
Operation『Lost Arcadia V』 I
立ち昇る噴煙が昼も夜も無くしている。
噴き上がる火いっそう赤く、赫々たる溶岩はおどろおどろしく闇を染めていた。
そんな黒と赤の世界で。
ルネ・ストラヴィス(r2p005463)の透き通る身体より、清らかなる輝きがこぼれ溢れる。それはさながら千の光を束ねたようで。
「みんなを、傷つけさせはしないよ」
溶岩流から逃れつつ、見据える先には天使共。
奇しくも北瀨里 紫織(r2p001661)がもたらす輝きもまた、宝石。少女の額に煌めく紅玉の光は治癒となり、仲間達の傷を癒す。
「みんながいて、そのみんなさ護るのがアタシだもん」
どんな奔流も、どんな怒涛も――止めてみせる。
第五熾天使による天変地異にも、軍勢にも、彼らがもたらさんとする絶対的なる破滅にも、抗ってやろうじゃないか。
雨野 風花(r2p001432)が用いるのは、そんな破滅とは対極の力で。
――ここが踏ん張りどころ、だからこそ。
「絶対に死なせないから、みんなも全力出しちゃって!」
それはただの子供みたいな。でもその両手は、人を救う為にある。
夜乃・IF・アスモデウス(r2p006183)も同じくだ。
「わたくしは悪魔ですから、天使相手に容赦する必要は感じませんもの。ここで仕留めてさしあげますわ」
天使が傷付けるのなら悪魔が癒す。構えるKPA-HR1アンティノミーに祈りを込めて、気合を込めて、引き金を引く。
銃声。あるいは砲声。
アルマ(r2p000032)が構える#54-Amanecerが、轟雷が如き一撃を放つ。それは敵をブチ抜き、未来を切り開く夜明けの光。
「地獄なんてものがあるとしたら、こんな光景なのかしら」
ここでしくじれば、この地獄はマシロ市にも具現化するだろう。最悪の結末を思うとぞっとする。だからアルマはこう思う。「勝てる勝てないじゃない、勝つのよ」と。
それしか、人類に未来はないのだから。
Elaine Willy(r2p000291)たちヴェテランは――ここで終わる為に戦ってきたのではない。どれだけ、どれだけの骸を踏み越えてきただろう。どれだけの無念を見届けてきたことだろう。
負けられないのだ。それが今、生き残っている者の使命なれば。
「我々はどんな手を使ってでも、アレクシスを止めねばならないのです」
「悪いけど、ボクは可愛いだけの女神様じゃないからね――反撃しちゃうよ!」
天賀谷 ミナ(r2p004242)もずっと戦い続けてきた者の一人で。
威風堂々名乗り上げ、天使の前に立ちはだかる。何が相手であろうとも。どんな攻撃が襲いかかろうとも。退かない。譲らない。マシロ市には、行かせない。
誰も死なせない。全員で生きて帰るんだ。
その想いは茶路 アシタ(r2p000831)も同じ。
「これ以上……奪わせてたまるか! かかってこい!」
守るべきものがある。守りたいものがある。アシタが振るうKPA-S1オネスティーは真紅の炎を生み出して、反撃の狼煙となるだろう。
「こんなところで死ぬ気はないんだ」
突破させてもらおうか。凛と前を向く宵闇 弥白(r2p003368)の周囲に、透明な蝶が揺蕩って。その羽ばたきは、弥白の祈りは、治癒となって破滅に抗う。
――生と死が交差する。
その最前線で、藍玉 珪人(r2p005052)は海に誘われて潮騒を纏う。
吹く潮風も、引き絞る弓も、そして今ここで戦う意志も、全て全て――
「これが僕の力だ!」
……長く、穎原 アギト(r2p005151)は息を吐いた。足元に転がる機械は、もう何のノイズもこぼさない。
「さて……皆は無事かしらね」
試作兵装F.A.N.Gを持つ手に油断がないのは、今の戦いは前哨戦であるがゆえだ。
オベリスクの存在で通信による意思疎通が難しい――ゆえにこそ迅速に合流地点へと駆ける。決戦に向かう為にも、態勢を整える必要があった。
その最中、アギトは不思議な心地を覚えた。
それは嫌な感じではなく、むしろ逆で――
「――……」
力天使ターリルの目に、霊砡――富士山霊脈に直接的に影響を与える霊脈結石――がレイヴンズによって傷つけられていく様が映る。
数多のレイヴンズ。その中にはLucia Afrania(r2p000218)と戌亥 レオ(r2p006588)の姿もあった。
「罪咎憂いを取り去り給う!」
「ここで負けるもんか!」
ルチアの治癒が皆の傷を癒し、レオの刃が力強く振り抜かれる。
きし、きし。霊砡が錚々と悲鳴を上げる。あるいは砕けた塵が、きらきらと舞う。
戦場全体を包む重圧が幾許か和らいでゆくのは――霊砡が砕けつつあるからで。
なれどまだ霊砡は、そしてターリルは健在。
地鳴りを立てる霊峰は、時限爆弾のように戦慄いている。

