新たな街へ


 ――3月末。
「一先ずはマシロ電鉄の延伸工事は完了したって。
 今、終点の根岸駅から横須賀線の連結工事終わって、連絡橋で掘割川と根岸湾辺り越えてく感じ。
 連絡橋は周辺に魔力防御障壁あるから、電車も安心安全ってワケだね。
 ……そーいう技術のあるシュペル教授とか、それを可能にしてくるラプラスとか、ちょっと腹立つよね」
「どーしたの、じゅんじゅん。自己啓発中?」
「違うけどさ、終点の横須賀はD.I社でいい?」
「おけ。じゃ、ぼくらは磯子とか氷取沢の新駅辺りの管理かな」
 Kyrie & PearlCoast Armoryキリエ&パールコースト造兵廠――通称KPA。
 それはマシロ市民の隣にいつだってあると言われるほどに日常生活には欠かせぬ存在だ。
 その誕生時にはラプラスの箱を介さない近代兵器の開発量産を行って居たが、今はラプラスとシュペル両名との連携を意識しながらもその図面による製品の実用量産化を行なっている。
 炊飯器からスマホの自撮り棒までもを作るこのKPAは旧人類軍横須賀基地の奪還を契機にした磯子地区の平定をキャンプ・パールコーストが防衛・巡回強化にて得た安寧を享受するためのインフラ設備の設置開発に尽力してきた。
 その一つがマシロ市民のだ。
 現在の横須賀へはどうしたってKPA-05ASV・ポルトゥヌスかにを使っての移動が必要とされていた。
 これを非能力者ナチュラルであろうとも安全無事に移動できるようにとマシロ電鉄延伸による「行動制限の撤廃」を狙ったのだ。

 ――マシロ市というのはとしての立場を確立している。

 それはマシロ市長である涼介・マクスウェル(r2n000002)の言である。
 マシロ市とは学術機構や商業施設、都市機能を万全と備えた堅牢なる城塞都市であり、非能力者と呼ばれる存在を庇護することを可能とした前時代水準の生活を確立した都市だ。
 そのマシロ市の全機能を外に移すのは困難ではあるが人類が生存可能とするの裾野を広げることは可能だ。
「じゅーんじゅん。難しい顔してるけど、どったの?」
「ん? ううん。キャンプ・パールコーストの通常戦力が駐屯してるから、安全地帯にはなったけど大岡川あの川隔てたら普通に森だなって」
「ま、ね。ま、そこらへんもどうしていくかだよ。室長かぐらは昔の政治家みたいに高々とした壁でも立てるかとか言ってたけどね」
 からからと笑った七井 あむ(r2n000094)に逢坂 絢(r2n000079)は「案外名案かもね」なんて返した。


「ぼんやりしていますの!」
 4月。鎌倉での戦闘に向かったあむの代わりにAIであるVALKYRIE(r2n000098)が絢のサポートに入っていた。
 VALKYRIEはAIだ。そのシステムが存在すれば彼女は無数の場に実在が可能である。
「ごめんって。そろそろでしょ。磯子はイソゴーランドとか言う室内遊園地だとか観覧車だとか、テナントとか。
 本当に普通の街を、昔の生活を取り戻すとしてるって感じだしさ……道路だって都市計画できちんと整備中」
「はい! メインストリートは80%程完了していますの! だけ!」
「……うん、そのへんは追々。んで、氷取沢はこれから鎌倉のアプローチがあるかもだからリラクゼーション系だっけ」
「ですの。温泉! 温泉ですの! きりも行ってみたいですの! オラクルもそう言ってましたの」
「AIなのに?」
「――で、横須賀ですの」
「ねえ、都合が悪くなったら無視をすることを学ぶのはAIないよ」
「横須賀はD.I社にお任せしましたの!
 ここまで長かったですの。KPA、セントラルカテドラル、マシロ警察、消防署に大学の工学部、農学部の皆ちゃま。
 K.Y.R.I.E.の総合戦略企画部に物資管理部、D.I社に各民間企業ちゃま。みーんなで頑張りましたの!」
「良い話し風にしてるけど」
「これからですの! まだまだもうひと頑張りですの!
 皆ちゃまのご意見をどしどしばしばし集めて素敵な街作りを行ないますの!
 絢ちゃま? 絢ちゃま? 疲れてますの? 凄い青い顔してますの。もしもしー? 絢ちゃま?」
 疲弊した表情を浮かべていた絢は「仮眠」とそう言ってから仮眠室と転がり込んでいったのであった。

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