あるいは、家族のような


「死んじゃったみたい? むぅ、つまんない!」
 不機嫌そうに月坂 智代(r2p009035)が頬を膨らませた。長剣を払った少女の足元には天使であった物が転がっている。
「智代ちゃん! お疲れ様ですっ!」
 華やぐように笑ったアメリア・レイナード(r2p008573)を顧みて智代は「えへへ」と嬉しそうに笑うだろう。
「2人とも、怪我はない?」
 花月 麻柊(r2n000261)は二刀を収めて薄らと微笑み浮かべてそう問いかけよう。
「あけの達とはすっかりと逸れてしまったわね……」
「うん、お姉さん達と速く会いたいなぁ!」
 目を輝かせる智代にアメリアもコクリと頷いて「麻柊様」と声を掛ける。
「私達は何処に向かいましょう?」
 じっ、と麻柊を見つめるアメリアに麻柊は微笑んだ。
「そうね。道程が同じであれば、とは言うけれど、いつまでも離れ離れになっておく必要もないわ、合流するように動きましょう」
 劔醒会は東日本――東京よりも更に東にその本拠地を有する終末論者組織である。 
 会主への忠誠、ただそれのみを求められる中であっても仲間意識のような物が皆無かと呼ばれればそんなことはない。
 特に劔醒会の勢力圏で生まれ育ったの存在であれば、お互いの意識は親しい家族のようなものだった。
「仙豹とかシパ・バルドの人間勢力とはあまりことを構えたくはないけれど」
「ティティフィティアと遭遇した時も?」
「そうね……仙豹もシパ・バルドもティティフィティアも変わらないわ、戦うと言うのならば蹴散らして捻じ伏せるまでのこと」
 首を傾いだアメリアに「当然でしょう」と麻柊は微笑み告げた。
「この前はあんまり遊べなかったからその人達とも沢山遊びたいな」
 麻柊を見上げて智代が笑う。愛らしく笑う少女に「そうね」と麻柊も頬を綻ばせる。
「他には、池袋には行きたくないものね……取り敢えず路線伝いに北に向かってみましょうか。
 ばかりではなくて支線も使いながらのんびり行きましょう。上野あたりで出れたのなら良いのだけど」
「外にはバンダースナッチがいますもんね、あれと戦うのはあんまり想像したくないです」
とは遊べるけど、大人とは戦いたくないもんね」
 ふるふると首を振ったアメリアに、智代が答えて足元にあった小さな瓦礫を蹴り飛ばす。
 てん、てん、と転がって行った瓦礫は何処かにぶつかって砕けただろう。
「まぁ、いつかはどうにかしないといけない時が来るでしょうけれど」
 そんな様子を見ながら、麻柊は小さく微笑んだ。
 東京の地下、そこにはかつて幾つもの鉄道路線が張り巡らされている。
 都心近郊であれば車を使うよりも電車を使った方が速く効率的でさえあったという。
 それはある意味で、カタルモイが起こるこの東京でも同じだろう。今の空はバンダースナッチなどと呼ばれる何かも分からぬ怪物が支配する。わざわざ地上を行ってバンダースナッチと遭遇するよりもかつての地下鉄路線を進む方がずっと簡単で優しい。
「ブレンダーズや派閥とも言えないようなところも幾らでも構わないわ。
 それよりも第八熾天使派――焔狗の天使の方々と遭遇する可能性も考えておきましょう。
 第三戦区の決戦が終わったから、地下鉄で何処かへ移動するのならぶつかる可能性はあるわ。
 少しばかり面倒だけれど……そうなったのならそれはその時ね」
 劔醒会の目的は使ことだ。彼らの望むままの形を目指している。
 第八熾天使派の天使達とはあまり関わり合いたくないと言うのが本音であった。
「この辺りならアーケダマルに遭遇することはないでしょうし、後はあれの前に出ないように――」
 そう呟いた麻柊の声に被さるように聞こえてきたのは――
「へぇ? そんなにボクらと会いたくないんだ、けんせーかいの人達は」
 暗がり、支線から姿を見せたのは赤毛の尻尾を揺らす少年――その甘えるような黄金の瞳が3人を射抜くようだった。
「……こんにちは、焔狗のシュウリ様。理由はお判りでしょう?」
「そーだね。オマエらには。お二人の王国にはふさわしくない。
 でも此処であったのなら――」
 眼差しを瞠って戦意を昂らせ、シュウリが赤黒い羽を散らせる。

 ――汽笛が響くポッポーー!!!!
 車輪が回るガタンゴトン回るガタン回るゴトン

「チッ、ジャガーノートか」
「――ちーちゃん、アメリア」
 麻柊は智代の手を取り、目配りして跳ねるように跳び、ホームへと着地しようか。
 音が聞こえる。そちらを見れば、排煙を靡かせる壊速列車ジャガーノート(r2p007139)が見えるだろう。
 幼気な被害者でもあったか、またらしい血液を前面にこびり付かせた列車は強烈な風を呼ぶ。
「まぁいいや……カタルモイでオマエとは戦いたくないし。見逃してあげるよ」
 深く溜息を吐いた少年は汽車に紛れてその姿を消しただろう。









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