
崩落のセレニテ
夜が明ける。
暗き闇の底に沈んだ一時は、終わりを迎え。
新たなる陽光と共に世界は始まらんとしていた――
筈であった、が。
「――これは神託です」
闇が晴れた筈の地に、無数の『影』が迫りつつあった。
彼らは天使である――統一された衣に身を宿した天使達。
彼らは天使である――人を誅殺せんと明確なる使命を帯びた天使達。
彼らは天使である――絶対たる天からの理の下、進軍する天使達。
「全ては我らが主の為に。さぁ行きましょう。さぁ謳いましょう。
愚昧なる獣は滅ぼし尽くし。我らの主の、理想たる地平の為に。
各員、身命を賭しましょう。主も見ておられるのですから。
我らの忠誠。信仰が試される時です」
往く。その天使達は待っていた。
鎌倉に在る天使が勝つなら良し。
勝たずとも獣共を疲弊させる事が出来るなら良し。
いずれでも我らは間隙を突けばよいのだ。
そうして時は来たのだ。
故に――号令は下された。
さぁ愚昧なる獣共よ、貴様らに平穏など無いと知れ。
我らが主の望む未来に、貴様らは不要なのだから!
