氷取沢 どかんと行くぞ 大整備


 ――モカ心の句。

「はっ、やだ~、声かけてくれたらいいのに~! 何をしていたかって?
 え、さっき言ってた通りですって! そう、氷取沢橋頭堡周辺の整備事業!
 このモカちゃん様はそのメッセンジャーとして氷取沢橋頭堡にやってきたのだった」
 頬を赤らめふんにゃりと笑ったのは藤ヶ崎 モカ(r2n000009)。天真爛漫な彼女はK.Y.R.I.E.のメッセンジャーとしてやってきたのだそうだ。
 であるが、ややをさせた市長に対して上司かぐらが渋い表情をして居たのは知っている。
 それでもK.Y.R.I.E.は変わらず、次回作戦に向けて邁進することになるのだ。
 さて、おさらいだがマシロ市とは何か。
「マシロ市は人類の絶対的な生存圏としてこの関東平野では知られているそうです。
 ぶっちゃけー上がイケメンだと怪しさてんこ盛りになっちゃうんですがー、まあ、それでも東京方面NGな事には変わりなく。
 この直線距離にして8km程度の距離であろうとも進むのに大変苦労するほどに人類は疲弊していました」
 うんうんと頷くモカ。彼女もフレッシュではあるがオペレーターとしてK.Y.R.I.E.に居る事が多いために訳知り顔なのだろう。

 人類が本格的反攻に出るならば軍事施設を確保して置きたいというのは確かな事だ。
 その為に先ずは人類の活動域を広げるために丁寧に打通アクセス制圧クリアリングを行なったのだ。
 氷取沢橋頭堡はKPA-05ASV・ポルトゥヌスを利用して急ぎ設立が為された。磯子周辺は能力者達の整備によりある程度ならば車両走行が可能という。
 つまりはマシロ市から氷取沢近辺までは車両走行による物資輸送が可能な状態になりつつあるのだ。と、言えどもあくまでも可不可という話だけである。
 整備は更に必要であろうし、アガルタの職員などは地上での畑仕事を夢見る者も居る。
 この氷取沢橋頭堡での生活関連の整備もしっかりと行なっていく必要があるだろう。
 これからに進むのであれば此の辺りの整備も重要なのである(語り・藤ヶ崎 モカ)

「おほんっ」

 咳払いをしたモカは能力者達を見た。
「氷取沢橋頭堡作戦、改めてお疲れ様でした! K.Y.R.I.E.は今回の作戦に与えられた達成目標の内87%が達成されたというデータを保持しています。
 このデータをマシロ市民に公表し、市民の皆さんからは称賛の声が送られています。
 何せ、中位天使までもが出てくる危険地帯に能力者の皆さんは赴き、これまで不可能であったがなされたのですから!」
 モカは眸を煌めかせてから能力者達を見て「皆さんは凄いのです! すごすごなのよ! すごすご!」と力説した。
「私は後方支援員だから、皆と同じように出る機会はすこぉし少なかったの。
 でもでも、恐れる事なく天使イレイサー達に向って立ち向かうのは格好良いわ。
 市民は皆感謝している。これで磯子も、新杉田も、氷取沢も、非能力者であったって自由に歩き回ったり出来るようになったなら――」
 きっとそれを夢居る者は多いだろう。その目標に向けて一歩歩み出したばかりだ。
「これからは大忙しになるわ!
 氷取沢橋頭堡の整備をしながら、横須賀方面に向わなくっちゃならない。
 それに、周辺の警備警戒をするなら鎌倉方面と、それから大和市の方面……色々と大変な毎日だけど、頑張りましょう」
 天使達の同行は気に掛かる。
 人間が生きていく為に地盤が固められ、住まいが出来て、人の流れが生まれ始まる。
 人が流れを作れば経済が生まれる。そうして一つの街が出来る事を少女は夢見るのだ。
 ――いつかの日に当り前の様にカメラを持って歩き回った横浜の街が取り戻される日を。