Operation『Lost Arcadia V』 II


 ひときわの地鳴りが御殿場の大地を揺るがした。
 簡易拠点のプレハブの壁がじりじりと震える――ラストノート(r2p004395)はそんな状況の中で、仲間達の手当てを行っていた。
 天使を退けた直後ではあるが、休んでいる暇はない。
(一人でも多くを、救う為に――)
 少しでも尽力を。ラストノートは横須賀の激戦を知っている。そして今ここは、横須賀以上の激戦で。
 幸平 かなた(r2p001526)もまた横須賀を戦ったレイヴンズの一人だ。
(わたし……あの時より、強くなれたかな
 ラストノートと手分けをして、傍を漂う新緑の宝珠を煌かせて。
 その輝きは春の木漏れ日のよう。
 そよぐ風が、小さな花を撫でるように――
「きっと、大丈夫。一緒に頑張ろう、ね」
 瀬田松 柚(r2p002336)が降らせる星の雨が、きらきら、戦いに傷ついた者らに降り注ぐ。
「ふう……ありがとうございます」
 戦いで負った傷の痛みが少しずつ薄らいでいく。イーグレット・ブランデュベルツ(r2p003312)は壁を背に座って休息しながら、柚たちに礼を言った。
食える時に食っとけ、まだまだが残ってるしな」
 そんなイーグレットへ、そして仲間達へ、栄養補給用のKPA製ゼリー飲料を配り歩いているのは池神 暇次郎(r2p000690)だ。
「やっと……着きましたか……」
 イレギュラーな事態が発生し、本隊からはぐれてしまったベドウィール・ブランウェン・雨夜(r2p000403)であるが。こうして紆余曲折あり無事に簡易拠点へと辿り着き、ほっとしながら暇次郎からゼリー飲料を受け取った。
 と、いっそうの賑わいが増したのは朝賀 よるがお(r2p003456)が、別の拠点より救助した仲間達を無事に連れて来たからで
「はー、暑かったー」
「天気どころか大地まで操っちまうとはな……」
 ボヤいたよるがおに答えたのは叢 雲(r2p006181)だ。その黒髪や服は火山灰で白灰に染まってしまっている。龍である雲は風を操ることはできるが、――ここまでの天変地異は流石に無理だ。改めて、熾天使という脅威のを痛感する。
 ほとんど同じことを、竜人である飯縄 戒飛(r2p000662)も思っていた。彼方の富士は不吉なまでの赤い火を、黒い噴煙を吐き続けている。
 
「俺たちが一筋縄ではいかぬこと、見せてやろうじゃないか」
 天使カルロッタ(r2p006600)へ、証明したように
 全く、口にするには易しな状況ばかりである。
 それでもジェイ・フォールド(r2p000598)は乗り越えてみせた。なら、次のだってきっと乗り越えられる。
「こんなもんでいい、
 ありがとな、とヒーラーの一同に礼を言って。赤がにじむ包帯の身体に上着を羽織る。次の戦いの為、男は前を見据えた。

 ――そんな拠点の片隅、鵜来巣 未明(r2p000774)は天使ベル・プペ(r2n000187)の羽根を握りしめていた。
 止まることは許されない。でも、今は。今だけは。少しだけ泣くのを、赦してほしい。
 それでも――突き進まねばならないから
 退かないと決めたから。
 天使にも理由や事情や人生があるのは分かっている。南條 風理(r2p000572)はそれを否定しない。だから、あとは、もう、ぶつかるだけ。双理の剣を、相克の盾を手に、剣の魔女は一歩を。
「さぁ、いこう」
「うん。僕たちは戦うんだ。勝って――この先へ進んでいくんだから」
 ここで足を止めてなんていられない。桜木 結永(r2p000944)は赤く燃える空を凛と見上げた。
 燃え尽きるものか。
 ゆえにこそ。
 ――
 花喰 依葩(r2p000077)にとっては、戦場に咲くその身こそであるが。
「斬るべきものがそこにあるのなら」
「斬ってみせようじゃないか」
 鞘に納めたKPA-S08山萩改やいばを手に、志岐ヶ島 吉ノ(r2p000431)は悠然と。
 ――今の日和田 和子(r2p003462)には仲間がいる。並び立つ皆を見回して、乙女は一度だけ深呼吸をした。
(……行ってくるね、日南子ねえさん
 せっかく《《姉妹喧嘩)》に勝ったところなのに。ここで終わってしまったら、r2p006119に合わせる顔がないから。
 踏み出していく。そんな戦士らの後ろ姿に、山中 柳翠(r2p006456)も背中もあった。
「やれ裁きだ滅びだ運命だと……天使はそれしか言えんのか」
 耳障りだ。どんなに高尚な目的や理由があろうとも――この惨状はあまりにも、
 幾つもの足が。幾つもの眼差しが。幾つもの意志が、第五熾天使へと向かっていく。

 ――が、レイヴンズを待ち受けていた。


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