遡上作戦報告書02


 空中からの索敵作戦を終了させた氷鉋 晶(r2p000337)は「ただいま」を一先ずはK.Y.R.I.E.の.総合戦略企画部へと告げた。
KPA製個人用飛行バーナー……面白くはあったかな」
 KPAもこの遠征活動に対しては全面協力の姿勢だ。晶達が空中索敵を行なう際に使用された作戦用装備は十分な役割を果たしていた。
「お役に立てましたら何よりですの! ちゃまと、研究者ちゃま達が頑張った甲斐もありますの!」
 ぱあと明るく笑ったの『V.A.L.K.Y.R.I.E.ヴァルキリー』は能力者の帰還と、何よりもKPAの活躍を喜んでいる。
 彼等の無事はの為にと改良を重ねたKPA-05AB・カロンがその役割を果たしたという意味合いにも近しいのだ。
 その操縦担当であった天蓋 百合(r2p000177)は「真逆の大岡川にペンギンの姿が! これはではないですか!?」と瞳を輝かせている。
 それだけの環境変化があったという事か。愛らしいフンボルトペンギン達は変異体として大暴れしてきたようだ。
「大きな作戦ってことで緊張はしてたけど……私の隊は誰一人欠けることなく帰還できたよ」
 大天使級との戦闘を終えたのだろう桜木 結永(r2p000944)はやや疲労感を滲ませながらも安堵の表情を浮かべる。
 激戦であったことは確かだろう。マシロ市から離れれば後方支援も少なくなっていくからだ。
 しかし――不安があるとすればこれまでは天使や変異体だけを敵対対象と認識していたマシロ市が明確にアザーバイドを相手取ることになった事だ。
――鋼の獣たぁ、良い名だな」
 快活に笑った牛山・安和(r2p000258)はアイドル・ガーネットと共に任務遂行を行なった。
 安和が相対したメタル・ビーストと姿は違うが似通った存在――機械のエイとの戦闘を経た月音 涙(r2p000814)は何処か悩ましげだ。
「……色々と感じ入る所があります。相手が、つまりは異世界からの来訪者であったとしても……」
 その身が天使症候群エンジェライズ・シンドローム堕天使ヴァニタスとなった時、機械の片鱗を見せたのだ。どうにも他人事には思えなかった。
 傷だらけであった神白 小雪(r2p002004)は痛みを感じないが故にV.A.L.K.Y.R.I.E.に「手当ですのー!」と言われたがふるりと首を振る。
「……ゆきも、同じようなアザーバイドと戦ったの……。ゆき達、帰還の為に道を逸れたら……少しひんやりしてて……」
 小雪は仲間達も同様の気配を感じたという。それは能力者が感じる何らかと言うよりも地形変化を帯びた異質さであったと言うが――その辺りもデータを集積しての参考に為ねばならないか。
「この時期に保護できたフレッシュの方も居ましたネ」
 大規模遠征時に見つかったという事は通常の探索範囲では取りこぼしていた可能性が高い。暁杰(r2p000104)は保護をしたという藤利は中々見込みがあり、きっとマシロ市の役に立ってくれるだろうとも告げた。
「えんせーとか、ほきゅーとか、まあ、オシゴトやしなあ。ええ土産話になったやろか?」
 荷を運ぶことで遠征をサポートしてきたという二兎(r2p000626)はこれから先の橋頭堡設立の物資経路の確立にも役立ったかと問うた。
 食事自体は必須としない二兎だが気分的にマシュマロを頬張っている。明るく微笑む二兎とは対照的に遺品を手にしていた鳴無 無縁(r2p001271)は「ヴァルキリー、これ。対応可能な部署に頼める?」と問うた。
 幅広い探索を行なう事となった以上、そうした物品の回収も任務の内だった。誰の無念か、それとも、懸命に戦い続けた物の最期の声かは定かでは無い。
(……大破局より前あの頃の事が残ってるなんて、思ってもなかったけれど、ね)
 無縁が俯けば、V.A.L.K.Y.R.I.E.は「お任せくださいですの」と胸を張った。可愛らしいワンピース姿のAIはくるりとターンをしたかと思えばK.Y.R.I.E.制服に身を包んで居る。
「報告書を取り纏めるのには少し時間が掛りますの! まずは皆ちゃま、体を癒して……それからを精一杯楽しむ準備をしますの!」
 にんまりと笑って何処からかしたのであろう眼鏡をくいくいと弄って見せたV.A.L.K.Y.R.I.E.は傍に浮かび上がったモニターを指先でなぞった。
 帰還、その後の報告書の確認、それから――
(……ううん、学園祭が大事ですの。学生が学生らしく、人間が人間らしく。楽しんでから作戦が始まったって、きっと悪くはないのですの! ね、あむちゃま……)