うつしよのあわい III


 掌の中できらきらと、御魂石が輝いている。
オモカゲっちから八重のことよろしくねって言われちゃったしぃ~……ダチのダチはダチ的な~? マジやるしかないっしょ~」
 手にした輝きを大事にしまいながら、明星 和心(r2p002057)は先の戦いを思い返す。その中で、ジルギヴド(r2p005685)へと告げた言葉を今一度リフレインさせた。

 ――「わっちの夢はさ……『皆で平和に幸せに暮らせる世界』なんだ」

(ゼッタイゼッタイ……有言実行するしぃ~!)
 この岐阜での戦いは、和心の夢の大切な過程だ。短く深呼吸、ループする黄昏を見上げて。
「和心さん」
「あ、姫子っちじゃん~!」
 ループから戻ってきた輝夜 姫子(r2p000065)が和心に小さく手を振る。お互いに無事であることをまずは安堵すべきか。

 ――愛って、好きってなんですか? 

 その問いかけはかつて居た場所で得られなかった答えを齎していた。知りたいと思った関係を聞いて、彼女がループさせたいと願った想いを聞いて。それを思い起こして姫子はぐっと胸の前で小さく拳を握りしめる。
(私の『勇気』は――届いたでしょうか)
 声が届くなんて表面上のものではない。相手の奥深くまで、響いたのだろうか。全速力で飛び去って行った背を思い出し考える。
 ……と、その時である。「おーい」と向こう側から声が聞こえて、見やれば柏木 清志郎(r2p000956)が、仲間達とやってくるのが見えた。清志郎をはじめ、誰も彼も酷い傷だ。和心も目を真ん丸にする。
「わっ……ちょ、大丈夫~!?」
「なんとか、な。死人はいない」
 清志郎はそう答えて、一度後ろを見やる――追ってくる気配はないようだ。とはいえ戦地は戦地である、彼が油断を晒すことはない。
 しかし、悪趣味な戦いだった。悪趣味な場面には何度も遭遇したことがあるが、それでもアレは悪趣味と言わざるを得ない。
 天使ベンジャミン、天使マリィ・ザ・ルーカー(r2p003222)。第八熾天使リ=ル&エイ=ル麾下の連中だ。連中に御魂石が、草薙神剣の力が渡るのは非常に危険だろう。
 自分が倒れないことを喜んだ天使の顔が思い浮かぶ。嗚呼、長い戦いになりそうだ。途中で諦めるつもりなど毛先ほどもないが。
「みなさま、ここに……ぁ、怪我、が」
 仲間たちの元へぱたぱたと花守 環(r2p008178)が駆け寄る。彼女が傷へ手をかざせば、ひやりとした六花が苦痛を優しく攫って溶けていった。小さく息をついた清志郎が「そちらも」と短く問えば環が頷く。
 御魂石の確保は果たした。だが厭離衆に囚われた禍神カガチは未だ彼らの手の内にある。
(カガチさまは、エニさまを守っているようにみえました)
 守るために放たれた火は、環にとってとても怖いもので。けれどつめたい指先を伸ばしてでも助けたいと思ったから、きっと仲間たちもそうだったから、御魂石を手にすることができたのだ。
「ん。皆も御魂石を奪取できたみたいだね」
「ラピスさま」
 ラピス・ニル(r2p005759)は、否、ラピスと共にループの中へ進んだ者たちも傷だらけだ。だがその手に宝珠御魂石が握られていることにほっと場の表情が明るくなる。
 暴威の化身を求めた天使芳斎は死に、Graves清水 亮r2p008337)は遠い空へと消えていった。次に相まみえる時は――。
彼女にとっては大切な人かもしれない。でも、立ちはだかるのならば敵。容赦なく倒すだけ)
 たとえ恨まれようとも確かにその意思がラピスにはあった。今回も、次だってきっと変わらない。
 御魂石は少しずつ集まろうとしている。けれどループへ飛び込んだ全ての者が帰還したわけではない。
 残りの御魂石は、仲間達は。
 気を揉めど待つことしかできない。せめてループの外側で、未だ戻らぬ者を待とう――。


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