「とても、とても、美しいわ――」
それぞれの太刀筋を受けきって、城田 はつる(
r2n000153)は道場用の刀を鞘におさめた。
秋風が開いた縁側から吹き抜けて、白い髪をふわりと揺らす。
Operation『Lost Arcadia V』が発動し、K.Y.R.I.E.の能力者たちは御殿場の戦場へと赴く準備を整えていた。
そして彼らが行っていることもまた、正しく『準備』であるのだ。
はつるの前に立ち、刀を携えた者たち。彼らを一言で述べるなら――武芸者と言うべきだろう。
なにせここ、磯子に新しく立てられた寮こと劔山泊は、武芸者の集う寮なのである。
そして彼らの纏う和洋折衷の黒色装束こそ、劔山泊にて用いられる
決闘衣。
戌亥 レオ(
r2p006588)は袴を揺らし、うっすらと青いオーラを灯した刀の柄を握る。
「ここで皆の剣を毎日見せて貰ってるからね! 綺麗な煌歌流も、率直な悠威くんの剣も、はつるくんがころころ変えてくれる型も。
いつもいろんな刺激があるから、なんだかすごく楽しい!」
上機嫌に、そして素直にものをいうレオにハンス シュミット(
r2p004621)が照れくさそうに頬をかいた。
「そんなに褒めても新技くらいしか出ないぞ」
「出るの!?」
「今度な」
爽やかに笑い、ハンスは広げていた鋼の翼を畳む。黒い羽織はそれを柔らかく受け止め、はらりと袖が降りた。
「かくいう俺も、脱サラ気分で道場をやれてるからな。誰かに教えたり剣を交えたりするのはいい刺激になる。悠威もそういうクチだろう?」
「まあ……」
なんと答えていいやらという顔をして、悠威は長い髪をたらして目元を隠した。
自分が自分らしくあれる場所。あるいは、新しい自分を見つけられる場所。更には、自分の技を研ぎ澄ます場所。
彼らは日々道場や修練場にて相対し、技を交えては鍛え続けている。
「人の死は時に、技を途絶えさせるもの。このマシロ市が灰燼となるのなら、この技もまた消えてしまうのでしょうね、同志様」
はつるは目を閉じて呟いた。
「そりゃあ惜しい。
未明に
猫次郎(r2p006692) 、それに
紫音もか。皆、良い技を持ってるからな」
ハンスが指折り数えているが、劔山泊に集まる武芸者は幅広く、そして数もまた多いのだ。
「ええ。
久遠様、
ミリアナ様、
ゆめ様……どれも失われては困るわ。まだ、交え足りないもの」
はつるが頬に手を当てると、レオがぴくりと肩をふるわせる。
「そ、そういえば他の道場も軌道に乗ったのかな!
アルフィンレーヌさんとか
琴里さん、あと
ロックさんも道場を開いてたよね」
「結構、門下生もいるみたい。レイヴンズから直接技を教わる機会って、そんなにいいのかな……」
悠威が小首を傾げると、レオが大きく頷いた。
「みんな強くなりたいんだよ。それに、
バンリくんとか
千日くんともここで暮らしていれば日頃から決闘できるしね」
少し瞳を閉じるだけでも思い出は駆け巡り――その全てが己の身に、技に、宿った今がある。あげた名はその中のごくごく一部だ。それこそ挙げだしたらきりがない。
開いた瞼に光がよぎり、彼らは漸く歩き出す。
守りましょう。彼らの技を。
繋ぎましょう。彼らの武を。
その手段をもう、私たちは知っている。
奪おうというのなら。潰そうというのなら。
「――決闘よ、天使様」
・*+.Autumn Novel Campaign.+*・
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