4月1日 - Part0
(アレは一体……?)
終わりを見届けんとした夕凪・レプト 明織の見た終末の風景の中に『彼』は居た。
誰にとっても突然に訪れた破滅の日は、この世界の誰をも例外にはせず、辛辣で強烈な不幸であった筈だ。
老いも若きも男も女も。輝かしいばかりの平和な日々を謳歌してきた人々も、血生臭い裏世界を跋扈する住人達さえ。
連綿と続く人類史が突然に黄昏を迎える等という事を――この終わりの日(ドゥームス・デイ)の訪れを知らなかったに違いない。
「何故、平然としていられる……?」
地獄のような光景を見る在原 人理(r2p000427)は目を見開かずにはいられなかった。
目の前で『天使』を殺すその男が誰なのかは分からなかった。
唯一理解できるのは、その男が現れた化け物への対処法を知っているという事だけだった。
(なぜ? この馬鹿げた夢の元凶なのか? ならなぜそれを倒している?)
――味方か? 敵か?
「あいつは、一体何を知ってるんだ……?」
また別のシーンで蘇芳 菊蝶(r2p000425)は不敵に笑う彼を見据えて強く言葉を吐き出した。
「これは終わりなんかじゃない。これはこの先に続く始まりに過ぎないの」
曖昧に微笑む彼の冷淡さに怯む事は無く、たおやかな美貌に似合わない程の意志の力を漲らせて。
「今、世界は未曽有の危機に陥っていて……、ここから立ち上がるには長い時間がかかるでしょう。
それでも私は信じている。この国で必死に生きているすべての命を。
だから、その為に出来ることをするの。
一方的な約束をしましょう? どれだけ未来になるかはわからないけれど
いつかまた絶対、貴方に会いに行くから――」
――涼介・マクスウェル(r2n000002)。
わざとらしくマクスウェルの悪魔を気取るその名が本名である筈は無い。その正体は異様なまでに不明である。
しかしながら何時の頃からか日本政府に潜り込み、突然に訪れた最悪の日に最良の立ち回りをする人物が居たのは確かである。
騒乱の一部始終さえ冷淡に眺め、合理的に乗り切り、『人類の未来』を繋いだ人物の存在は余りにも大きい。
それはこれより始まる無数に積み重なる最悪の一端を掬い上げる行為に過ぎなかったけれど。
――身の程を知らないのですね、出来損ない共は!
数多のドラマは確かに、この日の訪れと凄絶な笑みを見せた彼の一幕から始まったのだけは間違いない!
執筆:YAMIDEITEI