2053年新年会02


 2053年の始まり。つまりは新年会が、中華街にある竜花楼酒家にて行われていた。
 フレッシュの大量流入を受けて初となる正月は、これ以上にない賑やかさを見せている。

「十辛だとけっこ口んなか痛めでよき」
「え、い、痛いのが良いんですか!?」
 花祀 あまね(r2n000012)が刺激強めの麻婆をぱくつく横で、セリエラ・ギリエ・メリシエル(r2p002789)が甘いココアを片手に信じられないものを見る目をしている。
 会場の空気が変わったのは、その時だった。
 店の扉が開かれ、入り込んだ冷たい風に振り返ると王条 かぐら(r2n000003)が立っている。
「お、新年から皆集まってるね。どうかな? 盛り上がってるかな?」
 K.Y.R.I.E.室長の登場に一部の者がざわつく中、鳳 菖蒲(r2p000556)が冷静に頭をさげた。
「おや、新年明けましておめでとうございます」
 室長も新年会に? という視線を向ければ、桜庭 アンジェリーナ(r2n000035)がその後ろから姿を見せる。
「新年会の会場というのはこちらでしょうか? まさか室長様までいらっしゃっているとは」
「結構人いるなぁ」
「確かに……」
 そのまた後ろから、樋屋 雲雀(r2n000089)がのんびりとした様子で顔を見せる。
 彼の言うように店内は人でいっぱいであった。運送やの仕事を終えた三鉄 駆(r2p001088)も顔を出しに来たようだが、空いている席を探すのも一苦労といった様子である。
「……人が一気に増えましたね。麻婆豆腐、辛いやつ頼んでる人もいるから、気を付けて」
「辛いのはなぁ、痛いよなぁ……」
 矢風・初雪(r2p000958)があまね同様真っ赤な麻婆豆腐をすくいながら振り返ると、香りだけでも辛い気分になってきたのか雲雀が目を細めた。
「辛いものは平気ですね、私は。痛いだけなら我慢できるので。
 苦いものや酸っぱいものは、後でお腹が痛くなる事が多いので苦手ですね」
 赤井 朱音(r2p001714)がその話題に加わると、興味深そうにかぐらたちもテーブルにつく。
「辛いのあんまり得意じゃないけど好きなんだよね」
 痛みすら伴う辛さにしびれながら楽しんでいると、Beatrice Carmina(r2p004365)が指で宙に文字を描いた。
「『こんばんは、かぐらちゃん』」
 そしてさりげなく注文していたヨーグルトを横に置く。
「『辛いものって、なかなかどうして食べたくなるんだよね。わたしも食べてみようかな。どこにあったの?』」
「辛っ……!?」
 手早く食事を終えて席を立とうとしたフィレイナ(r2p005141)が、うっかり激辛の麻婆豆腐を口にして、フードを目深に被り直しつつも慌てて水を飲んでいる。
 あれは誰だろうとすれ違い、ラフィ・A=F・マリスノア(r2n000017)もテーブルについた。
「あ、ジャスミンティーっていい香りでおいしいよね、私これ好きなんだ」
 回りが激辛料理に痺れているなかでなんともマイペースである。おかげで回りもペースを取り戻したのか、話題も徐々に別のものへと移ろいでいった。
 そこへ、新たに扉が開かれる。
「何のお話? 人類?」
「予算の話でしょ?」
 ナナ・シドール(r2p001063)と紫崎 天子(r2p001137)が店に入ってきた。
 確かに直前までお金の話をしていたらしい。といっても『涼介君自分だけ贅沢するからなー』という話である。
「お金は大事だぞ。特大の望遠鏡買うのにどれだけ必要だと思っている。だから予算を増やしてだな……」
「やはりあの市長と居ると疲労も溜まりやすいんでしょうね」
 時谷 雨竜(r2n000050)が重々しい口調で言った。Bullet Salvación(r2p004480)がさもあらんといった様子で頷いている。『あの市長』の部分に共感がもててしまうのは、皆の記憶にも色々と新しいからだろう。
 回りの者たちがそれこそ辛いものでも食べたように目を瞑った。
 辛いは辛いでも世知辛い話なのだった。
「こんばんわだ……なんだ? 市長を増やす?」
 そこへ、こんな日でも仕事をしてきたらしい小石川 恵(r2p000181)が加わった。会話を断片的に聞いたせいで変な混ざり方をしたらしい。
「違うよ、室長を増やすんだよ」
「三人にね」
「なんだって?」
 困惑していると、エドワード・ルイス(r2p000459)が落ち着いた様子で顎に手を当てた。
「泣いてる室長が三人に増えたら流石の市長も心を痛めて……いや変わらなさそうだなあの人」
「私が増えたら賭け金が3倍になりますっ!」
 ワインオール・クラフトラヴ(r2p004817)が華やいだ声をあげた。なるほどと言う顔で振りかえる恵と駆。
「私が増えたら医療行為も捗っていいな」
「あ、でも俺、多分自分がいたら殺し合い始める」
「結果お年玉が……0倍です!」
「差し引きで駄目な方向にいってない?」
 話がまたもやおかしな方向に傾こうとしたところで、Aria=Penlife(r2p000067)がばーんと扉を派手にあけて現れた。
「ただ酒が飲めると聞いて!」
 振り返り、歓迎の意思を示すレイヴンズたち。
 なんだかんだで、賑やかなればそれでよし。マシロ市は今年も変わらず元気いっぱいなのであった。
 ことしもよろしく。そんな声が交わされながら、新年会は暮れてゆく。