
アーリーデイズ
「楽しみだなあ」
幼馴染の
「
この数か月、幾度繰り返したやり取りかも分からない。
最初は驚き、次に呆れて、今度は半ば諦めている――
「……また口に出てた?」
口癖のように繰り返されたその言葉はハク自身も無意識の内によるものらしく、そう言う彼は少しバツの悪そうな顔をする。
「出てたも出てた。私がスルーしたのも入れて今日だけで三回目だよ!
ハクって夢中になると何時もそんな感じなんだから」
意図的に少し意地悪く言った夏帆だが、その言葉に悪意等あろう筈も無い。
「私には
頬を染めて少し歯切れが悪く尋ねる。
「……その、えっと。妹が出来るってそんなに嬉しいものなの?」
小さい頃から家が近所で家族同士も仲が良く――中学二年生になる今でもこうして一緒に居る。
幼馴染でクラスメイトという属性は実にありきたりで凡庸で、しかし当人達なりに特別である。
昔は夏帆の方が背が高く姉弟に見られた事もあるし、最近はその逆もある。
だから夏帆にとってハクは弟であり、兄のようなものだった。
「……恥ずかしいんだけど。まぁ、隠せないよね」
これだけ「楽しみだ」と連呼している身の上だ。
頬を掻いたハクは尋ねた夏帆に少し気恥ずかしそうに頬を掻く。
「出来た事が無いから、実感はないんだけど……歳が離れてるじゃない。
歳が近いとまた別なのかも知れないけどね」
「ふんふん」
「十四も離れた女の子なんて絶対守らなきゃいけない存在じゃん」
「おー、男の子だね!」
肩を竦めたハクは極自然に並んで歩く夏帆を歩道側へと軽く押した。
慣れ親しんだ大好きな街。何度も通った通学路。
「……おー、有言実行」
「別に」
「最近ハクがモテる理由が分かって来たよ?」
「そうやってすぐ茶化すし」
感心したように零して僅かにニヤついた夏帆にハクは嘆息した。
少年も少女も変わらない時間が永遠でない事を理解している。
幼稚園、小学校、中学、高校、大学生――或いはその先。
並んで歩くお互いの関係が変わっていく事は――変わり続けている事は理解していた。
大人になれば解けて色褪せるささやかで幸福な思い出はしかし今を生きる少年少女にとっては格別のものに違いない。
「楽しみだなあ――」
「え……?」
不思議そうに自分の顔を覗き込む彼に彼女は笑って言った。
「予定日は四月だっけ。その時のハクの顔を見るのが楽しみだ」
――幸福でありきたりは退屈ながらに最良だ。
でも、少し位は
何処にでもあるこんな微睡む日常はきっと永遠に続くのだから。
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