シーズンテーマノベル『空蝉の音』
商品概要:シーズンテーマノベル
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基本価格 100RC~ |
景品
シーズンテーマノベル限定アイテム『盛夏の残照』
夜を待ち焦がれた夕焼け。来年、再来年、その先もきっと、夏が来るたび思い出す。【シナリオ時、誰かの姿を見つけやすくなります。】
サンプルSS:『空蝉の音』
登場NPC:天瀬 佑太(r2n000117)
「あづぅい……」
じりじりと焼け付くような夕日と、喧しいほどの蝉の鳴き声を聞きながら天瀬 佑太(r2n000117)はアスファルトの上を歩いていた。
普段と異なる浴衣と草履。暑さのせいで走る気力もなくなって、その歩調は非常にゆるやかだ。
どうしてアスファルトがこんなに暑いのかと言えば、夏日を受けて照り返しているからではあるのだが、頭でそのように理解していたとて納得できるかは別の話である。このままではご自慢のふさふさな尻尾も、日差しとアスファルトの照り返しでサンドイッチされて煙を発してしまうかもしれない。
少し先に長く伸びた日陰が見えて、佑太はそこまでひとおもいに駆け出す。影に足を踏み入れれば、頑張ったねというように風が首筋を撫でていった。
「あ、祭囃子」
その風に乗って聞こえてきた音に、佑太はぴこんと耳を立てる。自分が何のために歩いていたのかを思い出して自然と口角が上がった。
今日から夏祭りが始まる。賑やかな音楽と皆の楽しそうな声、屋台から香る美味しそうな匂い、提灯の温かな光――夜の空へ咲く大輪の花。
まるで手持ち花火のように眩く輝いてスッと消えてしまうような、楽しくあっという間な日の始まりがもう近くにあるのだ。
(今年もわたあめ食べるんだ。あと焼きそばと、たこ焼きと……うーん、あとは何があるかなあ)
去年から見た目は変わっておらずとも立派な中学生男子。食べ盛り育ち盛りの頃合いである。同級生で成長痛が来ただとか、たまたま暫く見なかったC組の友人は見上げるくらい背が伸びていただとか、そういう話には事欠かない頃合いでもある。
遅れるのはちょっと恥ずかしいから――長命化がある今、成長が遅れるどころかほぼこのままの可能性だってあるのだが、まだ佑太は気づいていない――佑太も早くそういう話に混ざりたい。きっと食べれば大きくなれるはず。今年の夏祭りでは屋台全制覇するのだと内心意気込んでいるのであった。
そんな目的を思い出せば、うだるような暑さにも負けない気持ちになる。なんなら日が傾いてきて暑さも少しマシになってきた。これなら祭り会場まで走っていける気がする。
急ごうと顔を上げた佑太は、手提げからペットボトルを取り出した。口をつければ生ぬるい水が喉を通って満たしていく。半分ほどを一気に飲んで、佑太は「よし」と呟いた。
今度こそ準備万端。佑太は長い日陰から飛び出て走り出す。残照が彼を照らしても、今度は気にもならなかった。
「ゆーうーたーくーん!」
「おーい佑太、おせーぞー!」
提灯に灯りがつき始めている。その下でクラスメイトたちが大きく手を振っていて、佑太も彼らへ手を振り返しながら破顔した。

