Mashiro Holy Night 2052
「きずなぁ! しっかり 捕まっていてね!」
空を駆るパーチェ(r2p003037)はその背に乗せた黒須 きずな(r2p002655)へと声を掛けた。
「だいじょうぶ! 今日は稼ぎ時だから頑張ろうね」
「そうねっ! 深夜配達業務はしっかりこなしておかなくちゃ。
横須賀戦 大変だったから、2052年のクリスマス みんなのんびり な時間を 過ごすことになりそうね!」
うきうきとしたパーチェにきずなは「大忙しだね」と目を回した。
深々と降る白雪の中、マシロ市内を駆け巡った小さな小さなサンタクロース。
パーティー会場も、刻陽学園も楽しげな声音が響き渡っている。
「とっても 平和ね。うそみたいに 平和。
冬が 引き裂かれて 春みたいな 空が見えて。
雪が 降って 大地が 凍って。それでも 太陽が差すと 全て溶けて 水になって。
春は ひだまりと あたたかさに つつまれて。やさしくて ここちのよい 時間をくれるのよ。
――でも でもね 忘れちゃだめね。
K.Y.R.I.E.の 能力者では 帰らなかった人も たくさんいたでしょう?」
「うん……。訓練の時に一緒だった初等部の子とか、中等部の先輩で、横須賀戦で亡くなった人も居るって。
K.Y.R.I.E.で擦れ違って、挨拶をしてくれるおじさんも、氷取沢橋頭堡でお掃除をしてたあの人も……。
居なくなった人が、居なかったんだって気付くのはいつも終った後なんだね。
当り前だけど、これが現実なんだよね。そう思うと、どこか落ち着かないかな。
精鋭だなんだって、言われたって、いつかは、そうなっちゃうのかなあーって思っちゃうよね」
「きずなが? だいじょうぶ! しなないわ!」
「……言い切れないよ」
困った顔をするきずなにパーチェは「そうね でも だいじょうぶ って信じてるの」と柔らかな声音で告げるのだ。
横須賀基地奪還作戦が終結し、市長が保護していたという雪代 刹那(r2n000001)その人はK.Y.R.I.E.の能力者達の前に改めて姿を見せた。
――私は刹那。雪代 刹那。……何もかも、覚えて居なかったからこの名前も今、名乗らせて貰っているだけだけれど。
これからはマシロ市で皆と一緒に過ごしたいと思っているの。だから、その……よろしく、ね?
記憶喪失の片翼の少女は辿々しく、そう告げた。
これから彼女はこの都市でどうやって過ごしていくのだろう――?
「きずな?」
「ううん。荷物届けちゃわないと」
「そうね! さあ、もうひとがんばり。お友達へのプレゼントも 配り終えた?」
「も、もちろん……クリスマスプレゼントだもん」
聖なる夜に心地良い笑い声が聞こえている。深々と降る白雪の中、心地の良い時を今は過ごして――