鎌倉守護結界防衛報告書03


「鎌倉を覆う結界に認めさせる……ね」
 ソラ(r2p000558)は西に沈みゆく太陽を見つめながら、白い息とともに呟いた。
 氷取沢西部を突き進み、2048年以降連絡のとれていなかった鎌倉人類拠点との接触に成功したK.Y.R.I.E.は、佐竹 黄蓮を初めとする鎌倉よりの使者たちと共に周辺地域での掃討作戦を行った。
 八千栄 千蔓とその妹を巡る案件を終え、氷取沢の拠点へと帰ってきたソラは現状を思い返す。
 あの依頼の顛末自体も謎のあるものだったが、それはそれとして鎌倉の動きもやや気がかりだ。
  鎌倉からの使者、竹上 公人と共にアリエースや天使の討伐を行った日野原 晃輝(r2p002534)、そして江原泰西と共に水没少女ヒナコの討伐を完遂した月宮 まこと(r2p000591)たちもなんとなく西の空を見た。
「僕の戦ったヒナコちゃんは、鎌倉で羽化するくらいのことがあったのかも……って。
 今回のことで結界を通れるようになれば、中を見せてもらえるようになると思うけど……本当に鎌倉って良い場所なのかな」
「こっちの案件には聖釘も関わってたしな。まあ、疑いだしたらキリが無い。
 市内で天使化する人間が出るというのはマシロ市でもありうることだ。聖釘を扱う奴が現れることもな。今のところはまだシロともクロとも言えないだろう」
「暫定的には味方……というわけですね。確かに好意的ではありましたけど……好意的すぎる気もします」
 九重 縁(r2p001950)は天使ミカハヤヒ討伐に同行した安曇 旭花の様子を思い返していた。
 天使を倒した際の喜びようは、単に天使の脅威を恐れている人間のそれでも、天使を憎んでいる人間のそれでもないように見えた。
 ならなんだと問われれば、答えられないのだが。
 暫くすると、鎌倉から派遣されたチセと共に天使や変異体退治をしてきた桟原 紗穂(r2p001695)と『石槌の天使』カナト、『青杖の天使』ミズキの討伐に出ていた月城 ソラ(r2p001474)たちが輸送車両に乗って戻ってくる所だった。
 車両から降りて、外に立つ縁たちのもとへと歩いてくる。
「こんな寒空の下でどうしたの? 何か楽しい話?」
「……では、なさそうだな」
 回りの顔色を見て、ソラが息をつく。かつての先輩とのを果たした後だ。彼自身、お世辞にも良い気分とは言えない。
 紗穂は苦笑し、『だよね』と小さく答えた。
 同じく車両から降りてきたサイガ ヒビキ(r2p000706)。ピエトロ・ピッツァラストロなる鎌倉側のピザ職人(?)と大量の天使級討伐を終えたばかりで披露の色があったが、様子を察して頷いた。
「色々あると思うけど、別におっさんたちは襲ってきたわけでもないしな。一緒になって天使倒しただけだぜ?」
「まあな。信用するかどうかはさておき、様子は見てもいいだろう」
「ん。とにかく作戦はおおむね成功したし、鎌倉から派遣された人達も含めて皆無事。今のところはオールオッケーじゃない?」
 紗穂の言葉に仲間達は頷き、誰からとも無く建物へと歩いて行く。
 まずは休憩室にでも帰って温かいものを飲もうか。それより戦果報告が先か。そんなことを、考えながら……。