シーズンテーマノベル『世界を染める白』
世界が白に染まる。
踏み出した世界は雪の白に染まって、空を雲の白が覆う。
しんしんと降る雪の白は、僕の足跡すら消して。
吐く息の白さは、僕をも白に組み込んでいく。
何処までも白く、白く。
商品概要:特別テーマノベル
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基本価格 100RC~ |
景品
シーズンテーマノベル限定アイテム『メロサンタのクリスマスボックス』
キラキラの包装紙とリボンでラッピングされたプレゼント。「メリークリスマス! メロサンタからプレゼントだぞ!」【シナリオ時、ほんのり視線を集めることができます。】
サンプルSS:『僕の小さなサンタクロース』
登場NPC:メロディアス・ハイギャラクシア(r2n000110)
マシロ市を白に染めるような雪が降る。
屋根も、道も、木々も。全てが白に染まっていく。
今日はクリスマス。誰もが家路を急ぎ、家族と過ごす夜を楽しみにしている。
キラキラと輝く、色とりどりの飾りとライト。モミの木の上に輝く星も何処か楽しげで。
けれど、僕には何もない。
この時代にフレッシュとして飛んできた僕には。
K.Y.R.I.E.に保護されて、能力者として活動してはいるものの、特記戦力ほどではなく。
然程交友関係が広いわけではなく、当然……家族もいない。
(こんな時代でも陰キャ極まれり、か。救いがないな……)
サク、サク、と。
積もっている雪の上を歩いて、ふとその辺りの店に視線を向ける。
今日のような日には真っ白なクリスマスケーキも売っていて、それを買って帰る人も多い。
合成クリームに代用イチゴ。そんなものでも本物のように美味しいのだから、本当に凄い時代だ。
多少不便で多少窮屈であっても、きっと今の時代も大抵のものはある。
こうして何か疎外感を僕が感じているのも、きっと、それは……僕が。
――カラン。
そんな音が、響く。まるでトナカイの鐘のような、そんな音。
クリスマスだから、そんなこともあるだろうか?
サンタクロース。そういえばもっと小さい頃は、良い子だとサンタクロースが来ると信じたんだっけ。
あの頃は、こんな風になるなんて思ってもみなかった。
もっと両親に、家族に。言えることは、出来ることはたくさんあったはずなのに。
――カラン。
鐘の音が響く。
僕のではない足音が響いて。
誰かの吐いた白い息が、僕の視界より下から昇ってくる。
「んー、どうした? そんな悲しそうな顔して」
「え?」
サンタクロースがいる。
違う。この銀髪の子のことは、知っている。
横須賀キャンパスで有名な……確か、メロディアス。メロディアス・ハイギャラクシア。
僕よりもずっと年下に見えるその子は、サンタクロースみたいな恰好で僕の隣で僕を見上げている。
背負っているのは……サンタクロースの袋、だろうか?
たくさんの物が詰まっているように見えるけど、これから何処かに行くんだろうか?
僕よりはずっと交友関係も広そうだ。きっと、楽しいクリスマスを過ごしているに違いないし……これからも、そういう何かをする途中なんだろう。
――ああ、惨めだ。
僕は、どうしてこうなんだろう?
たった一人で、僕は。
いや、誰も悪くなんてない。ただ、僕がどうしようもなくて。
「ほら」
「え?」
気付けば、メロディアスちゃんが僕に袋から取り出したキラキラの包装紙の箱を差し出していた。
緑のキラキラ包装紙に。真っ赤なリボン。これでもかというほどにクリスマスプレゼントな、そんな箱だ。
「今日はなー、クリスマスだからな! プレゼントだぞ!」
「え? でも。僕に……どうして?」
思わず聞いてしまってから馬鹿か、と思う。ただありがとうと言っておけばいいのに、僕は。
「そりゃあなあ。皆が皆幸せでいられるわけじゃないからな! 我はなー、こういう日こそ皆を笑顔にしたいんだぞ!」
「それは、なんて、いうか」
「ごめん、なんて言ったらダメだぞ!」
僕の心を読んだかのように、メロディアスちゃんが笑う。
「我はなー、我がこういうの好きだからやってるんだ!」
「どうして?」
「それはなー。自分の目が届く範囲だけでも笑顔だったら、我がちょー嬉しいからだぞ!」
嗚呼、成程。この子はきっと、こういう子なのだろう。
僕とは正反対で、それでも。いや、それだから。
「あり、がとう」
「どういたしまして!」
微笑むと、メロディアスちゃんは再び袋を背負う。
「メリークリスマス! 我はなー、メロディアスっていうんだ! また何処かでな!」
「あ、待って!」
プレゼントを抱えたまま、僕は彼女を呼び止める。
振り返った彼女に、僕は。
「……メリークリスマス。僕の、名前は――」

