
シーズンテーマノベル『陽光降り注ぐ日』
陽の光の温度が上がる。蕾が綻んで景色に色が乗る。
新学期。新しいクラス。新しい生活。出会いと別れ。
様々なものが移ろい、変化する時期。
寒さに震える冬はもうおしまい。
暖かな春は、あなたを優しく包み込んだ。
商品概要:シーズンテーマノベル
商品 | 説明 |
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基本価格 100RC~ |
景品
シーズンテーマノベル限定アイテム『押し花の栞』
サンプルSS:『麗らかな陽の光に』
登場NPC:三羽 那珂(r2n000118)
ふわあ、と三羽 那珂(r2n000118)は大きな欠伸をひとつした。
(今日、随分あったかいなあ)
窓越しに柔らかな春の光が差し込んで、どうにも眠気を誘発してくる。どうにか午前の授業は耐えたが、果たして午後は無事に乗り切れるか。
新学期早々、授業で寝落ちしているようでは先が思いやられる。……のだが、抗いがたい暖かさなのもまた事実。
弁当を持った那珂はとん、とん、とテンポよく階段を上がっていく。お昼ご飯をどこで食べようか。大海食堂で食べるのもありだったのだが、今日は弁当を作りたい気持ちになって、持ってきたのだ。
(弁当なら、自由な場所で食べられるしね)
外のベンチに腰掛けて食べるのもいいし、教室でクラスメイトとワイワイしながら食べるのもいい。
けれどこの暖かい光を浴びていたら、お昼も日向ぼっこのできそうな場所がいいかも、なんて思い始めてきて――いま、探しているのである。
横須賀キャンパスは広い。元は防衛大学校と呼ばれていたのだったか。訓練施設も充実している。階段を上がり続ければ、外の訓練場にちらほら人の影が見えた。
「あ、」
ふとその視界に小さな影が生じる。風に吹かれてきたのだろう、桜の花びらが窓にぺたりと張り付いていた。
流石に窓の向こう側じゃ取れないな、なんて思っていると、やがて花弁は再び風でどこかへ飛んで行ってしまう。次は誰かの頭にでも着地するだろうか?
視界から消えてしまうまで視線を向けていた那珂は、花弁の行方が分からなくなったところで、再び歩き始める。目指すは屋上――麗らかな日差しと、優しい風を求めて。
(……皆と来たかったなあ)
死んでいったチームメイトたちのことは、いつまでだって心に残る。本校から横キャンに来てもそれは変わらない。
彼らが生きていて、一緒に横キャンで生活していたら――そんな想像をほんの少しだけして、やめた。
きっとその想像は楽しいことばかりだけれど、過去に囚われているようだったから。きっといつまでも後ろを見るなと怒られてしまう。
大丈夫だよ。新しい場所へ進んでいけるから。皆が見られなかった世界は、あたしが代わりに見てくるんだ。
例えば、横キャンの窓から見える海。マシロ市から見るそれよりも海は広く感じられて、キラキラと陽の光で輝いている。遠洋はどうなっているだろう。その先の大陸は。
まだ見ぬ景色を思えば、階段を上がる足取りも軽くなるから。
那珂は屋上へ続く扉を開いて、広がった春の空に目を細めた。