「なんか凄い忙しそうにしてる。何だね、何だね、親友達!」
相変わらずの雰囲気で弾むような足取りでやってきたのはポラン・チャラン(
r2n000076)。
K.Y.R.I.E.に保護をされた腹ぺこオルフェウスは秋めいた空気を感じながら刻陽学園へと散歩へと赴いていたのだ。
「ん~? 氷取沢広域作戦の結果報告? 報告書を纏めるために忙しそうな奴らは見たけどもだな。
ねえねえ、どうしたんだい。僕様ちゃんに教えて、教えて、あ、違う? ご教授たのもー!」
ずいずいと迫ってくるポランに刻陽学園中等部に通っている鴨 藻塩(
r2n000066)ははっとした表情をしてから「は、はろー」と挨拶をした。
「僕様ちゃん、じゃぱにーず喋ってる」
「あ、ほんまやわ。なんかえらい忙しそうやろ? あんね、スポーツ大会というか
体育祭があるんやって。
それで、組み分けが発表されたから、クラスTシャツ着て皆、大盛り上がりで選手登録してはるみたい。まろも何かでよかなーって」
藻塩が指差す先には学年単位での組み分けが発表されている。刻陽学園は学年も自己申告制という個人の裁量に任せる部分が大きい。
その為に大雑把に学年での振り分けが行なわれて居るらしい。刻陽学園に通い始めて早くも約2年。藻塩はポランよりも学園に詳しいのだと言いたげに胸を張って案内をしている。
そんなお互い
異世界からの来訪者の二人の前で組み分けと競技表と睨めっこをしている羽崎 楓奏(
r2n000036)の姿があった。
「どうかしたん?」
「え? んん……どの競技に出るか迷っちゃって。何をしようかな?」
渋い表情をした楓奏。その首から提げられたカメラは体育祭でのクラスメイト達の有志を撮影するためのものなのだろう。
悩ましげな彼女に「俺、今なら着ぐるみリレーとかすげー高得点叩き出せそう」とそう言ったのは忍海 幸生(
r2n000010)その人だった。
「あ、朝のホームルームの時にウサギ被ってたって聞いたよ! 二年生のクラスで騒ぎになってたもん」
「うん。普通にセンセに怒られた」
「あはは。学園祭気分が抜けてないんだ?」
「軽い悪ふざけの気分みたいな、さ。俺、何時も弁当が楽しみなんだよなあ」
クラスで弁当を分け合って食べるのなど、正しく学園生活の醍醐味だと幸生は笑う。
「分かるなあ……あ、そうだ。組み分けはもう皆確認済みかな?」
「あー……今回の俺は、赤かな」
目を眇めるようにして表を眺めた幸生は「高1は白だな」とそう言った。規則性を持って組分けをされているが時折カラーが逆転していたりする為に念のための確認が欠かせないのだ。
「まろ、全部確認したんよ。
初等部の1年生、3年生、5年生。中等部の1年生と3年生。それから高等部の2年生が赤やろ?」
「そうそう。それで初等部の2年生、4年生、6年生と中等部の2年生、高等部の1年生と3年生が白組。
――って、言っても刻陽って学年自己申告制だからふわっとした組分けだし、選手登録時に組移動する人も居るみたいだけど」
楓奏は自由気ままな学園だなあと楽しげに笑った。大学生やK.Y.R.I.E.の能力者も有志として各組に自由に登録することが可能だ。
大らかな学園だ。その為に、組を分けては居るが総合得点で競い合うことはないようである。ただ――今年はフレッシュが流入した年である為にそうした可能性はある、のだが。
「やっぱ組で競い合いたいってブラックシープの目安箱に連絡があったらしいぜ」
「そうなんだ。それも楽しいもんね……今年は遠征任務もあったり、フレッシュの皆も増えたから、競い合うより楽しもうに振り切ったって聞いたけども」
刻陽生として過ごす
新世代の二人の元へとごろごろと音を立てて転がってきたのは大玉だった。
ぎょっとした幸生と楓奏がそちらを見れば「僕様ちゃん何組にしようかな?」と楽しげに大玉を転がすポランとアガルタの野菜の姿が見えた。
「野菜は参加出来ないだろ」
「野菜差別じゃん。ねー。大根。ひどーい、大根ちゃん泣いてるよ-」
楽しげなぽらんは「体育祭楽しみだ-」と大根を抱えてやんややんやと囃し立てながら
10/12-13と日程が書かれたポスターを眺めて居た。