
鎌倉守護結界防衛報告書02
座標消失を起こしたフレッシュが現代に現れはじめてから約九ヶ月。
人口と軍事力が増強されたマシロ市は快進撃を見せていた。
氷取沢橋頭堡の確保を初め、旧人類横須賀基地の奪還。そして氷取沢を起点とした各方面への進出。
2048年を境に音信不通となっていた鎌倉拠点との再会も、その成果のひとつと言えるだろう。
K.Y.R.I.E.のレイヴンズたちは出会った鎌倉の使者たちの依頼を受け、周辺の掃討作戦へとあたったのだった。
「かまくらって、どんなところ、なのかな? なかよくなれたら、いいな」
天使シュンヨウと変異体トウセイとの戦いに勝利し、一度氷取沢拠点へと帰還していた燈森 紫空(r2p000637)は未だ見ぬ鎌倉市内を思って呟いた。
拠点へはミレディー(r2p001559)や朝倉 蓮(r2p001946)たちが同じく帰還しており、それぞれの作戦結果を報告し終えている。
鳥箱なる砦への攻撃を行ったミレディーたち。権天使アムラを撃退できたが殲滅には至らなかった蓮たち。
「中々大変な任務だったけど、これで鎌倉の結界に認められたかしら?」
「まだハッキリとはな。けど、俺ら実力は示せたはずだぜ」
鎌倉の使者いわく、市内へと入るには結界に認められる必要があるのだという。
要するに力を示せということなのだろうと解釈して、彼らは鎌倉周辺に存在したサヴェージや天使たちの討伐を行ったのだった。
『落ちた太陽』アカネとの戦いに勝利した氷坂 敏(r2p000592)や、天使キャンドラの一団を殲滅してきた四方 ヤシロ(r2p000334)たちも目的は同じである。
「それにしても、鎌倉の人達の態度が気になりますね。他に生き残りがいて嬉しいのは分かりますけど、あまりに僕たちを歓迎しすぎている気もします」
「とはいえ、天使の討伐にも付き合っているくらいだからね。私たちとしても今は様子見が妥当ではないかな?」
「概ね同感よ。ライブをするにも観客がいないとね。それがファンならなお良いわ」
マリィ・E・テネブラエ(r2p000287)が口元に指をあててくすりと笑った。彼女のもたらした戦果報告には偽鬼と妖怪戦艦うみいかなるなんとも面妖なサヴェージの情報が表示されている。
一緒に並んでいるのは大天使スズナリ部隊の撃滅を示す戦果報告と、天使イェサイハビューとオマエヲ=ママニスルエルとのある種地獄めいた報告である。
立花 椛(r2p001244)は猫の姿になってソファですやすや眠っており、フェンリル(r2p001284)はどこか疲れた様子で隣に腰掛けている。
「むにゃ……んなー……」
「なんか、オレらの所だけ戦い方がおかしくねえか? なんだよママ化って……」
「何にせよよかったじゃない。天使に遭遇して、勝って帰ることほどいいことはないよ。大事なのはいつも『これから』だからね」
刻見 雲雀(r2p001692)が明るい調子で言って、自分の担当した山道での天使戦の記録をつけはじめる。
モニターに並ぶ記録は全てが成功というわけではないが、大部分の作戦は成功していた。
現時点で作戦の半分以上は達成されているとみていいだろう。
残る十数件の作戦がどうころぶかはわからないが、ここは信じて待つのが良い。
「んなっ」
目を覚ました椛が顔をくしくしやりながら回りを見る。
皆が無事にそこにいることを確認して、再び丸くなって眠りについた。