
第五裁決シ・ビュラ
時は来た。
今こそ黄昏の端にて停滞していた世界の、時計の針が進むのだ。
終末からは逃れえぬ。汚泥の中に逃げようと最早手遅れ。
知るがいい人類よ。世に蔓延る愚昧共よ――
万象悉く我が裁きをもってして、我が名と威光を!
第五熾天使、アレクシス・アハスヴェールは天を仰ぐように腕を広げれば。
自らの神威を。自らの絶対自負たる権能を行使せん。
――瞬間。只人には決して宿らぬ膨大な威が、より一層に膨れ上がった。
アレクシスの身中にて神秘が超速に練り上げられ……果てに転じて凝縮すれば。
顕現する。絶望の災禍。熾天使が熾天使たる由縁の、超質量の神秘が。
――『■■■■■■■、■■■■■■』起動。
されば――まず目に見えて変じたは御殿場全域だ。
天は暗雲に包まれ、荒れ狂う颶風が今こそと到来しよう。
直後には雷撃が降り注ぐ……滝が如き豪雨と共に。
ソレら全てまるで大地を薙ぐようだ。まるで全てを掃いて捨てんとするようだ。
正に天変地異。古来より人は手の届かぬ事象を崇め、畏れ、奉ってきたものである。
誰が大嵐に立ち向かおうとしようか。
誰が濁流に立ち向かおうとしようか。
事象、概念といったステージが違うモノには挑むなどという発想自体がお門違いだ。
知れ、人類よ。貴様らが誰に挑まんとしている事かを――
そして。裁きを見せつければ、天災の主の望む儘に……地上に在りし人間の姿など容易く呑み込んで砕いてしまおう。しかしソレは――
「おや……? あぁこれ等は一応、有用な人間でしたか。
ヴァルトルーデに接触させた者達……たしか終末論者などと呼ばれているとか。
――まぁ、このような塵など、どうでも良いですが」
K.Y.R.I.E.のレイヴンズでは無かった。小田原戦線で協力した終末論者達である。
アレクシスからすれば人間などどいつもこいつも同じに見えるのだ。仕方あるまい?
「祈りを捧げなさい。私に届けば見逃してやるかもしれませんよ」
せせら笑う。アレクシスは、心の底から。
一応アレらは天使を崇拝する者達らしいが、なぜ私が考慮してやる必要がある?
まぁ。私に忠誠を誓い祈りを乞うのなら、気が向いた時例外としてやりましょう。
さぁ謳え。さぁ跪け。その身の震えが何処より来ているか、魂で解せ!
我が権能の一片、此処に在り――
――ようこそアレクシス・アハスヴェール様。
――御身の裁決を確認しました。起動シーケンス・クリア。封印指定処理を解除。
――第七十二異能『滅亡の書・ソドムゴモラ』正常起動しております。
――それでは、良い粛清を。
アレクシス・アハスヴェールによる粛清が始まっています!

