唸る海鳴り、嗤う揺蕩い I
海。
宇宙進出すら果たした人類が、とうとう2024年四月までに踏破しきれなかった未知の領域。
海――ずっと、ずっと、ずうっと古代から、命を産み育みつつもそれを呑み込んできた、原初の脅威。
光の領域の近海は、唸り狂う嵐に閉ざされていた。
――その暗澹の波を切り裂くように駆けるのは、島風型駆逐艦 一番艦 島風(r2p001632)。
「当方 島風型駆逐艦 一番艦 島風 故──『疾きこと、島風の如し』!
島風 推参!」
船が相手で、戦場が海なれば、負ける訳にはいかなかった。内燃機関出力向上、クラーケン分体の不気味なる触腕を掻い潜る。
今だ微睡みの中にいるクラーケンなれど、その脅威は天使すらも無視できぬ存在で。
ゆえにこそ天使連中は――光の領域の神秘を奪取することでその制御を目論んでいた。
人間への殺意を隠しもしない人魚の天使が、朝月 玄夜(r2p001149)を取り囲む。
彼らの見目は麗しい、なれど内面はどうか。憎しみと殺意に冒されきったその魂など……
「こちらには、護りたいものがありますので」
流れる血は呪いの媒介。夜明け色の影が嵐の海に広がる――それは誰かの命を護る為に。
もう、何も奪われたくはないから。
「私は怒っていますよ?」
ケイレブ・ミア・チェザーティ(r2p000314)は相対する天使にニコリと笑んだ。家族のことをほじくり返されあしらわれ、細められた目は一切笑ってはいなかった。
漆黒の鞭を振りかぶる。連中には少々、仕置きが必要であった。
――ひとを壊すことを喜ぶ連中なんて。
「互いを好きだと、慈しみ合うことさえ出来るのにどうして……どうして他者を傷つけることを楽しめる?」
俺にはわからない。新汰・フィモールト(r2p005365)は己の血を通わせた剣を手に、天使を見つめる。
トレサリス様の為。イェラキ様の為。寄せ続ける波のように、天使共の暴威は止まらない。
「……残念だけど、こうして敵対関係になっちゃうなら、放置はできないねぇ」
真月里の為にも、光の領域の結界を維持する『要石』、浄化霊珠は守らねばならなかった。古多恵 花見(r2p000256)は献身の想いを掬虚月に込める。ふわり、ひらり、舞い上がるは薄紅舞霞。桜花の煌めきが、仲間達の傷を癒す。
「クラーケンをどうこうするとか、どう考えたってろくな事にならないだろうし――」
クラーケンと遭遇したことがある不動 優歌(r2p000603)としては、連中は輪をかけて不倶戴天で。
「その首置いてってよ。あ、嘘ついた。首すらも遺してあげない」
灰になって消えろ。KPA-YSに込めるは、灼熱の殺意。
天使共に、果たしてもしも、クラーケンすら与することになったなら。それこそ最悪の悪夢だろう、とミステル・アイヒェ(r2p007515)は想像する。
「何一つとて、譲れません。――ミステル・アイヒェ、推して参ります」
凛と、剣を構えて。宿りの騎士は、盾へと挑む。
剣の音。銃の音。彼我の攻勢が交わる。
都築 広斗(r2p005623)は、銃声を途切れさせない。
「霊珠には近付かせないからね!」
東京へ、かつて日々を過ごしたあの場所へ、きっと行くんだ。その為にはこの天使も、クラーケンも、越えて往かねばならず。
そんな想いを、願いを、呑み込み沈めるかのように。
立ちはだかる波濤は、天使のみにあらず。
邪精霊、シーゴーント。
暗く、昏く、世界を淀ませながら、陰なる脅威が迫り来る。
「上等」
崇嶋 興一(r2p005797)は軍刀を抜き放ち、破滅を謳う怪物を見澄ました。
「手堅く派手に暴れてやろう。クラーケンを引っ張り出すにはちょうどいい」
そして勝利を、このわだつみに散った全ての命に手向けよう。
――Lucia Afrania(r2p000218)とて、その華奢な肩には数え切れぬほどの無念を背負っているから。
「死者への『冒涜』を、私は赦しません。」
静かなかんばせに怒りを秘めて。邪悪に勝利することは、神が其を望まれる。ゆえに語ろう、主の福音を。その恩寵を。
「天軍の総帥たる大天使聖ミカエルよ、悪魔共を主の御力によりて地獄に閉込め給え――!」
「――大丈夫、天使強いから」
清らかに。清らかに。日ノ空 暖(r2p007641)は歪な祈りを上書きするように、祈ってあげる。白い羽根がひらひらと、濁った海に降り注ぐ。
「任せといて。必ずのんが守ったげる」
開く瞳は真っ直ぐと、唸る海鳴りを見つめていた。
※広域地理情報管理システム『アストラチカ』のメジャーバージョンがアップデートされました。
更新内容
・日本地図掲載←New
・新人類圏地図掲載←New
・世界地図掲載←New



