歌とダンスが好きだった。
それに、歌とダンスは結構うまい方だった。
他に目立って得意なこともなかったから、歌とダンスで生きていこうと思うのは当然のことだった。
――夢と希望があった。
その時はそうだった。
街の片隅で歌い踊る俺を見る者は誰もいない。
いくつかオーディションも受けたけれど、どれも結果はNOだった。
特徴がない、パッとしない、華が無い――いつもそんなことが書かれていた。
特徴って、なんだよ。俺はこんなにも全力なのに。歌とダンスの熱量ならそこらの奴には負けないのに。
歌とダンスが好きだった。
夢と希望があった。
そうだったはずだった。
ダンスもできるシンガーを目指していた俺は、金の為に芸人になっていた。
バカみたいな顔でバカみたいに叫び歌えば、オーディエンスは馬鹿笑いをした。
馬鹿々々しい。こんなのは俺の本当にしたいことじゃない。
でも、金が無いとこの世界では生きてはいけなかった。
全力で歌い踊るよりも、人々は俺を見ていた。
歌とダンスが好きだった。
夢と希望があった。
そうだったはずだった。
もう全部過去形だ。
気付くのが遅すぎた。
俺に才能はなかったんだ。
だけど、何もかもツイてないワケじゃなかった。
キング。ロックンロールの
王様。もうこの世界にはいない。過去のスター。俺は彼の……誇張をした物真似をやった。それはなぜだか分からないがあっちこっちで大ウケして、俺は有名人になった。
いろんなテレビに呼ばれた。映画に一瞬だけ出たこともあった。グッズも出て、ファンもできて、多くの人が俺を取り巻いた。恋人ができて、結婚もした。
コメディアンとして有名になるとは思っていなかったけれど、俺はやっと世界に認められたんだ――この世界にいてもいいんだと、思えた。
――それも長くは続かない。
同じネタを続けても、飽きてくるのが群衆だ。
俺には才能なんてなかった。
コメディアンとしての才能もなかった。
仕事はどんどん減っていった。人はどんどん俺を忘れていった。妻とは呆気なく離婚をした。住んでいた豪邸、車を、あれもこれも何もかもを手放した。
もう夢も希望もない。
それでも歌とダンスは好きだった。
鏡の前で好きに歌って踊っている時だけ、俺は俺でいられた。
それともうひとつ。
腕に刺した針から、魔法をプッシュすれば、そうしていれば、そうしているときだけ、俺は、おれは、なにもかもをわすれて無敵になっていられられていられるりた。
そうか!!!!!!!!!!!
もう大丈夫なんだ!!!!!!!!!!!!!!!!!
「Hoooooooooooo!」
「きゃ~~~~~っ!」
歌って踊るロケロラ★ベイベー(
r2p007761)の周り、ぴょんぴょん跳んでノっているのは少女天使達だ。
「やば! ウケる~~~」
少女天使を引き連れているリーダー、ココも本当に楽しそうで、ロケロラ★ベイベーの歌に合わせてめいっぱい踊って。
東京、渋谷。それは決戦が始まる少し前のこと。
少女も男も、今は、今だけは、自分でいられた。
――カタルモイにてリミテッドクエスト、『スナーク狩りの空』が開始しました……!
命空骸戯 - 旧展示場要塞システム/ゲイム・ルール
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