零れよ、世界
「カランフィルとちゃちゃまるはカタルモイ側の観戦兼勾玉の動向伺いに行ったあ~?
それでオレが此処に呼び出されたって訳かよ! だりぃ、いーじゃん、他の奴でさあ! オレじゃなくてよくね?」
可愛らしいおもちゃの兵隊を思わせる少年が拗ねたようにそう言った。紙輪で出来たようなカラフルな天冠が印象的な少年だ。
薄氷色の眸をじらりと紅巴(r2p008627)と蒼生(r2p008628)へと向けた少年はどかりと腰を下ろす。
「つーか、オレとダキニがわざわざ御津那海に来るほどかよ?
いそがしーんだぜ、アーカディアⅧ派ってさ! 今日もリ=ルサマとふわふわパンケーキ作るつもりだったのによー」
足をばたつかせる悪ガキを宥めるように堕枳尼(r2p008149)がその頬に手を振れる。
京の地に存在する茫幽郷より離反した鬼たる女のあどけない瞳に待っ正面から見つめられてから少年はぶすったれたまま口を噤んだ。
「そう、仰らないでくださいませ、ノアゼット様。リ=ル様に侍る貴方をお呼びする事をちゃちゃまる様も苦心されておりました」
「そりゃそーだろ、おちゃちゃはエイ=ルサマにぴったりんこなんだぜ。りゅーせーとかでいーじゃんか」
ノアゼットと呼ばれたアーカディアⅧ派の天使に紅巴は「仲が宜しいとお伺いしております」とそう答えた。
「そー、オレはリ=ルサマが京都ってトコで楽しく過ごせる手伝いする仕事がある訳で! じゅーようなんだぜ。
ダキニはそんなオレを手伝ってくれてるんだよな。あのクソナマイキなオニ、蹴散らす手伝いもしてくれるってさ」
「無事にこの地での予言が成就なされた暁には必ず茫幽郷とやらの鬼を根絶やしにすると約束しよう。
聞くに彼らは祓い屋棟耶の隣人として過ごしているのだろう? いただけない、棟耶はどうやらK.Y.R.I.E.の――マシロのつながりがある」
渋い表情をする蒼生に「おうおうおう!」とノアゼットは大きく頷く。
「きりぇ! そいつら!」
「K.Y.R.I.E.です、ノアゼット様」
「どーでもいい、そいつら! そいつらがアーカディアⅤサマをぶん殴ったんだろ。
おもしれ~、オレ、一回だけ見た事あったんだよな、アーカディアVサマ。根暗な女とうるせーガキ連れて歩いててさ、んで、いけすかねー大人と話してんの。
こえーおっさんだったぜ。オレ、大人って苦手なんだよな。だからおまえらも嫌いだぞ、アオバ! クレハ!」
「ああ、承知している、が――堕枳尼殿は構わんのか?」
「ダキニはおもしれーからいいよ。コイツ、ガキくせーし」
何も言わずに笑みを深めた鬼を一瞥してから蒼生は嘆息した。堕枳尼はじめとした裏茫幽郷が何を考えているかいざ知らず、このノアゼットと呼ばれる天使は存外に分かりやすい。
「ノアゼットくん、それで……何をするの?」
「いたのかよ、チカ。おまえ、きりぇのやつなんだろ? でも、おちゃちゃの友達なんだっけ?
まー、いーや。おまえ、やってんなぁ! 呪創がべったりで、本当のおまえが何処にいるかもわかんねえじゃん。
オレ、ちょっとは分かるぜ、おまえの後ろに、おまえによくにた女が見える」
「……知ってるよ、ずっと、ずっと、呼ばれてる」
「そのまま、食われねーように人間やめりゃーいいじゃん。大人になるの、怖いぜ。
いいこちゃんするのダルくね? なー、チカ。素直になれよ、天使になれば、何でもできるぜ。
おまえと友達殺そうとしたとーちゃんぶち殺してさー、恵まれてるヤツらもぶん殴ってさー、んで、リ=ル様と幸せにいきよーぜ?」
ノアゼットをじっと見た匂坂 千鹿(r2n000011)は「しあわせ」と呟いた。
「そーだって、オレもダキニもその為に頑張ってんだしさー、アオバとクレハだって御津那海が正しくあるようにしよーとしてんだぜ。
よくしらねーけど、歴史ってのは定められててさ、それをしっかりなぞる必要があんだってさ。
チカが素直になって幸せに生きて生きてーんなら、手え貸すか? オレ、やさしーからさあ!」
「……ありがとう、ノアゼットくん。スクナさまが呼んで居るから、行こう?
アオバさんも、クレハさんも……堕枳尼さんも、一緒に……わたしたちは、正しく生きなくちゃ幸せになれないんだから」
俯き、ふらつきながら歩いていく千鹿の背中をじっと見つめていたノアゼットは「なんだあいつ」とぼやいた。
「わっかんねーけど、わかった! オレがチカしあわせにしてやっかー、おちゃちゃよりオレのがすげーって分からせてやるよ!
ほら、いくぜー、こいこい! スクナサマんとこいって何するかきこーぜ!
此処でさあ、失敗したらオレがおちゃちゃとエイ=ルサマに怒られんだぜー! おい、クレハ、手え繋げえ~」
一度くるりと振り返ったノアゼットはその場所に安置された呪わしき石を見てから、やけに楽し気に笑った。
※東京編決戦『ラスト・ゲイム:アルケー』が開始されました――!








