
歌の行きついた先
別に予測はしていた。
間に合ったからどうなるのかって。
おてて繋いでハッピーエンドだったか。
アタシが天使になってサッドエンドだったか。
もしかしたら、天使から戻ってトゥルーエンドだった?
全部ウソだ。
アタシは知ってた。
間に合うのかといえば、間に合わないのだ、ということを。
間に合う、という定義を――最良のハッピーエンドとかトゥルーエンドとかをつかめる猶予だといいうのならば、そんなものは、妃野原いばらがマシロ市から姿を消した、あの時点でとっくに潰えていた。
今アタシは、間に合わなかった世界の道を進んでいて。
それでも。最期にでもいいから、もう一度。
顔を合わせたかった。それで――。
それで、どうすればよかったんだろうね。
今思い出しても、アタシにはわからない。
世界はまるで終わるみたいに静かで。
そこには、あなたの傍に、結樹 ねいな(r2p000031)がいて。
あるいは、アタシの傍に、星河 綺羅々(r2p000053)がいて。
その二人は、視線を合わせたときに、これから何が起こるのかを理解して、口をつぐんでいた。
状況報告の声が響いている。平坂 あすか(r2p000919)が朱魅ちゃんの名前を出した。
朱魅ちゃんもカゲオミって男も何処かに逃げたって話してる。アタシの目の前であなたが「くそ」だなんて呻いた。
お決まりの姿。
相変わらず、口が悪いんだね、なんて言おうとしたアタシは慌てて走り出す。
アタシは、あなた以外みたいな顔をして、倒れたあなたの体に縋り付いた。
ただ、死にゆくあなたの姿は、やっぱり綺麗で。
消えてしまった時から全然変わらないその姿が、やっぱりあなたは天使になってしまったことをひどく痛感させて。
ああ、やっぱり、あなたはアタシの隣に立てなくなっちゃたんだと気づいたら。
そうしてしまったのは、結局アタシなのだと気づいたら。
歌うとか、言葉を紡ぐとか、想いを伝えるとか。
怒るとか、笑うとか、喜ぶとか、そういうの全部ぶっとんじゃって。
ただ。
泣いていた。
「ねえ、柘榴……」
あなたはアタシを見て、確かにそうやって呼んだ。
血を吐き出すように、あなたがアタシを呼ぶんだもの。
「あい、かわらず、……泣き虫じゃ、ねぇの」
歪む。歪む。皆底から空を見上げるように。あなたが空にあがっていくのが分る。遠くなっていく。歪んだ涙のフィルターが、あなたの顔を真っすぐ見させてくれない。
「うっさい、ばか」
「だぁーれがだ、ばーか、柘榴」
「なあに」
最後のつぶやきは誰にも聞こえぬ呟きで。
アタシだけの耳朶を震わせて、オールドローズは枯れて消えた。
アタシの手の腕のうちに何も残さないまま。
空っぽのアタシの腕の中に、アタシの目から零れ落ちた水滴が、ぽつ、ぽつ、とだけ、零れ落ちた。
「いばら、ちゃん」