破滅の日 - 刻陽中生徒会室


 皆で、お泊まり会をしよう――

 3月31日に、刻陽大学附属中学校の生徒会はそんな計画をした。少年少女だけの青春、この時期だけの思い出。
 一度は家に帰って荷物を持ってきて、それから――
「お泊まり会って寝れないよね」
 もぞもぞと体を起こした嘉神 ハクr2n000008の声に反応したように忍海 夏帆(r2n000020ががばりと体を起こした。
「よーし、3時に肝試しするよ、ハク!」
「どうして……」
 シロトーク『@kaho_chang』を利用して、肝試しを計画した底抜けに明るい幼馴染みは『妹がもうすぐ産まれる』ハクが出来る限り笑って過ごせるようにと配慮をしたのだろう。
「こんばんわー! ……っと、夜だしあんまり大きな声出さない方が良かったかな……?
 中等部オカルト研究会(元)部長の逆継蓮が、夏帆さん提案の肝試しを盛り上げるためにやってきましたよ!」
 明るい笑みを浮かべてやってきたのは、何故か学校に居た逆継 蓮r2p000475だった。快活な笑みを浮かべた蓮に続き、炭酸飲料を手にひょこりと顔を出したのは生徒会の手伝いをしている兎神 ウェネトr2p000078だった。
「……こんばんはー! えへへ、支援物資のお時間です」
 コンビニで買い込んだ菓子類てお手にして秋葉 舞香r2p002023はやってくる。まるで父親にでもなるかのような緊張した面差しのハクを元気付けるようにウェネトと共に声を掛けた。
「こんばんわぁ~~~~折角なのできたよ~~此処の学生さんじゃないけど……大丈夫で良かったんだよね、夏帆さん?」
「こんばんは……! 学校凄く綺麗でちょっと驚いちゃいました……!」
『刻陽生』じゃなくても良いと。その一言を頼りにやってきたのは音峯・紗菜r2p001554梵原 イオリr2p001446だった。
「歩きスマホだー!」と夏帆に現行犯確保された紫崎 天子r2p001137に、誘われてきたと笑みを浮かべたのは『4月1日』が誕生日の鵜崎 みうr2p000269
「中学校とか久しぶりに来ちゃった~、なつかし~!」
 みうと共にやってきた早吸 真砂美r2p000166は、残る仲良し2人と4月1日の朝からテーマパークに行く予定なのだ。
 夏帆の事が少しだけ、ほんの少しだけ気になる宗堂 シンジr2p000139(腕相撲には負けてしまった)に誘われやってきた女子高生は懐かしい中学校舎をきょろりと見下ろして。
「みなさんで集まってたんですね」
 穏やかに微笑む天音 瑠璃r2p001888と、生徒会室は大盛り上がりだ。神寺 一弥r2n000019はといえば「なんですかこんな時間に春休みとはいえ……」と呟いた。
 新学期を前にして季節外れの肝試し。一番に怯えるのは一弥だと指摘をするハクに「びっくりとかねえし!」と少年は首を振る。 「じゃあ急に驚かしても良いのかなぁ?」
 揶揄う紗菜に「三時からかー!」とみゆがスマートフォンの時間を確認したのが1時57分。母から何処に居るのと電話が掛かってきて――

