偶然と必然の迷宮


 ――北にはいかない方が良い。
 そう言ったのは、ノエ(r2n000225)であったか。
 或いは、悟桐 紫恵那(r2n000219)ですら、北の事を尋ねれば、その美しいかんばせを、毒を舐めたかのようにゆがめていた。
 ――行かない方がいいわよ。
 そう言われたことを、たちはよくよく覚えている。
 空白地帯、とK.Y.R.I.Eに呼称される地。多摩。
 アザーバイド達のすみ着くその場所は、概ね四つの区画に分けられる。
 汚染される禍の場所、南区。
 たかき星々の世界、東区。
 巨人の残した屋敷、西区。
 我々は、ここまで三つのを見てきた。
 そのどれもが、異なり、歪で、変貌した世界であった。
 では、北は――?
 多摩、北区とは、なんであるのか。
 ノエは言った。「ほうっておけばいい」。紫恵那もまた言った。「刺激しない方がいい」。触れるな、と、多摩を見つめるものたちは、そろえていったのである。
「とはいえ。
 そういうわけにもいかなくて」
 むー、と唸ったのは、七井あむ(r2n000094)である。多摩中央、BARソムニウムより暫し北へ。
 北区、と呼ばれる地域に見えるのは、かつて人類が築いていた多摩の光景に違いない。勿論、崩壊は進んでおり、あちこちに無数のクレーターや、それを無理やりふさいだような土石が積みあがっているのが見える。かつての人類家屋の中には、異形のアザーバイド達が住み着いており、例えばファンタジーのゴブリンめいたアザーバイドは、次代外れのレザー・アーマーを着込んで、砥石でナイフを削っている。
「テメェら、何処の生まれだよ」
 じろり、とゴブリンが、たちへと言った。
「なまっちろいな。そんなんででやってけんのか?」
 揶揄うようにそういうのへ、あむは笑った。
「お構いなく。今日は見学だからね」
 へらり、と笑うのへ、ゴブリンはゲラゲラと笑った。あちこちから集まる視線は、アウトローがこちらを値踏みする視線だ。さながら中世の冒険者街めいたその光景は、いっそ
「迷宮、っていったね」
 うんざりした様子で、藤代柘榴(r2n000030)が言う。
「ノエ先のいってたの、マジっぽそう」
「嘘は言わないでしょ。
 『北区の地下には、広大な迷宮が広がっていて、みなそこの踏破に夢中になっている』
 ……問題は、その迷宮が何か、ってことだよ」
 あむが言うのへ、が頷いた。
『イレイサー由来かもしれないし、アザーバイド由来かもしれない、ってことだよね。
 もし、南の――フォーカポーカや、東西みたいに、街自体に大きな影響を及ぼすならば――』
 その影響が、マシロ市に及ばない保証はない。現に、南のフォーカポーカ達は、多摩中央区、やがてはさらに外へ、マシロ市へ、と生息地を広げんと目論んでいるという。東西の元凶たる存在も、何を目論んでいるかわからに以上、対処は必要だ。
 ならば、北区もまた――その迷宮の奥深くで、不明なるアザーバイドなりイレイサーなり、正体は不明なだが、何者かが何かを企んでいる可能性は否定しきれない――わけだ。
「でも、ノエ先もシエナも、なんでほっとけ、なんていうんだろう。
 北区にあるソムニウム・セカンドは、中央のソムニウムと連携して、迷宮の監視と、踏破したがってる冒険者の管理もしてるんでしょ?」
 柘榴が言う。ノエ達の言によれば、北区はソムニウム弐号館ソムニウム・セカンドと呼ばれる拠点を中心に構成されている。<今、たちが向かっているのも、そのソムニウム・セカンドであるわけだが、実際のところ、中央のソムニウムとは綿密な連携を取っている、という話であった。
「だから、じゃないかな。
 状況は、ノエちも理解している。
 連携を取っているなら、何かあれば即応できる」
 そう言いながら、あむは疑問に小首をかしげた。本当にそうか? ノエと紫恵那が目を逸らしたのは――そんな、理論的なものであっただろうか?
 。それ故に、彼らは目を逸らした。関わりたくないと耳を塞いだ。そんな気もあむはするのだ。そしてあるいはも。
「……警戒して。ここから先に在るものは、とても恐ろしいものかもしれない」
 そう、あむがいうのへ、は頷いた。考えは、同じである想いだった。そして、は、ソムニウム・セカンドの扉を開いた――。



※限定クエスト「ピアシング・ブルー」「シャイニング・ブルー」は3月10日23時59分に終了予定です。

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