害獣


 多摩南地区は相も変わらずの空気が漂っている。
 その中でも不機嫌面の大きな大きなフォーカポーカが居る。
 暇つぶしをするようにフォーカポーカの幼体に一発芸を仕込んでいたポルカ・ポルカは来客を喜び「見てて~柏餅のマネ~」などとおどけていた事だろう。
 ポルカ・ポルカを慰めるために語られたのは穏やかで朗らかな話題に他ならない。
「わあ~、情報通だね~」
 をぱちんぱちんと打ち合わせるポルカ・ポルカに対して、笑みを深めた男は「それほどでも」とそう笑った。
 男の名前はエルシャー。猫の耳と尾を有する紳士然とした青年である。
 朗らかな微笑みを浮かべる彼が語ったのは多摩地区よりを挟んだ場所に位置する東京だ。
「じゃあ~、その、世田谷ってところに~『どうぶつさんファミリー』ってひとがいるの?」
「そうですとも。彼女たちも戦況が変化し始めればすぐに参戦を決めるかもしれませんがね。
 特に台場のK.Y.R.I.E.の行動によっては動きが出る可能性がありますからね。
 面白いのは『イケイケバリアゲギャルぴっぴ~ぅちʖˋマジ、ナレヽ(キょぅ☆~』と名乗っている方々は渋谷からどのように動くかです。
 私が調べた限り、隣の新宿にはプシュケーと呼ばれる子供たちが居ますからね。それにも中々……」
「ええ~~、何か居るの~~?」
 エルシャーが笑みを深める。ポルカ・ポルカがわざとらしくきゅるんとした顔を作ってから「ふにゃあ~?」と鳴いた。
「ええ、どうやら偵察を行っている方たちはそちらを避けての行動を行っているようですから。
 特に察知が早かったのは『都立黑殘小学校教育研究会』や『星導逆行』でしょうか……」
「んん~、難しい言葉だねえ~? ねえ、何が居るの~?」
「とっても強い、魔法使い。それも、自由に地下通路を使って何処へだって遊びに来てしまう様なスペシャルなゲストだそうですよ」
 朗らかな青年にポルカ・ポルカが両を上げてから「わあ~、こわいねえ~」と笑った。
 エルシャーは思う。
 思っていない癖に。
 エルシャーはほくそ笑む。
 この害獣は利用価値がある、が――このような阿呆な態度のわりに王としての在り方は忘れていない。
 利巧と言う訳ではないが王として種の存続を第一に考えられる生き物だ。
「どうですか、多摩など捨てて東京で遊んでみる、というのは。世田谷のあたりならば広々としていますよ?」
「ん~、ぼくたちね、もう絶滅しそうなの。絶滅危惧種になりそうなんだよねぇ~。
 それに、エルシャーはどうして東京に詳しいの~? 可笑しいよぉ、東京ってノエも、イーリロスも詳しくない筈~」
 エルシャーの笑みがさらに深まった。「おやおや」と頤に指先を当てた青年がわざとらしく肩を竦める。
「どうして、でしょうね」
 エルシャーはそう言ってからポルカ・ポルカとの会話を中断した。
 後方に、誰ぞの姿が見えたからだ。
「イーリロス達と皆さんの邪魔をしたくはありませんからそろそろ……ああ! そうだ!
 ポルカ・ポルカ達はこれからどうなさるんですか? 勿論、はさせて頂きますが!」
 にんまりと笑ったエルシャーにポルカ・ポルカは声を潜めた。

 ――生き残るためには、頑張らなくっちゃならないんだ~。
   もう、僕達生きていけないからぁ、がんばらなくっちゃだめだよねえ~~~。

「そうですか、では、何かお手伝いしましょうか?」
「んん~、ふふふ~、あ~そぼ~~~~。東京ってところが、楽しいんでしょ~?
 じゃあねえ、僕達も楽しく遊べばいいんだよ~~。ねえ、エルシャー、僕に言った事憶えてる?」
 エルシャーはにんまりと微笑んでから頷いた。

「人間、どれくらい間引けば、僕にコスモスくれる?」




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