ダイナソー・ハント


 魔術師協会として、それら全ては見過ごせない。魔術師は秘匿されるべきを白日の下に晒されてはいけないからだ。
 神秘対策課として、課員の不始末は許されざる。――ならば、逮捕を行うべきだ。
 共に、向かう先には元マシロ市の警察官が居た。
 ヴィランであった男は大岡川に連なる日本の霊脈を破壊して回り、横浜ナイル川計画を実行せんとしていたのだ、が――2024年、男はとある事件と携わる事となった。
 極上にして最悪のスリラー・ナイトは4月3日、その日にやってきた。
 真なるジャック・ザ・リッパー。
 彼の来日理由こそが、今、K.Y.R.I.E.の裏切り者となった油圧ワニファラオの前に佇むユアー・ヴァレンタイン(r2p000991)その人である。
 彼は伝説のレプリカを盗み出し、模倣犯染みた活動を行った。
 その時、油圧ワニファラオはユアーの執念に付き合い、戦場を駆けた。
 たった一人の女の為に男は執念と執着の果てに伝説を引き寄せ、全てがおしまいになる前に2052年へと流れ着いた。
 ――数奇な事に、今その伝説は第十区にて棒球ゲイムに興じているのだが。

 さておき。
 油圧ワニファラオという生き物はナンイドナイトメアが作り出した神秘と機械の混合怪人でしかない。
 ネオフォボス頭目であるナンイドナイトメアは油圧ワニファラオという生き物の製作者(オーナー)であり、主人(マスター)である。
 その本能よりネオフォボスの怪人として生き往くのが染みついていただけとも言えようか。
 男にとってマシロ市は、マシロ警察は、神秘対策課は、只の羽休めの地であったはずだ。
 それがどうした。堅物の同僚に、面倒事を押し付ける上司、真面目かと思えば前のめりで心配にもなる相棒――
 馬鹿げた話だ。ネオフォボスに、ナンイドナイトメアに仕えるのは作られた者の使命であったというのに。
 離れがたい。
 離れがたいが故に、ボスを、協力者であるテオフィロを逃がす為にタラリアに交渉をした。
 離れがたいが故に、熾天使とのつながりを求めていた終鐘教会(シスター・ヒルダ)がカタルモイをリタイアするべくやってきたその場面に同席した。
 すべては、相棒が。春名 朔(r2n000031)が終末論者を、終鐘教会を追っていたからだ。

「ッ、このくそやろう。テメェみたいな馬鹿野郎をぶん殴る為に、こちとら警察やってんだ!」

 ああ、愉快な事だ。思い出せばその言葉だけで白米でも食える。
 神秘対策課はみんな、そんな生き物ばっかりだ。逮捕すると制縛留置結界をも持ち出してくる狗瀬 永利(r2p000300)に、しばき倒すと宣言する宝逆・楓(r2p003024)に。
 ――殺すとまで言ってのける春名(相棒)に。
 まさか、あの日悪夢まで見せてくれた男(ユアー)に己の必殺技を振りかざすとさえも思っても居なかった。
(なあ、鬼ごっこをしようぜ、刑事さんよ。元警察官の犯人確保を賭けた大一番だ――)


 あの時、己が吐き出した言葉を思い出し、ワニファラオは小さく笑う。
「どうかしたのかい、楽しそうだね。私もちょっと楽しかったのだけれど」
 少し赤くなってしまった頬を撫でるタラリアに「何だお前」とワニファラオは呟いた。
「いや、可愛い子が居てね。アデルだったかな。パンチするっていうから、受け止めてみた。
 そしたらさ、狡いよって言いたげにルーナヴェルテちゃんって子もサラダバーしてきてね。あはは、サラダバー。最高だな、サラダバーだって! 私はスイーツ食べ放題の方が好きかもねッ」
「……」
「君は全員の事を知っているから気まずいかな? でも、ビンタされてもいいやと思う事があったから殴られてみたんだ」
 タラリアは打ち倒されてしまったKhvarenah(r2p004863)を思い出す。まさかのまさか、大地を駆けずり回り、だれかれ構わず轢殺し、思うがままにカタルモイフィールドを暴れ回っていた壊速列車 ジャガーノート(r2p007139)修理し、それをジャックして乗り回したものが居たのだ。
「私、あの子好きだな。クララヴちゃん。折角だからじゃがじゃがあげちゃった❤」
「いいのか? 決勝戦にまた乗り回されたらお前が次は轢き殺される番だぜ」
「私? ちょっと怪我しちゃうかな。まあ、でも――そうだね、決勝戦だ」
 タラリアはわずかに暗い表情を見せてから「メイがそろそろ帰って来るよ。第七戦区もおしまいになっただろうから」と笑みを深めた。
「タラリア」
 ワニファラオは男の背に声をかける。
「俺は、コスモスでもなんでも呑み食らってやる。そうして、オレの夢を――世界征服を叶えてやる。
 その為に、俺も決勝戦に連れていけ。俺はK.Y.R.I.E.じゃない。悪の組織の大幹部怪人だ」
 タラリアは振り返らないまま「そうだね」とそう言った。

 ――それでいい。何者でもない自分に成ればなんだって伝えられる。
 こんな悪人(ヴィラン)では伝えられなかった言葉以外に、何か、吐き出すことが出来る。
 ここは特等席だ。タラリア、メイ、コスモス。何だって見ていられる。

「短い間だが、よろしく頼むぜ」

 思ってもない言葉を吐き出した――「相棒」


 ※第11戦区:ミッション・エンドレスリーパー『Bonus Time!』終了しました――







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