Code:Moytirra『航海の途上』


「じじい、一体何処で何をしとるんだか。
 後方支援戦場の様子、見たいけど、何処かしこも天使ばかりやないか、ボケナス」
 黒衣をはためかせて走る古月 せをり(r2n000108)はそうぼやいた。
 幼気で、何処か穏やかな風貌の彼女からは想像もつかぬ棘は今日も鋭く研ぎ澄まされているかのようだった。
 向かう先には霊砡が見える。霊峰富士にまつろう力をターリル・マルタルが細工する形で顕現させ自身の優位になるように利用しているものだろう。
(棟耶のじじが拠点の方る。
 儀式を行ってくれてるけど、霊砡がこのまま顕在やと……満足な出力にもならん、か……)
 せをりは舌を打ってからターリル・マルタル麾下の権天使達も見た。彼らに下されたオーダーはそれらの絶対防衛か。
「マシロの防衛ラインから強行軍させてもろたけど、休ませてはくれんみたいやなあ」
 小さく笑ったせをりが最後衛に陣取ったことに最初に気付いたのは二兎 (r2p000626) であっただろうか。
「あっ、せをりやん。どないしたん? がくえんちょ捜しでもしとったん? それとも、さくさく」
「あんたの愛しのさくさくはその辺りの調査終えたらさっさと爺連れて来てくれると思うわ」
「ほんま!? それなら、壊しとこか。はじめが見たら嫌がりそう。いやな気配ばっかりするし」
 指差す二兎に「壊すのね!」と明るく告げた少女が拳をぶんぶんと振り回している。まだ真新しいK.Y.R.I.E.の制服を着用して居た桃色の髪の少女の背後から「待て! 待て!」と駆けてくるのは閻 魁命 (r2p004349) であったか。
「待たぬか! 本当にみましは無茶を!」
「でも、魁命。困っている人が居るし、が嫌なものだって誰でも解るじゃない? 壊しましょうよ」
「そう簡単に――ッ」
 魁命が世話をしている珱・瑾華(r2p005992)はあっけらかんとそう言った。暴れん坊に手を焼く魁命が頭を抱えるのと同じように、真っ直ぐに前へと走っていくはもう一人。
「もう無茶苦茶じゃんか! おっさん、怪我するなよ!」
「子犬が傷付くよりもずっといい。ああ、ああ、可愛い子犬! 怪我をしてはいけない」
 憂うように告げるアルジェント・ディノッテ (r2p006088)に傷を庇うように立っていたチプタ・ウールヴル (r2p005877) が肩を竦めた。
 戦況は、とせをりが聞かずとも縦横無尽な暴れん坊を見れば良く分かる。
 ――粗方の霊砡が破壊されている、が、天使達が重要防衛拠点とみなしているものだけが残されているか。
「恐らくはを壊しきらねばレイラインによる攻撃も聞かない……そうでござりゅな?
 それに、他の何かの力を借り受けようとも悪しき影響を与えかねない。霊脈、地脈、龍脈、そう呼ばれるものはそうした効能があると聞き及んでいるでござりゅ」
「……はい……。なら、ば……権天使守護者を、……撃、破……せねば、なりません……」
 兎神 ウェネト (r2p000078) へとこくりと頷いた北靈院 命 (r2p000308) は真っ直ぐにたる霊砡を見詰めて居た。
「要は撃破ポイントが高そうだな。霊砡破壊数チャンピオンになる為には見逃せなさそうだぞ?」
「ああ、そうですね。しかし、魔術師協会による勝手なレースを告げればせをりさんは驚いてしまうのでは?」
 揶揄うように告げるユアー ヴァレンタイン (r2p000991) に久慈宮 華月 (r2p000151) がぎくりと肩を跳ねさせた。
「いや、はは……ま、まあ、そういうことをした方が楽しいだろ? クリアしようぜ!」
「うん……そうだね。楽しくなければ、戦いきれない。
 それでも、私達は大破局あの日を乗り越えてきたのだからこんな所で負けてはられないね。
 だって気がかりだ。彼女が何を考えるか――さて、それも見過ごせない、か」
 ディセリア・ミスルトゥ (r2p000112) は悩ましげにぽつりと呟いた。
 敵はアレクシス・アハスヴェール麾下の力天使ターリル・マルタルだけではない。ミハイル派と目されたイサーク・サワの姿もあるのだ。
(……どう動くか、確認しておかねばなりませんか)
 彼女は能力者の出方によっては敵とも味方とも取れる行動をするだろう。
 仲間達と共に霊砡の破壊を行って居たElaine Willy (r2p000291) は渋い表情を見せた。
 見過してはならぬ重要なピースの一つだ。「イレイン」と呼ぶクラン・イノセンテ (r2p000453) に女は小さく首を振る。
「杞憂はの事だろう? 駆け引きのタイミングも重要だが――要石も見過ごせない。
 いつ事が進んだとしてもあの石が壊されなければ、相手は波濤となってこちらを呑み込んでしまうだろう」
 ジェイ・フォールド (r2p000598) の言葉に小さく頷いた晦 総嗣朗 (r2p000168) は「では、第二ラウンドの準備は十分かな?」と問うた。

 ――まだ、戦いますか?

 上空よりターリル・マルタルが穏やかが青い瞳で微笑んだ。
 まるで友人のようにそう言った彼女を見上げて地上 真珠星 (r2p001838) は小さく笑う。
「うん、戦うよ。リルちゃん。私は友達になってくれるって言ったあなたを、殺しに来たんだから」



※力天使『ターリル・マルタル』との戦いがに進行しました!
 ラリーシナリオオープニングより、プレイング受付期間をご確認下さい。


・*+.Autumn Novel Campaign.+*・

※リミテッドクエスト『焔を越えて』が開催されています!!