謫すトルメンタ II
小田原で。箱根で。
終鐘教会とK.Y.R.I.E.の戦いは次第に、一つずつ、終息へと向かっていく……。
「わたし良いこと思いついたんだよ~!」
とある屋敷の制圧任務を終えたミア・セッションズ(r2p000197)は、デッドブローハンマーを手に笑みを浮かべた。
「ちゃんと反省しないなら――今からここを本当の事故物件にするからねぇ」
軽い脅しのつもりで、捕縛した終末論者へそう告げる。
「……こっちもさ、別に殺人者集団じゃないわけで」
同じく捕縛した者らを前に、大矢 薫(r2p006305)は肩を竦める。――その後ろでは終鐘教会の食糧庫が燃えていて。
「生き残った意味、よーく考えろよ」
「はぁ~~~……」
同刻、同じように終末論者の捕縛を終えたラビリンス(r2p006687)は大きな大きな溜息を吐いた。傍らに置いてある被り物の理由は問わないで欲しい。なんにせよ、ミッションはクリアしたのだから。
「なんだか。無性に。疲れた……」
各戦域で終末論者勢力を破ったK.Y.R.I.E.能力者は、それだけ彼らの捕縛にも成功していた。
……捕縛された終末論者が今後どう生きるかまでは、君達の管轄外のことではあるが。
爆破されずに済んだビルから出たジャック・ドーニング(r2p001686)は、血だまりの中に沈んでいる終末論者を一瞥した。高所からの落下によってぐしゃぐしゃに壊れた身体は事切れており……半壊した表情には、最期まで恍惚の笑みが貼りついて。
「……――」
生き残る覚悟がなかった連中から、ジャックは視線を前に戻す。
奇しくもウルズ・ウィムフォクシー(r2p000090)が相手取った連中も、異様な喜びに包まれていた。
砕け散った天使の塵が空に消えていく。ゆっくりと瞬き一つ。――今は、命を救うことができた結果を喜ぼう。
「滅びの題目を掲げとるけど、ほんまに死にたいんかねえ……」
戦域からの無事の撤退を終えて。連城 諒真(r2p003112)は傷を仲間による加護で治療してもらいつつ、先程の戦いを思い返していた。その両手の赤と黒の手甲には、まだ土埃や人間の血がついていた。
「天使になって何が楽しいんすかね? お手軽にパワーアップしてもつまらないっす」
鈴木 孫一(r2p006440)が大きく溜息をこぼしたのは、ミッション自体には成功したものの元売人には逃げられてしまったからだ。
奴はこれから何をするつもりなのだろう。……果たして何ができるのだろう。その先には、何が待つのだろう。いい想像はできない。緩やかに首を振る。
――啜り泣きが聞こえる。たった今、心の支えを失った者らの慟哭。
「月並みな言葉ではあるが……」
無力化された終末論者達に、アダマス・逆叉(r2p001637)は。
「生きていれば必ず、いいことだってあるのである」
それは――逆説的には、死んでしまえばそこで終わってしまう、ということで。
三日月の剣を垂らした腕に漫然と握って。ルナ・エクリプス(r2p003936)の俯いた先には、砕け散った聖釘核の残骸が。
ぽた。ぽた。切っ先から流れて落ちる赤い血が、少女の小さな顎先から伝う血が、メトロノームのように音を刻む。
さっきまでここに居た天使は、もう居ない。
また一つの戦いが終わって。
天賀谷 ミナ(r2p004242)の改造多脚輸送車には、かつてマシロ市民だった骸が載せられていた。
マシロ市へ向かう輸送車を、見送りつつ。虚しい風が、乙女の銀の髪を揺らした。
人の心は弱い。子供の心は脆い。
天使化したら、殺さなければならない。
分かってる。全部、分かってる。
(――この子達には安息を。終鐘教会には神罰を)

