横須賀基地奪還作戦報告書02


 大岡川源流域にて建設された氷取沢拠点はいま、大変な賑わいをみせていた。
 横須賀基地奪還作戦を終え、報告に戻ってきたレイヴンズや一度後退してきたパールコースト部隊でいっぱいになっているせいである。
 作戦の疲れが出ているとは言え人々の顔色がいいのは、やはりそれぞれの作戦がうまくいったからだろう。
 勝利と成功は人に活気を与える。どんな時代でもそれは例外ではないらしい。
大天使級ハモニカ、討伐完了しました。三羽も含めて全員無事よ」
 会議室に入るなりそう報告したのは幸糸(r2p000794)だった。
 同じく報告を終え情報の整理をまっていた宗堂 シンジ(r2p000139)は小さく手を上げた。
「おう、お疲れ」
「そっちはどう? 相手は確か……」
ゾウ、サイ、ゴリラにウマとシカ。まあ色々だ。メタルビーストの群れだな。大所帯で対応してきた」
 流石に疲れたのだろうか、肩を落としてはいるが表情はやや明るい。勝ったのだろう。
 天宮 瑠花(r2p000327)も元気よく手を上げた。
「こっちはイタチさんにキツネさんにチーターさんです! 勿論ちゃんと倒しましたよ。イタチをこう、うまい具合に怯ませてですね……」
 ジェスチャーを交えて説明する瑠花。正直それだけでは全然分からないのだが、様子を聞く幸糸やシンジたちの雰囲気は和やかだ。
 そうしていると、扉が開き新たな人物が会議室へと入ってきた。水織 かえで(r2p000038)である。
『薄光の天使』ニウェウス=エレオノーラ討伐完了です。かなり大量の天使部隊を相手取ることになりましたが……大勢の協力があってよかったです」
 どこかほっとした様子のかえで。
「あの大部隊って、そっちの作戦から帰ってきた人達だったのね」
 紫藤 藍華(r2p000960)が椅子の背もたれに身体をあずけながら言う。包帯だらけの身体はとてもではないが無事そうには見えないが、軽く手を上げている様子からはなんだか余裕が見える。
「そちらは、確か……強力な大天使級の討伐作戦でしたよね」
「そう。『蒼き髪の侵略者』ことヴァルフね。真正面からぶつかってやったわ。で、この通り勝ったってわけ」
 どの辺が『この通り』なのかといえば、その表情である。勝利の笑みというやつだ。
 すると、かえでの後ろで再び扉が開く。大柄な男性が背筋をのばした姿勢で立っていた。
「報告はここで合ってるか? 天使ハウリングの討伐作戦なんだが」
 柏木 清志郎(r2p000956)である。見た所かなり重傷なようだが、姿勢にまったく乱れがない。訓練を受けた兵士の姿勢だ。
「大丈夫よ。どうだった?」
「成功だ。厄介な能力持ちだったが、俺たちの作戦勝ちだ」
『厄介な能力というのは、やはり作戦で打ち破ってこそですよね! やはりカミサマは見ておられるのです!』
 堂々とした様子で述べる清志郎に、迦陵羅・ルラ(r2p000241)がまるで自分のことのように頷いて見せる。いつも通り拡声器越しに喋っているが、室内であることを配慮してか音量はひかえめだ。
「そっちも厄介な能力……だったのか?」
風沌といいまして。暴風を生み出す大天使でした。部下も領域のなかを飛び回っていて、それはもう……』
 そこへ、これまた大怪我をした天堂 烈(r2p001084)が入ってきた。
「すまん、ルフェンドは取り逃した。撃退には成功したんだが」
 頭に手をやる烈に、清志郎たちが首を振る。
「権天使級だったんだろう。無理もない。倒しきれないこともあるさ」
「ああ、そう言ってくれると助かる。自分で言うのもなんだが、あの戦力相手に死者も出さずに帰ってきただけでも上々な成果だな」
 レイヴンズは貴重な戦力だ。そうそう失うわけにはいかない。まして烈は医者である。その気持ちも一段と強いだろう。
「確かに。生きて帰ってこそだ。『百獣雷公』の討伐にも成功したし、今のところ作戦の大部分は成功したみたいだね」
 黒森・秘蜜(r2p000247)が総括するように言うと、会議室の空気がやや緊張したものになった。
 当人の言うとおり、今のところは人類側の優勢だ。
 しかし残る作戦は大物たちばかり。そしてラファエラをはじめとする大規模な作戦群。……その勝敗がどちらに転ぶかは、まだ分からない。
 今できることは、仲間達の無事と勝利を祈ることのみである。
 されどその祈りこそが、一度は滅びかけた人類に逆転のチャンスを齎すのかもしれない。
 故に、祈る。
 人類に勝利を。