストアーカディア二周年!
