ジェスターとジョーカーの饗宴 I
無数の歯車が軋む音。
煙る蒸気に、淀んだ空。
マシロ市とは大いに異なる造形をしたその街の名は――多摩地区南街。
「わん! 不思議な街、初めましての場所! なんだろう? ……ま、いっか! お仕事するよぉ!」
見える光景には疑問しか沸いてこないが、ナナ・シドール(r2p001063)は後で考えることにした。
――きゃはは。きゃはは。
サーカスを騙る天使共があちこちで嗤う。「こっちだよ」と能力者を誘う。
そうして蒸気の向こうから現れるのは、悪辣比類なき天使共。無辜なるアザーバイドを使役して、侵入者へと襲いかかる――
きん、と剣の澄んだ音が響いた。
ミステル・アイヒェ(r2p007515)は刃を振るう。その樹蜜のような瞳に「許せない」という激情を宿して。それは彼が『騎士』であるからこそ、尚更。
「このくらいで、俺の足は止まりませんよ。……参ります!」
他者の意思をねじ伏せ、無理やり従わせるなんて……「ひどい」、ジュヌヴィエーヴ・イリア・スフォルツァ(r2p000400)は優しい掌を握り込む。
その手を、花咲く乙女は胸の前で組もう。こんな悲劇に抗う為に、歌うのは慈悲の雨。
「とても美しくて、残酷な天使様たち。
その在り方がどれほど正しくとも……天に捧ぐのなら、わたくしは優しい歌や幸せな笑顔を望みます。
……どうぞ、お帰りください」
懸命なる祈り。それを塗り潰さんばかりに――狂える旋律が響き渡る。コン・アニマ。カランド。スケルツァンド。グランディオーソ。
天使が立ちはだかるのなら、天狼 黎華(r2p001822)はレイヴンズとしてそれを打倒しよう。
「この先へと進むために、私たちは来たんだから」
星剣レグルスに煌めきを。治癒の願いを込めて、黎華は刃を掲げよう。
「星影よ……傷ついたものをその光で癒して!」
それは誰かを助ける為に。誰かの、眩い明日の為に。
そうやって力を尽くす人を「愚か」だなんて――ルチル(r2p000057)は言わせたくない。だから、この手に目いっぱいの力を込めよう。
「全力でいくよ―― えいやっ!!」
パワーのままに薙ぎ払ってやる。奴らが「ステキ」などと宣うこの公演の、何もかもを!
なれど天使共がこう言うのだろうか、「The Show Must Go On」と。
ステージ。衣装。スポットライト。『魔王役』のValiente・Märchen(r2p006827)はおどろおどろしい外套を翻す。
「王子、キミはどうだ! キミは自分に正直でいられるのか!
キミの行いは本当に民のためだと言えるのか!」
魔王が倒されるだけの物語なんてナンセンスだ。これは勇敢なる御伽話――だから退かない。何度倒れても、立ち上がろう。
星鳳 縁(r2p000343)も、戦場というステージでステップを踏もう。輝舞、七色の煌めきを連れて。
「私も、皆も、人間の私たちはやっぱり暴力が伴う君のサーカスを楽しいとは思えない」
この問いかけはエゴなんだろうか。それでも縁は、眼差しを向けることを、言葉を紡ぐことを、諦めたくはなくて。
「言葉が通じなくとも力は示せる。なにせ――死にたくないでしょう、お前たちも」
青海 悠河(r2p000047)は三日月と共に舞踏する。天使に支配されたアザーバイドの、その魂を縛る鎖を切り裂くように。
道を阻むのならば退いてもらおう。足止めを喰らうなど趣味ではない。
たとえそこが地雷原でも、だ――アレク・f・ステイゴールド(r2p000007)は冷静に、AC-KLU09αにて障害物を破壊する。
「あると分かってる罠ほど虚しいものはないよ」
この先へ、進まねばならないのだ。
――その為ならば一芝居だって打ってみせよう。
久慈宮 華月(r2p000151)は人ならざる美貌を武器に、愚かな天使へ囁いた。「そう簡単に捕まってあげませんよ」。
「……はは、演技をしてる俺はアンタ好みのイイ女だったか? じゃあなァ、クソ野郎」
全てを屈服させる――?
未来を見る目を持つ女を前に、運命すらも領せると思うのならば大間違いだ。



