崩天の下へ


「――アンタたち、ようやく来たのネ」
 イサーク・サワ。彼女は主天使ミハイルの下にある天使が一人である。
 先日のアレクシスとのの場にも同席したイサークはミハイル一派に属する者として随分と永い付き合いがあるものだ……が。当然ながら彼女一人のみで一派が形成されている訳ではない。他にもミハイルの下に集う天使はいるものである――それが。
「来ましたよ姐さん! えぇえぇミハイルのダンナと姐さんがお呼びならどこまでも――あぁそうだ。姐さんがダンナの無茶に巻き込まれたって話は聞きやしたよ。大変でしたね!」
「大変でしたね、じゃないのよエマヌエル! アンタその間どこにいたのヨ、もォ」
「いや~ちょっとヤボ用で忙しかったもんで~~! この上なくお綺麗な姐さんの傍にはずっと居たいもんですが、やんごとの無いやむをえなき事情があったような無かったような~~!!
「また調子のいい事言うんだから! キスするわよッ!」
 例えばエマヌエル・バイルケ(r2p006759)。狼のような耳と尻尾を持つ彼は、イサークに対しても飄々とした態度を崩さないままに語り掛けようか。ミハイル一派の中でもと言える者であり、イサークとも親交がある。
「まぁいいわ。ハノとベルガモートも来た以上は、ちゃーんと動いて貰うから」
「ハハッ! またミハイルの兄貴と一緒に暴れられるんだろ? 大歓迎だぜ!」
「ええ――あの人ミハイルの為なら、なんでもするわぁ」
 更にはやや子供らしき面影のあるハノ・ハドゥマー(r2p006763)に、ベルガモートと呼ばれた目元を隠す女性型の天使の姿もあろうか。その両名も先のエヌマエルと同様にミハイル一派に属す者達である。
 ミハイルの動きに伴って集結しつつある彼の配下。
 どこの天にも属さず、ミハイルを長として戴く――だ。
「で、姐さん。オレ達は具体的に何をすればいいんですかい?」
「具体的につってもねぇ……ミハイル曰く『猊下の仰せの儘に』だ、そうヨ。
 いつものあのご機嫌顔で言ってたわ。全くもう。ホント何を考えているんだか……
 ミハイルの将来設計プランはアタシも分かんないわ。
 でもとにかく今は猊下の面々のお手伝いをしてあげなさいな。
 ま、ミハイルの事だし考えはちゃーんとあるんでしょ」
「へー。でも姉御ソレ、一応確認したいんだけど。
 オレ達はあくまでに動けって事なんだよな?」
「そうよ、ハノ。アタシ達はアレクシス・アハスヴェールの傘下に入った訳じゃない。
 アタシ達の上はあくまでミハイル。
 猊下のお手伝いはするけれどそれ以上ではない――いいわネ?」
「オッケー!」
 だが、はぐれ者達にもはぐれ者達なりの結束は存在する。
 エマヌエルもハノも、ミハイルを心から慕っているのは間違いないのだ。
 彼が行くのならば己らも往く。
 彼が何かを成すのならば己らも――成す。
 それだけの事である。今までも。そして、これからも
「ただアンタ達、一応程度は弁えなさいよ。
 いつも通りっていっても自由過ぎて、もし万が一にも猊下をブチ切れさせたら何が起こるか分かったもんじゃないからね。流石にんな事無いでしょうけど」
「各々勝手に上手くやれ、と。つまりはでしょう? ねぇサワちゃん」
「そう。よ、ベルガモート」
「ふふ。ならええ、彼らとはたっぷりさせてもらうわよ。
 それならきっと――問題ないでしょう?」
 そしてベルガモート。ミハイル一派の中でもイサークと同様に永い付き合いを持つ彼女は妖艶に舌を出すものだ。隠された瞳の下に如何な感情を纏わせているか中々に知れたものではない、が。
「ま、アンタの事だから大丈夫でしょ」
 彼女ならば心配の類など不要であろうとイサークは思考し。
 そして――告げる。
「あと、重要な事よ。さっきも言ったけど……これからのプラン、アタシも知らないから。これから先は何が起こってもいいようにはしておく事ね。ミハイルが何を言い出しても付いていけるように、ね」
「姉御! ――それ結局いつもの事じゃね?」
「ダンナの奔放さは今に始まった事じゃないですからねぇ。
 ま、承知してますよいつも通りね!」
「分かってるならいいわ。しくじらないようにしなさいよ、ホントにね!」
 ハノとエマヌエルの苦笑。慣れたものだ、とばかりの心情が込められていただろうか。
 誰も彼も好きものである。あんな男にどうしてか付いていってしまうなど。
 ――まぁいい。とにかくミハイルが上手くやれというのならば、そうしよう。

 ではでは。第五の天に対するに赴くと――しようか。