チュートリアル・オーダー I
青き受難の海を越え。
とうとう辿り着いた悲願の地、東京は――
命空骸戯なるゲイムが開かれていた。
「――懐かしさに浸る暇はなさそうだな」
趣味の悪いゲイムに、鬱陶しいデバイスに。天明 大和(r2p006421)は牙剥くように唸りつつ、白銀の天使を睨み据えた。命を狙ってくる天使に対処する、ゲイムなんてなくてもいつもと変わらない。
「俺は生きて帰るよ。それがアルとの約束だ」
踏み出す横顔の、その耳に。きらり、青いムーンストーンの星のピアスが瞬いた。
どんな舞台で、どんな状況でも。罰天院 ウズクマル(r2p000605)の表情は、崩れない。
「逃げるわけにも、いきません。お仕事、ですし。忍者、ですので。えぇ」
凍てる風に乗って。二丁拳銃を構えて。執拗に叩き込むは殺す為の技。銃声、銃声、空薬莢がきらりと舞う。デバイスに縛られて尚、その動きは狂おしいほどに麗しく。
――この脱力感は本気ダイエットしてる時に近いものを感じる。デバイスがもたらす制限に神代 くるみ(r2p000888)は微かに眉根を寄せつつも――バイクのエンジンを噴かせ、東京の風を斬り裂く。
いつもなら絶対負けないけれど、なんて思いが一瞬過ぎるが、大前提として負けるなどといった選択肢がないのはいつものことだった。
「そんなスピードで良いんですか?」
不敵に笑う。凍てつく奔流を纏う刃で、天使を物言わぬ氷像へと変えてやろう。
『オーダー、敵勢力の撃破を開始します』
厳密に言うのなら、DISK(r2p001453)に戦う理由はない。なぜならDISKは戦闘用ロボットではなく、生活支援ロボットだからだ。
それでも。
『当機の存在意義は――皆様を支える為に!』
展開されるメディカルビットC型が、仲間達の傷を修復していく。
煌めき。
陽炎揺らめく城塞の上、ガーネット(r2p000597)は舞い踊る。刻み込むステップの名はカルメン幻想曲――天使らの『欲しいものの為に妥協しない姿勢』は好ましい、だけどこちらに負けてやるつもりはない。
「さて……奪ってあげる」
視線も。呼吸も。鼓動すらも。
あちらこちらで戦いの音が響き渡る。そこに愉快な音を重ねるのは、兼ねてより現れていた『サーカス』を名乗る天使達だった。
場違いなほどのファンファーレ。サーカス団のケタケタ笑い。しかし心の欠片を失った小鳥遊 凪(r2p000422)の顔に、笑みはなく。
「護りきるよ。たとえ仮想だろうと……死ぬのは御免だから」
蒸気の槍を突き付けて。戦乙女の翼を広げて。表情だけが――その名の通り、凪いでいる。
「難しいことはわかりませんが、負けなければよいのですよね」
にこり、王生 暁兵衛(r2p000501)は氷のように微笑んだ。天狗もどきにかける情けも慈悲も、この拳の前には存在しない。ましてやみすみす逃がすなんて? 細めた双眸に妖しく灯るは鬼の力。凶鬼『殞血掠奪』、命喰らう暴鬼となりて。
「いつも通りにやればよい。始めからそう仰ってくださいよー、もう!」
そういうわけで――ぶっつぶれろー!!!
「なんだか知らないけどご愁傷さまだね。僕らもキミらも姫君とやらのおもちゃだってさ!」
僕と遊ぼうよ。チップが欲しいんだろう? ――水月 鏡禍(r2p001916)はあどけないかんばせに意地悪な笑みを浮かべて、烈気の嵐を巻き起こす。
敵意と殺意が降り注いでも、死なない。殺されない。鏡禍は人ではない。くすくすと含み笑って、鏡禍は敵にとっての悪夢となろう。
「全く……おかしなゲームに参加してる暇はないのだけどね」
同刻、パトリシア・ウルシュ・オブラン・シェリード(r2p005521)も狂騒奏でるサーカス団と対峙していた。おかしなゲーム。勝者には願望器? 馬鹿々々しい――と思いつつも、パトリシアとて願いがない訳ではない。
生死不明の父の無事を、ヨーロッパの現状を知りたい。市長が、親友が喜ぶ顔が見たい。――だけどそれは、叶えてもらうものではない。自分の手で、叶えるべきものだから。
「私はその力を、拒絶する」
妖精眼が燦然と煌めく。疑似再現するは聖骸布。天使という神秘からの攻撃のみにおいて、絶対防御を誇るその美しき盾の名は――外典・熾天覆う妖精の拒絶。
かくてパトリシアは、願望器など必要のない願望を口にしよう。
「私は仲間を守りたい」








