OVER THE BLUE HELL III


 嵐の海に聳えるは悪夢。
 黒くうねり、全てを壊し、遍くを沈める、――それは大怪物クラーケンの手足。

「はっ、脚一本に負けっかよ!!」
 海面を割り、世界を引き裂かんばかりに振り抜かれる『死』に――大津 月翔(r2p000520)は立ち向かい続ける。流れ出る血は聖なる竜血。燃えて滾って、譲らない。面影に手を伸ばす者の為にも、沈んでなどやるものか。
「おらぁ!! なんなら顔出ししたって構わねぇぞ!!」
 やりたいことを貫くことが、後悔しないで生きることが、難しい世界なのは分かっている。
 それでも生きるのはどこまでも自分自身だから――
 ――DISK(r2p001453)は、そうやって生きる人間達の道に少しでも悲しみがあって欲しくないから。
『結構大変ですが、頑張りましょう!』
 前に進もう。大丈夫。こんな嵐も乗り越えられる。希望の灯火を掲げよう。鋼の意志を携えよう。DISKのアイカメラに映るのは邪精霊シーゴーントクラーケン分体シェーヴェこの嵐に相応しい波乱の戦況だ
『人手が足りないくらい支援が必要なんて、当機としては起動のしがいがありますね!』
 立ち続けよう。
 そして――マートル・マーター(r2p000087)は立ち塞がろう。
「あらゆる願いに貴賤はなく、ただ、理由のあるなしに関わらず闘争は発生するというだけ。
 全てを滅ぼし、その上にあらゆる存在が無となった平和を築かんとするのであれば、あらゆる障害を排除し、敵を滅ぼし、以て証を立てる事です。
 ――故にこそ、私という存在は敵として立ちはだかりましょう」
 揺らぐ嵐を、真っ直ぐ見据えて。マートルは世界もヒトも神も愛し、そして闘争を愛しているが、いつか戦いの果てに辿り着くことを誓っている。――だからここで、を見る前に眠ることはできなくて。
 踏み込んだ。
 機動防衛浮島『アイギス』の支援砲が、暗い嵐に光を描く。
「――終わらせる」
 ジャック・ドーニング(r2p001686)は戦術兵装《WBX-042》を振るい抜く。刃が描く赤熱の軌跡。連中が災禍の嵐を謳うなら、ジャックは刃と弾丸からなる鋼の嵐アイアンテンペストだ。
「相容れない灯は消える。それが運命当たり前だろ」
 呑み込んでやろう。そして、その果てにどうか、どうか凪を。
「大いなる災いに『叛逆』を。わたし達は……わたし達の歌、決して負けはしません!」
 月之瀬・レナ(r2p000688)が対峙しているのは付随型タイプ・アディショナルアダーマ級激神災害、人類命名コードネーム・ヤペトゥス――絶望の旋律が響く嵐を、乙女達はしっかと見据えた。
 こんな激しい戦場で、それでも歌が響いている。真月里(r2n000190)の声が、届いている。――なら、自分だって。勇気を胸に、レナは深く息を吸い込んだ。
「――絶望の中から希望を見つけ出すように
 光はきっと、そこにあるから――!」
 歌が響く。戦う皆の、背中を押す。
 多くの、多くの想いをレイヴンズは託されている――「あの青き受難の海を、かならず越えてみせなさい」と、絵空 白紅(r2p000568)は声援を受けたから。
 あれはなのだと、信じることが出来たから。
 終わらない悪夢も、晴れない嵐も、ないのだから。
(さようなら、私の怒りと憎しみよ。勝利への熱き猛りと奴を穿った誇りと成れ)
 越えて往こう。クラーケンの断片が沈んでいった海から顔を上げた。彼方――まだ、クラーケンの本体が、黒山のように聳えている。
「……今からアレとのなのよねぇ」
 嵐に前髪を掻き上げて、マリィ・E・テネブラエ(r2p000287)は溜息のように呟く。二本の脚との激闘で勝利を掴み取れなかったこの状況で――「勝てるのか?」と心の中で正気が問う。
 波打つこの海に、どれだけの命が沈んでしまっただろう。どれだけの血が、流れてしまったのだろう。
 脚二本とは比較にならない絶望と、今からマリィは対峙する。……重い傷を負った身体は今もふらふらして、血が足りなくて、体温だって下がりきっているというのに。
(――それでも)
 E。どこまでも凛と前を向いて、戦場ステージへと向かうのだ。

 ひとつ、またひとつ、勝利の報告が旗艦ラファエル・ペラルタへと届きゆく。
 クラーケンとの戦いの中、浪花 アルネ(r2n000145)は猛烈な情報処理を並列進行しながらに目を通す。だが――一つの報告に、アルネの青い瞳の動きが止まって。
「――こちらアルネだ。生きてるか!」
「どうにか。……では、ありませんが」
 通信機での呼びかけに答えたのはエドワード・ルイス(r2p000459)だった。毅然とした物言いだが、その裏側にはどうしようもない苦さが広がっていて。
「そう、か。……件の天使は?」
「未討伐です、。……どうも第九熾天使『ディオン』が主だと自称しているようです」
「――!」
 だが幸いは、連中がそれ以上のをこの海に持ち込む気配がない、ということか。アルネは今だけは様々な憶測は噛み殺し、言葉を続けた。
「ご苦労、こっちに来るまでの束の間ではあるが……休みたまえ、エドワードくん」
「痛み入ります。すぐに向かいますよ、浪花司令」
 エドワードにとっては、これからの戦いが――クラーケン本体との戦いこそがであった。
 赤く湿った包帯だらけのこの身体で、一体どこまで戦えるだろう。それでも、男には戦わねばならない理由があった。

 叫び声のような雷鳴が轟く。
 嵐は勢いを増し、人類の目の前には巨大な受難が立ちはだかる。
 ――なのに誰も彼もが進んでいく。
 死んでしまうかもしれないのに?
 そうかもしれない。犠牲の無い勝利はない。
 それでも―― そう。
 何度でもを積み重ねて、人類は、



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