地下を手繰る様に往く。無数に枝分かれしたそれは嘗ての時代、この場所に地下張り巡らされていた名残なのだ。
急成長していく都市に合わせて、その計画の一種として作り上げられた地下線路達は、国民生活にとっては無くてはならないものであっただろう。ぐるりと巡るだけではなく利便性を追求し、主要駅を複数持つことによって都市住民たちの生活的安定性は向上した。さらに、その周囲には飲食店等の商業設備が設置される。これも、地下に設置される事により、狭苦しい都市の有効活用が行われていたのだろう。――が、それも過去。今やその場所は大穴を開かれて地下鉄線路と連結されている。
無数に存在していただろうテナントショップは無残に繋がり、所々に存在する出口と呼ぶべきは崩落で塞がっている個所もある。
その代わりと言わんばかりに新たに掘り進められた横穴は
東京23区住民が生活の為に、そして
天使のゲイムの攻略の為にと作り上げられた支線だろう。ごりごりと頭を擦れるようにその新たなる横穴を広げていく壊速列車 ジャガーノート(
r2p007139)の勢いたるや。何処が本線であったかを忘れさせるかの如き勢いである。
「っと、あ、危なすぎる~~~!? あやうくわたくし、轢かれてしまう所でしたねぇっ!?」
心臓が胸から飛び出してしまいそうな、そんな心地に陥りながらも『黒い犬』 ジュリアーノ・ベルティ(
r2p008441) は胸に手を当てて深く息を吐き出した。
「ねっ!?」
くるんと振り返ったジュリアーノに「はあ?」と苛立ちばかりを露わにして百鬼 奈鬼羅(
r2p008412)は答える。
「……そもそも、此処で何をして
居るか聞いてもよいのか? 貴様。
確か……無所属でカタルモイ参加をしている
疾駆の犬であろう?」
「あはは、知られてるんですねえ! ええ、ええ、無事にここまで逃げ延びて来た元気いっぱいの走り屋ですよ」
旧展示場要塞管理人の一人――つまりはK.Y.R.I.E.の
味方である――である奈鬼羅が対峙していたのは無所属を名乗り上げ、自由気ままにカタルモイ戦地をあちらこちらと走り回っている能力者だ。
今、奈鬼羅達は地下鉄探索途上にて、志佐島 ニイナ(
r2p008403)や立花 空葉(
r2n000034)、花蔭 志優(
r2n000084)が北上経路を探索した事により旧上野駅周辺制圧を行う事を決定しそのルートを辿っている最中であった。
丁寧なマッピングが行われたそれを幾人よりも集め、より詳細な地下地図を作り上げる事を目指した行軍により、もうすぐ旧上野駅に辿り着くと言ったその最中に
彼と出会ったわけである。
「邪魔をしたいわけじゃあありませんよ! そのぅ……K.Y.R.I.E.の皆さんは
第11区の現状は把握しておられますか?」
「――ある程度の情報は持ち合わせておるとも。
まず、日暮里にプチコロニーが存在した事。旧上野駅は敵の手には落ちておらず空白地帯となっている事」
「ああ、元々は上野の周辺って
どうぶつさんファミリーの拠点だったらしいのですが、彼ら、蜘蛛の子散らす勢いでしたでしょう?
なのでッ、そう。今は空白のようですね! あ、わたくしは日暮里にもよくお邪魔していましたよ。生活って大事ですしね」
「………」
饒舌なジュリアーノを奈鬼羅はじらりと見つめた。ならば、彼が11区の現状を知っているというのは嘘、ではいと見るべきか。
「疑ってますねぇ? ですよねぇ~? あははは、いやぁ、そうですよねぇ!
11区はフェンスが張り巡らされて侵入注意とまで書かれていました。塩化地帯に変化しているそうですねぇ。そちらについてはK.Y.R.I.E.の方が詳しいのでは?」
「塩化地帯になっているとは理解している。
そして、聞いておる限りならば、塩化地帯では人類は満足に生活できない。……肉体が損壊し、建物さえも腐食すると聞いている。
すべてを塩に変える権能は主天使メイの持ち得るものだと推測はしておったが、広域にそれだけの出力を発させておるのは――コスモス、ということだろう?」
ジュリアーノがじいっと奈鬼羅を見つめた。
そうだ。ただの主天使があれだけ広域に塩の権能を
永続させる事が出来るまい。
だが、その詳細については推測の域を出ず、コスモスと呼ばれた願望器が有用なものであると知らしめる為の広告材料の一つでしかないだろう。
「その、塩化地帯が広がっているのですよ! しかも
ゲイムエリアとして! 皆さん、ひとまず行ってみませんか!?
わたくしも、あちらには用事があったのですよね! いやあ、皆さんと一緒ならば安心です。わたくし、道中を安全無事に往くことができるだけでハッピーですから!」
「ゲイム……何があるのか、知っておるならばここで教えてくれるか」
奈鬼羅が問いかければジュリアーノはにんまりと笑ってから「知りません?」と問い掛けた。
「第11区、ミッション・エンドレスリーパー。
北部に辿り着いた参加者向けのボーナスステージですよ。無尽蔵に湧いてくる塩の天使を倒して戦功点をゲットする!
割と参加されてる方はいましたよ。ティティフィティアに、プシュケーに、仙豹やシパ・バルド、それから、無所属系の参加者。
天使の派閥でさえも塩の天使はステージ演出だと殺して回って居ましたから随分と進んでいるかもしれません」
ボーナスステージと奈鬼羅はそう呟いた。成程、各戦区にてこれまで直接的に対応してこなかった者たちはそちらで戦功点を稼いでいたのか。
「行ってみる、しかないだろうな……」
ボーナスと言うならば、それなりに実入りが良い可能性やもしくは一発逆転チャンスさえ想定される。
かつり、と音を立てて旧上野駅構内へと地下に
ぶち開けられた風穴より辿り着いた一行は、明るく笑っている
案内人の姿と打ち捨てられた巨大モニターと対峙する事となったのだった。
ラリーシナリオ『ミッション・エンドレスリーパー Bonus Time!』が始まりました!
同時にリミテッドクエスト『ミッション・エンドレスリーパー』が開催されています!
命空骸戯 - 旧展示場要塞システム/ゲイム・ルール
旧展示場要塞内「カタルモイ」専用ツールアクセス