遡上作戦報告書04
「楽しい学園祭だったね。いっぱい食べちゃった~」
ふにゃりと笑ったのは九美上 こひな(r2n000071)はすらりとした長身を包む愛らしいロリータドレスをふんわりと揺らす。
「すっげー食べてたよな」
じっと彼女を眺める巳笠 烈斗(r2n000033)は報告書の束を抱えて肩を竦めた。こひなと烈斗は大岡川源流域遡上作戦にて同一の編成隊に居た。
同一と行ってもその編成隊は4チームにさらに分離し、各位が天使や変異体を撃破する目的を有していたのだ。
報告書を纏め上げた烈斗とこひなは新島 環奈(r2p000029)の姿を見かけて「報告?」と駆け寄っていく。
刻陽学園の方針で学園祭を優先し、9月21日、22日と思う存分に楽しんだ後だ。23日は学園祭後の休日という区分なのだそうだが、K.Y.R.I.E.総合戦略企画部は待ってくれない。
K.Y.R.I.E.は大規模遠征の中で大人数の編成隊による任務報告を待っているのだ。全ての情報を纏め上げ、最終的には次回作戦遂行の目的地を最終決定する方針である。
「20人規模の大規模動員、緊張しましたが無事の作戦終了に安心しました」
花咲くように笑った環奈に「本当だよねえ」とこひなは笑う。「早めに報告済ませちゃおうか」と足早に向った作戦司令室の扉を叩いた。
「あ、報告書?」
くるりと振り返ったのは水代 さくら(r2p000777)。羽崎 楓奏(r2n000036)と共に大岡川の上流域へと向った能力者だ。
「水上のヴァイオリニストって名乗って居た天使と戦ったんだ。……皆無事に帰れて安心したねって話して居たところ」
「天使達が活発でビックリしたね」
「はい。こちらもお魚のような天使を撃破しました。不思議な存在が外には多いんですね」
アリシア・フルーネア(r2p004183)はほっと笑ってからとっておきのクマさんの頭を撫でた。ふかふかのぬいぐるみもどうやら無事のようだ。
「どれ程の血が流れ命が失われようと、こうして俺たちは新たな勢力圏を広げていく。
かつて『サボテンに立つ蛇を咥えた鷲』を見つけた祖先に恥じぬ開拓を行なう事には違いがないのだろう」
戦場で負った傷を確認し、ヨワリ・イツオセロトル(r2p002834)はその目を伏せる。介入階級は本来ならばこの地球に存在し得なかった存在だ。それが敵対的な対応を取っているという時点で今後についての不安は漠然と膨らむことだろう。
「――介入階級……一体如何して、あんな風に活動してるんだろうね」
悩ましげな顔をしたさくらへとこひなは「天使達も、活発だったみたいだしね」と呟いた。
「分からないことも多いけどさ! 取りあえず、報告書を提出したんだから何かウマいモンでも食いに行こうぜ!」
明るく笑った烈斗に促されてこひなはその場を後にする。その時、ふと聞こえたのは周辺地形に対してどの様なアプローチをするかと話し合うK.Y.R.I.E.の.総合戦略企画部と人事統合部の者達の姿だった。
(……沢山の情報が集まってきてるんだ。それに、遺品も一杯……ちゃんと、あるべき所にかえるといいなあ……)
「どうしたの?」
声かける楓奏にこひなはハッとした様子で顔を上げてから「ううん、何にも!」と笑いかけた。作戦遂行の連絡まで、まだ少し。今は英気を養い次に備えよう。