
シーズンテーマノベル『Feel at ease』
飛び出したならばそこにあるのは特別だ。
我らは生まれ変わることが出来るのだ。淡い秋空の下、烟る月の下、全てを隠して仕舞う闇夜に。
どよめきとしじまが繰返される。波のように押しては返すくだらなくも愛おしい日々。
さあ、玄関を開けて――そに待っているのはなあに?
商品概要:特別テーマノベル
商品 | 説明 |
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基本価格 100RC~ |
景品
シーズンテーマノベル限定アイテム『Feel at ease』
サンプルSS:『Feel at ease』
登場NPC:逢坂 純(r2n000078)、逢坂 絢(r2n000079)
ただいまにおかえり。その言葉を繰返す。ふたりはひとつ。その事には何も変わりはないのだから。
純と絢は「いと」でつながっている。屯と旬。あつまり、みちる。そう名付けられた双子だったのだから。
「それで、ね」
「うん」
だからずっと二人は一緒だと思っていた。それでも最近の純は絢の知らない顔をするようになったのだ。
楽しそうに笑う笑顔も、慌てたり、少し拗ねたり。表情がころころと変わるようになっていく。あまりに硬い表情筋を動かしてやろうと頬に手を遣ってむにむにと動かしていた時期が懐かしくなるほどの。
「……でね、それで」
「うん」
「絢は、どう?」
「ぼく? ぼくは――」
それに寂しさを覚えるようになったのは自分の弱さなのだろう。
彼から離れた方が良いと決めたのは自分だったのに。どうしたって、変わっていくかたわれを見て居ると寂寞を覚える。
ずっと一緒に居れば変わることが出来ないから。だからこそ彼から離れる事を決めたのだ。
ただいまとおかえり。その言葉を繰返してばかりでは二人きりの世界で閉じてしまう。ふたりはひとつ。それはかわらないから。
だからこそ、手を離そうと決めたのだ。何時までだっても握っては居られないと、思って居たのに。
「純はいま、楽しい?」
「ん、たのしい、よ?」
「そっか。うん、それならいいんだよ」
これから、マシロ市で過ごせば戦いは苛烈になっていく。
彼にはきれいな事しか知らないで居て欲しいなんて思っていたけれど、そんな事を純が許容する事は無い。
きっと、友人達が戦いに出るならば純は飛び出して行ってしまうし、自分だってそうだろう。
危ない事をしないで欲しいなんて声を掛けることも出来ないから「楽しいなら良いよ」とそうやってぎこちなく笑った。
「あ、そろそろ」
「うん、約束だっけ?」
「ん。また、お土産、もって――」
「いいよ。今日はぼく、横須賀の方に帰るから。また話聞かせて」
玄関の扉に手を掛けた純が僅かな躊躇の後に扉を開く。
「……いってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
――そうやって、君を送り出した。