走私犯


 日本の中枢機能が集積された首都、東京。その23区を舞台に繰り広げられているカタルモイの決勝戦が進行している。
 その優勝賞品ともされた願望器コスモスは暴発の危機に瀕していた。
 所有者の心に応えんとするそれを食い止める為、そして彼女を護らんと動き続けるバンダースナッチ始めとした様々な派閥の思惑渦巻く中、その後の話を先にしよう。
 もしも、優勝賞品であるコスモスをK.Y.R.I.E.が手にすることになったならば?
 それがそのものではなく砕けているならば、多少の願望を各々が叶えることは出来ようが大部分の制御には骨が折れる。
 ならばこそ、その容れ物に三種の神器が一つ『八尺瓊勾玉』を利用せんというのだ。
 それは諏訪の地より御津那海に移っていたが、はるばる諏訪より陸路を辿りマシロ市にまで辿り着いた。
 三種の神器『八尺瓊勾玉』の神霊であるアオノは神祇院の賓客として、そして、コスモスをその身に収める容れ物として今、横須賀港にいるという。

「うん、東京23区に行こうと思えばメイちゃんの塩の領域が厄介ですもんね~!
 となると海路です。皆さんがはるばる広げたクラーケンのいた海域を抜けていざや東京! ですよね」
 楽し気なその声を響かせるのはアーカディアⅧ派の天使ちゃちゃまるだった。
 大きなふかふかとした犬の着ぐるみの天使は寒々しくもなり始めた秋風に身をゆらゆらとさせている。
「うう、海って冷えますねぇ……」
 ぷるぷるとしてみせるちゃちゃまるも今、横須賀に程近い場所にいた。
 御津那海ではカタルモイ決勝戦に合わせてスクナが仕掛けると聞いていた。
 されど、そのタイミングで八尺瓊勾玉が動くというならばちゃちゃまるはそちらも放置をして居られなかったのだ。

 ――別に壊さなくてもいい。奪わなくてもいい。到着が遅れるだけでも影響はある筈だろうから――

 それはちゃちゃまるに対して八尺瓊勾玉の奪取を命じたご主人様の言葉だった。

 ――でも、渡すのは嫌な気がする。だから、ちゃちゃは頑張って?――

 それはちゃちゃまるのご主人様のかたわれだった。最愛のその人はふわふわとした甘い桃色の綿菓子のような人だ。
 ちゃちゃまるは彼女がそう言うならば、と彼が頷いたことを覚えている。
 彼は然程に頓着していなかったが彼女は人類にコスモスと勾玉が移る事に対して不安を抱いているのは確かだろう。
「奪い取れなくてもいい……壊さなくってもいい……。
 コスモスがどうにかなってしまうまで、足を止めていられたら問題は、きっとない……」
 呟いたちゃちゃまるは普段の可愛らしい着ぐるみらしくなかった。
 御津那海の動乱には同じアーカディアⅧ派であるノアゼットを派遣した。
 追いかける側も、追われる側も、東京だ、御津那海だと忙しなく大忙しであることは確かだ。
 これ以上、のんびりともして居られないと勾玉を海から運ぶというならば、ちゃちゃまるだって追わねばならない。
「ウサビッチェルちゃんたちに頼みましょうか~。なんか、人類すっごい怖い人が出て来そうですし。
 いや、どっちが敵か分からないじゃないですかぁ。いっそ、ちゃちゃたちのほうが愛らしさ限界突破で味方ツラできちゃうのでは!?」
 そんなことを言って見せたちゃちゃまるは三種の神器を最大の警戒態勢で運ぶだろうK.Y.R.I.E.の動きを確かに察知していた。
 横須賀。横須賀キャンパス。特務艦隊の司令官と特殊部隊。
 海。KPA製の船。クラーケンの跡地。東京湾における賢明なる逃走。
 陸地。東京23区。旧展示要塞――カタルモイ決勝戦の余波による塩の雨が雪のように降り積もるその場所。
「わは~ん、とびっきりの鬼ごっこですね! ちゃちゃまるも、これまたびっくり!
 けどけど、楽しい一日になるといいですねえ、ね~。能力者ちゃん」


※御津那海町編全体シナリオ『墜穹の兆し』が開始されました――!
※東京編決戦『ラスト・ゲイム:アルケー』が進行中です!







命空骸戯(カタルモイ) - 旧展示場要塞システム/ゲイム・ルール

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