「ん? なんか物音」

 ハクがそっと顔を上げた。『2時』――それが『世界が大きく姿を変えた時間』と言われている。
 彼等が時計を見た最期の時刻が2時だった。物音に、木ノ崎 美夢r2n000053が怯えた顔をする。一弥と顔を見合わせて「先生を呼ぶ?」と囁き合った。
「ん、もう肝試し開始ですか……?」
 不思議そうな顔をしたイオリに「びびらせんなよ」と一弥が首を振る。肝試しはまだな筈――轟く音に、足下のぐらつき。慌ててテーブルを掴んだ瑠璃が振り仰ぎ――
「……電波が繋がらないでござりゅな」
 ウェネトはそう呟いた。舞香が後ずさる。SNSで拡散される動画には白い翼の『バケモノ』と、辺り一面の火の海だった。
「いや、エイプリルフールのフェイク動画……でしょ。ねぇ、これ。多分、きっと……」
「何が起きてるの? 何が……」
 驚く天子に窓から外を仰ぎ見ていた夏帆が「ね、ねえ、あっち、ハクのお母さんの病院じゃ……ハク? ハク?」と呼び掛ける。
 呆然と一点のみを見詰めるハクはあんぐりと口を開けたまま、その柔らかな空色の瞳に焔を映す。
「会長殿!!」
「……ご、ごめん。ぼーっとしてた……。取りあえず先生を呼んでくる。ここは寧ろ安全なはず。避難にも使われるはずだから。
 先生方にも内線連絡しておくね。美夢さん、ありがとう。それから……ええと……それから……」
 懸命にハクが言葉を紡ぐ。シロトークだけは繋がっていると誰もがスマートフォンに目を落とす。2時15分、まだ、誰もが何が起こったのかを理解出来ない儘に拡散される情報に翻弄され続けていた。
「……とりあえず、ここに僕らは留まって、避難。さっきお菓子とか買ってきたから、お腹空いても一応は何とかなるはず。
 もし、シロトークで知り合いとか連絡取れるなら、来て貰って……こ、講堂も空いてるから。近所の人だったら避難所で落ち合えるかも、しれ、ないけど……。し、しれない、けど……」
「ごめん会長、おれ生徒会だった。だめだこんなじゃ。がんばらないと……」
 ――ふと、ハクと一弥から目を逸らした紗菜が息を呑んだ。
「なんか……天使みたいな化け物がですね……」と、蓮が外を眺めて告げたからだ。
「ま、窓の外、なんか飛んでる!!!!!」
「あれ? なに、町を襲っているの……?」
 怪異、と蓮は呟く。蓮は『異能』を有している。神秘を秘匿『する』側の人間だ。だからこそ、彼女は凜と声を張り上げた。
「あわてないでください!
 とりあえず、このあたりに居る怪異を遠ざけてきます。皆さんは、出来ればここから動かないでくださいね」
「え、遠ざけるって、え、危ないよ 蓮さん……?」
「えっ、あ、まって。蓮ちゃん!?」
 紗菜も、夏帆も、舞香も、美夢だって何も知らない。ただ、ウェネトだけが「蓮先輩殿は、”できる”人でござりゅか?」と。そう問うた。
「戦える人なら良かったんですけどねー……うちに出来るのは、助けて逃げるくらいなんで」
 ウェネトも戦う力が無い。ただ、知っているだけだと、そう告げた。それでも、2人だけに分かる言葉に舞香は叫んだ。
「何言ってるの!! ここはゲームや漫画の世界じゃないんだよ!?
 いや、もうゲームの中みたいな化け物が街を襲ってるんだけど……ああもう、もう!! なんなのぉ……何がおきてるの……?」
 蹲って頭を抱える。ああ、いやだ。お父さんも、お母さんも、友達も。
 バケモノが空からやってきて何もかもが変わってしまう。いってきますと笑った蓮を見送って、残された『普通の少年少女』は呆然と立ち竦む。
「あ、ほら、講堂の方、誰か来てるみたい。……あっちに避難するのもありなのかも」
「ここは会議室にして、いったん講堂に行こうよ。
 懐中電灯は使わないほうがいいとおもう。あそこはちゃんと避難所だしマシなはず、大人も来ると思う」
「……そうしよう。大人がいるかも知れないし。
 ここは、僕達が来る分には大丈夫だと思う。だから、何か話したいときや不安なときは此処に集まるって事だけ覚えておこうよ」
 ――講堂へと避難することに決めた子供達は、一先ずは朝を待とうと話し合う。
 これが永い永い三日間の始まり。この場の誰が2024年に留まり、2052年へと移動するのかさえまだ知らぬ儘。
 彼等は身を寄せ合うように過ごしていた。


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