
白雪の降る頃に
――今年のクリスマスは雪の予報です。ホワイトクリスマスとなる事でしょう。
12月に入ってからというもののマシロ市内ネットワークの天気予想は雪予報。雪だるまが楽しげに画面上で揺らいでいるのだ。
冬晴れの空は一人の少女が齎したものであった。どんよりとした凍土の結界を打ち砕き、見えた青空は冬の穏やかな陽光を横須賀基地へと連れて遣ってきた。
さざめく潮騒に、寒々しい海風を感じさせるその場所で少女が一人立っている。
「ヒミツ」
その呼びかけへと黒森・秘蜜(r2p000247)は振り返った。
「雪だよ、いっくん。ひらひらと、雪が降っている」
射干玉の髪を押さえた彼女へと乾・依心(r2p000803)は緩く頷いた。寒々しい風はひゅうひゅうと音を立て居る。
「……風邪、引くよ」
「もう少し、風に当たっていたって誰も怒りやしないさ。それに、雪は掌に落ちてきたら簡単になくなってしまうものだからね」
掌にぽつねんと落ちた雪は簡単に溶けて行く。雪色の髪に、氷色の瞳を有した雪音(r2p000339)はその寒々しい光景であれど、どこか心地よさをも感じていた。
「……疲れただろう」
グレゴール・イレ・ディエス(r2p000095)は雪音に気遣う様にと声を掛けた。横須賀の風が傷に沁みた気がして青年は僅かに眉を顰めたか。
「いえ……暖かいような、それでも、寒々しいような。雪が降っているのに不思議な心地です」
「ああ。冬、らしからぬというと可笑しな話ではあるが……」
「トナカテクトリは我らを祝福してくれているのだ。おぉイパルネモアニの慈愛は此処に輝くのだろう」
信仰者たるヨワリ・イツオセロトル(r2p002834)は静かに空を仰いだ。
暖かな雪が降る。冬らしくないかんばせに青い化粧を施して祝福は悠々と降り注ぐのだ。
その光景を獅堂 政宗(r2p001844)は眺めて居た。
駆抜けた時間だった。青春部で、泉塾で。それから――
妹弟子は気紛れな妖精のようにふわふわと歩き回っていたらしい。彼女の事を想い返しながら政宗はやれやれと肩を竦める。
「……俺達、さ」
政宗へ、桑原 蜜樹(r2p000191)は問い掛けるような、どこか、困惑したような声音を滲ませる。
「さっき、一緒に、さ。見たよな」
それが――絵空事の貴女であったって。
絵空 白紅(r2p000568)の筆が4人一緒に走る機会を与えてくれたのは確かだった。
蜜樹の震える声音にジェイ・フォールド(r2p000598)はジェイ道場で話すように笑うのだ。
「当り前だろ。だから、俺達はラファエラ・スパーダを、」
震える声音であった。
「4人で、」
そう紡いだのは。
ひらひらと、雪が降ってくる――