ジェスターとジョーカーの饗宴 III
ショーは続く。
サーカスを騙る天使共は「あまくてたのしい」なんて仰るが。
「甘いのは好きだがこの量は胸やけするぜ……」
面倒な状況だが、乗ってやろう。紫桜 ユーナ(r2p000297)は騎士双槍「優しき火桜」に想いを込めよう。
「そっちの台本に合わせてやる……ただし結末は私達の勝利でな」
焼き尽くしてやろう。
けれど、奴らはそんな意志を嘲笑うかのように――
からから、からん。きらきら、きらら。
じゃんじゃん、じゃじゃーん。しゃらしゃら、しゃららん。
ぐるぐる、ぎらぎら、がやがや、あはは――
場違いに聳え立つ、メリー・ゴー・ラウンド。全うに遊ぶならきっと楽しいものなのだろう、ルベリィ・ウィシーズ(r2p000545)は『糸』を操る。
「……人を幸せにするならもっとまっとうな方法もあるだろうに。天使の考えは良く分からないです」
「ほんとムカつく」
スタリナ・メイアンディナ(r2p007686)は赫眼に敵意を滾らせ、大戦斧を轟と振るう。天使共。何が楽しいのかもわかんないし、何がしたいのかもよくわかんない。ほんとふざけてるわ。
「いいわ。何であろうと……ブッ殺す事には変わりないのだから」
全部ムカつく。よって全部ぶち殺す。
――激戦は終わりを目前に、いっそうの激しさを見せていた。
「俺は本当は見る専でな。客席にいる方が好きなんだ」
人の命を、尊厳を、簡単に壊してしまう――それが、天使という災厄。
悲しげな、そして空虚なる双眸を見つめ返した桑原 蜜樹(r2p000191)は剣をきつく握り直した。
「……舞台には上がらねえよ!」
「人を玩具かなんかだと思っている天使、か。最悪だな。
いや、人を人と思っていようが天使ってだけで最悪ではあるんだが……比較的、な?」
舞い踊る天使を、月城 ソラ(r2p001474)は鋭く睨み据えよう。広げた星の翼は、煌めきは、抗う意志の具現で。
「……よくこんなこと思いつくよね、ほんと。趣味が悪すぎてびっくりしちゃう」
白雪姫 ウルスラ(r2p002212)が氷獄を用いてもたらすのは、どこまでも冷たい終幕だ。
「氷の魔女の名において、悲しみも苦しみも、全部ここで終わらせてあげる」
助けてあげられない。でも、このふざけたサーカス気取りを終わらせることは出来るから。
「はぁっ、 はぁッ――」
天海寺 サリル(r2p000322)は深い傷を負った仲間に肩を貸し、蒸気に煙る石畳を駆ける。嵐のような暴威に見舞われ、胸の内に広がるのは苦い心地だ……。
が、すぐ近くの戦場に天使共が向かわなかったのはサリル達の尽力の賜物だろう。
――おかげで無事に天使を退けることができた。黒森・秘蜜(r2p000247)は奇術師のハットのつばを軽くもたげ、変わり果てた多摩を見回す。
「この静けさは一時的なものか、はたまた波乱への序曲か……」
翼の音は遠く。
蘇芳 菊蝶(r2p000425)の胸の内に燻るのは、未だ火照る愛の熱。 「嗚呼、……近くて遠いわね」
あと少し、もう少しだけ先の、東京を想う。
一方――ひときわの激戦を強いられたのはやはり、サーカスの団長を名乗るジュールヴェールとの対峙か。
それでもレイヴンズは彼らを相手に一人も欠けなかった――それは、友軍である『レジスタンス』シェナも含めて、である。
かくて安全地帯にまで退避したレイヴンズを迎えたのは、ノエと名乗る白衣の青年だった。
――ようこそ、Barソムニウムへ。
「多摩は、異質な変化を夥しく受けて、人類にとっては住みにくい場所になった。
中央はさほどではありませんが、他の地区など目も当てられない。特に、周囲を取り巻く風が厄介です」
「黒い風……塩の結晶がきらきら、綺麗な黒い風よ。それが多摩と東京を隔てる」
ノエとシェナ曰く……多摩から東京へは行き止まりということらしい。東京へ行く為の道程だったのだが……。
「やっぱり……東京へ行くには、海路がどうしても必要になりそうですね」
Barソムニウムで一息をついていたクラリッサ・クラーク(r2p002781)は、遠く海の方角を隻眼で見やった。
かの地では今も――大怪物を抱いた嵐が渦巻いている。


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