横須賀重要拠点攻略作戦


「横須賀にある重要拠点へ、ようやく着手できるようになりましたね」
 嘉神 ハク(r2n000008)が穏やかな声で告げると、冬休みあけのK.Y.R.I.E.本部内に緊張が走った。
 本来ならば正月休みから明けたばかりのぼんやりとした空気が漂うはずの季節でありながら、彼らの表情にはむしろ険しさすらある。
 それも無理からぬことだろう。横須賀という言葉には、彼らにとって大きすぎる感情がぶら下がっている。
 2027年の横須賀撤退戦以降ずっと天使の縄張りとなっていた重要拠点、旧人類軍横須賀基地の奪還作戦には膨大な人数が動員され、強大すぎる天使軍に対し大いなる勝利をおさめ基地奪還を成し遂げた。
 そのために払った犠牲は数知れず、失った命も数え切れない。
 だがそれ故に、には皆並々ならぬ想いがあるのだ。
「いくつかの候補地が上がっていたはずだけど……ガリーさん、そちらの担当は?」
 話しをふられ、ガリー・ザ・マスカレイド(r2n000039)が被っていた仮面を静かに外した。
 老熟した空気をはなつ彼の目には、ハクと同じ真剣な光が宿っている。
「横須賀基地北部、追浜夏島工業地区です。
 産業機械、自動車、研究開発、重機――そして各種兵器工廠。旧人類軍の軍需産業を支える場所であり、ここの奪還・復旧が成れば、新たな設備の生産や、そのための雇用拡充が見込まれるでしょう」
 すらすらと語るガリーに、ハクは深く頷いた。
「横須賀基地のみに留まらず、周辺の重要拠点は積極的に抑えておきたいですからね。
 他の候補は確か……」
「今出しますね」
 束佐 文乃(r2n000085)が端末を操作してモニターにマップを表示させた。
 まずは南部にある旧人類軍防衛大学校。旧来の施設に手を入ればそのままフレッシュたちの軍事学校として転用が可能な場所だ。
 次に旧人類軍横須賀火力発電所。まだ設備が生きていればエネルギー確保に大きく貢献できる。
 そして旧人類軍吾妻倉庫地区。ドゥームスデイ以降に備蓄された新技術による備蓄食料と燃料は今でも充分使用可能だ。フレッシュ大量流入による食糧問題を直接先送りにすることができるだろう。
「これだけでもかなりの効果が見込めますけど……海に沈んだ施設も調べるんでしたっけ」
 文乃が三浦半島のうち水没したエリアを指し示す。
 そこにあるのは旧人類軍横須賀工科高等学校。旧人類軍武山駐屯地の二つだ。
 質問に答えたのは不破・蜜子・メリッサ(r2n000046)だった。
「はい。KPA-AS-02ケートスがロールアウトしましたから、早速投入されるでしょう。技術者たちも凍結していたプランが形になって喜んでいましたよ。
 私達も工科高校へのサルヴェージに向かう予定です」
 ケートスというのは小型の潜水艇である。装甲を含む耐久性に特化した機体で、サヴェージなどが跋扈する危険な海での探索のために開発されたものだ。
 それぞれ潜水艇で乗り付けて重要な技術資料などをサルヴェージする計画が進んでいる。近いうちにこれらも実行されるだろう。
 ハクは小さく息をつき、マップに目を細める。
「僕たちが手に入れたものは、とても大きい。今のままではただのだけれど……必ずこれを、未来の糧にして見せます」
 その言葉は今のK.Y.R.I.E.スタッフたちに向けたものでありながら、かつて犠牲となった戦士たちに向けたものでもあった。
 未来へ進むため、今を確実につかみ取る。その責務が、勝者である自分達には課せられているのだ。

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