西進函嶺IV


 箱根山を巡る戦いは、収束を迎えんとしていた。
 天使達の拠点かの如く化していた、かの地での戦い。
 各地で熾烈な戦いが繰り広げられた、が。
「なんとかしぃ~!」
 言うは明星 和心(r2p002057)だ。
 零す吐息。天使達との戦闘はかなり厳しいものであったようだ。
 しかし天使が守るテミスの破壊に成功した。箱根山の陣地の一角は崩れたのだ。
「ただ、少し気になる事もあったよぉ。どこか、ぁ……」
「――見定められている?」
「あちこちで使もいたみたいだしぃ、敵の動きには妙なトコもあった気がするよぉ」
「あ、確かに。こっちにはえーと……ベルガモートっていうのがいたかな」
 だが和心は微かに心の内に引っ掛かった点を吐露しようか。
 此度の戦いは毛色の違う天使も混じっていた、と。
 例えばアリアス・ミラドレクス(r2p000020)が会敵した中にはベルガモートなる女性の天使がいた。神代 くるみ(r2p000888)の戦場ではいなかったものの、そういった存在がいるという話は聞いている――
「こちらではフェルエナという天使と戦闘を……
 作戦が上手く嵌って出し抜くことが出来ましたね。
 ――少々、怒らせ過ぎたかもしれませんが」
 同時。くるみが思い起こすは、己が戦場に姿を現していた天使だ。
 フェルエナ。テミス破壊後のときたら……いやアレはどちらかというと本性が垣間見えた、と言うべきなのだろうか――? いずれにせよなんとも非常に憤激させる事すら叶ったようだ。
 ――ただ。

「――まだ状況確認中らしいけれど、本当なのかな。
 って聞いたんだけど」

 アリアスは語る。先日確認された主天使ドミニオン級個体が箱根山に現れた、と。
 主天使と言えば、横須賀で戦ったラファエラ・スパーダよりも上の位階だ。伴って実力も当然上。姿が見えたというだけでミハイルが参戦したかまでは定かではないが――しかし事実であれば想像を絶するような状況だったのかもしれない……
「……いずれにせよ、どこもかしこも楽ではなかった、という事だろうね。
 こっちではターリルのいる戦場だったが……なんとかなったよ。
 ……というよりも、些か『遊び』の感覚が強かった、かな」
 と、その時。語るは御苑 桜(r2p006044)だ。
 思い起こすがアレは戦闘とは言い難い。アレはだった。
 だるまさんがころんだだのなんだの……
「でも――」
 ふと。桜は最後の言葉を思い出す。
 ターリル。敵の天使。彼女が告げた言葉があったのだ……それが。

 ――リルの大事に、なってくれますか?

 あれは一体、だったのだろうか?
「……いずれにせよ箱根山の大部分では勝利しました。これは大きな前進ですね」
 と、その時。言を紡いだのはクラリッサ・クラーク(r2p002781)だ。
 彼女は敵の幹部の一人だと思われる、ヴァルトルーデなる天使と戦いを繰り広げた。傍にミハイル派がいた警戒が故かヴァルトルーデの動きが芳しくなく、その隙を突いて見事に勝利を収めた、が――
 幾つか。ヴァルトルーデは気になる事も言っていた。
「しかし……敵が崇拝する『猊下』とやらは『裁き』を齎すとか」
「――裁き?」
「詳細は分かりません。ですがこれより更に進むならあるのかもしれませんね。警戒した方が良さそうです。それに……敵が撤退した先ですが、そこは恐らく……」
 ――クラリッサは視線を巡らす。
 鎌倉で撃退し。西方調査で西に進み。箱根山を解放した。
 それより更に西に行ったというのなら――恐らく連中の居城は――
「ここからならもう、
 見据える。そこに在るのは、あぁ。
 日本という国にいるのならば――ロストエイジはともかく――まずもっての存在を知らない者はいないだろう。天使達が撤退した先だと思われるのは……
 日本最高峰の独立峰。

 だ。