横須賀作戦報告書01
「動物をいじめてるふてぇトンビ共、トンビならぬ細切れトンボにしてやったですよ!!」
堂々たる勝利のポーズをとる兎月 ゆめ(r2p002686)には後光がさしていた。
……が、その光がスンッと消える。
「って有言実行した直後にトンボが相手とは……どんなギャグ展開なんでごぜぇます???」
ゆめが倒してきたのはいわゆるでっかいトンボ。
横須賀基地周辺へと繋がるルートのひとつを塞いでいた狂暴な変異体の退治をしてきたばかりなのである。
今回行われた大規模な横須賀海岸線奪還作戦は、横須賀基地周辺に展開する天使部隊への攻撃と並行して、氷取沢拠点から横須賀方面へのルートを確保することも重要視されている。
たとえば横須賀基地周辺のホテル前通りを舞台に天使部隊の殲滅を行っていた連城 諒真(r2p003112)などはその疲労を僅かに顔に浮かべていた。
「しっかしそっちはトンボか。こっちは金と銀の天使で……」
「綺麗でいいんじゃない? ちょっと眩しそうだけど」
茜谷 凜華(r2p000198)は自分の戦った天使の事を思い出した。
「私の方はね……木だった」
「木?」
「木に擬態した天使で、誘い出したり燃やしたり大変だったんだから」
言葉からはそれはもう疲れの色が見えていたが、諒真も凜華も、その裏には達成感があったようだ。
フォートレス Mk-Ⅳ(r2p001532)はそんな雰囲気を察して表情を和らげる。
「とにかく、皆のおかげで安全なルート確保ができた。パールコーストの能力者部隊も手伝ってくれたしな。今は余計な邪魔が入らないように周辺警戒に当たってくれてるところだろ」
「ひとまず、私達の担当したエリアは安心……といったところですね。トリプルおとなしの面目躍如です」
「とりぷるおとなし?」
音無 沙織(r2p000458)のどこか自慢げな表情とつんと胸を張った姿勢に、Mk-Ⅳは小首をかしげる。
市街地付近を舞台とした大天使フィオーレ&スオーノとの戦いはなかなか激しいものだったが、無事に勝利することができた。
他のエリアで戦ってくれている皆のお陰ともいえるだろう。
そうしていると、乱寿郎 ナズマ(r2p000503)がふらふらとした足取りでやってくる。
「マホ蓋神拳が通じなかった。大天使級は格が違ったな」
言っていることの意味は若干よくわからなかったが、詳しく話を聞いてみると氷の大天使ライムとの戦いで善戦し、なんとか大天使を大きく消耗させることができたのだという。撃退には至らないまでも、強力な存在を消耗させるというのは戦略上重要な意味をもつだろう。
「なあに、かつて俺様が住んでいた地域を部分的にでも取り戻したんですから、大戦果でしょう! やはり俺様は強い……強過ぎますね!」
ギュスターヴ・ドラクロワ(r2p001707)が自らの前髪をかき上げ己に浸っている。
基地周辺の住宅地で行われたという大天使緑風のタントーンとの戦いは、この様子だとうまく勝利できたらしい。
「一応は順調、といった所か。私も対天使戦は初めてだったが……今回はうまく立ち回れた」
星衛 直人(r2p001133)も疲労困憊という様子ではあったが、強力な大天使たちとの戦いには勝利できたようだ。あえて強敵に一対一の状況を作れたのが大きかったのだろう。もし実力差が大きく勝利できない相手でも、強い駒を抑えておくというだけで戦略上の価値があるのだ。
「とにかく皆、お疲れ様……だな」
八月一日 夏無(r2p000869)は優しげな表情を浮かべて皆を見回した。
「何かあったのか? 確か変異体の殲滅作戦だったと聞いたが……」
「ああ、いや。成功した。問題無い。すこし、夢を見ただけだ」
そして、表情を引き締める。
「まだ作戦は進行中だ。皆、気を引き締めていくとしよう」
作戦報告書が重なり、その内容からは横須賀方面への進軍のポジティブな進捗がうかがえる。今は、戦い続けるだけだ。