ページェント・ホリディ!


 マシロ市から東京方面へと向かうならばは避けねばならない。
 人体への有害性が判明しているとなれば、そちらへの無理な行軍など推し進めるわけがない。調査として向かった能力者の肉体が崩れ行く様など見てなど居られまい。
 故に旧桜木町駅周辺から川崎に至るまで広域に広がったを避けて進む能力者たちは大和市にて雷の領域に触れ――そして緑化廃墟地帯と呼ばれた町田へと至ったのであった。
 緑生い茂る旧町田地区。その傍らである座間市や相模原市近辺は水没しており徒歩での行軍は難しい。
 ぐるりと回りこむようにを避けて旧町田地区を進軍中の能力者の行く手を阻むように姿を見せたのはサーカス団を名乗る奇妙な天使たちだった。

「――というあらすじを紹介してみたのだけれど、正答っていたかな?
 ああ、違うか! 君たちは御殿場にて熾天使と呼ばれた存在を撃破したのだったね。う~ん、素晴らしい。
 だが、その戦いの余波を受けてクラーケンと呼ばれる東京湾の魔物の眠りが妨げられた可能性があるそうだ。うん、君たちならば知っていると思うのだけれど、かの怪物は我々が愛しくてたまらぬ金糸雀姫君にとってあまり望ましくない存在なんだ」
 やけに饒舌に、やけに楽し気に語るその天使はサーカス団の団長を名乗るジュールヴェールであった。
 リスの耳を有し、仕立ての良い衣服に身を包んだその天使はステッキを手慰みのように揺らしながら楽し気に微笑んでいる。
 その勝気な瞳も、自信に溢れた佇まいも能力者たちのとして立ちはだかっているというよりもあくまもサーカス団長としての役割に徹しているからこそなのだろう。
 だからこそ、彼は友好的な振る舞いで、好意的に微笑んで、敵対的意思を余り見せていない。
 ――と、少なくともK.Y.R.I.E.はこのように認識している。彼らはあくまでも遊んでいるだけなのだろう。
 だが、しかし、彼らが当初より告げると呼んだ天使のもとへと能力者が辿り着いたならば牙を剥き敵対意思を見せるに違いはない。期間限定の友人と呼ぶべき奇妙な天使たちはマシロ市というを観察しているのだろう。
「ああ、武器を構えないで! 君たちに酷く当たるつもりはなかったんだ。
 君は……ああ、知っているよ。栗鼠たちの鼻はよく効くからね。我らの新たな友人くん、だったかな。
 ジュールヴェールだ。ジルでも、ジュールでもお好みで呼んでほしい。
 我らサーカス団は君たちの勝利を讃えているよ。どうしてって、天使だって一枚岩ではないからね!
 それに折角のホリデーだ。我々サーカス団の公演までの暫しの間、君たちにささやかなプレゼントを行おうと思ったんだ!」
 ジュールヴェールは明るく笑ってから両手を打ち合わせた。乾いた音とともに周囲には煌びやかな光が広がっていく。
 暗澹とした緑化廃墟地帯に広がっていく電灯はちかちか、と瞬きを繰り返す。彼の真性領域の効果を受け、その光はまばゆく街を照らすイルミネーションとなったか。
「ハッピーホリデー! 君たちにささやかながら我らかのプレゼントだ。
 ああ、けれど、勘違いはしないでおくれ。我々は使なのだもの……きっと、君たちにとって到底理解できない存在かもしれない。
 それを咎めないでほしい。時が来たならば特等席に招待するからね。
 ああ、そうか。とっておきの話をしておこう。次の公演は、そう――」
 ジュールヴェールの微笑みに答えるように着飾った天使たちが飛び出した。
 手荒い歓迎はどうやらチケットののかわりらしい。さあ、楽しいを過ごしてはいかが――?

 ※クエスト「ウェルカム・ペーシェント・ホリデイ!」と「わくわく精霊力実験!」が公開されました


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