黄金のレイライン


 ――豊穣変生・枯ウカノミタマ・渇の七つ夜セヴンズナハト

 天より黄金色の米粒が舞い散る。
 光り輝くソレは遠目に見据えれば美しい、幻想的な光景にも見えるが――
 それは決して人にとっての恵みではなかった。
 天使であれば傷が治癒されし神からの恩恵であったが。
 人が触れればだったのだ。

 そう、これは――アレクシス・アハスヴェールによる権能攻撃である。

 大規模な事象だ。能力者レイヴンズならばともかく非能力者ナチュラルではとても太刀打ちできない。
 故、アレクシスを止めるにはやはりレイヴンズの力が必要だが。
 ……米の現出という事象。レイヴンズには、
 この力。どこかで見た事があるような――
「……分かり合えないな。やはり天使とは」
「猊下、やってきたよ。君の死神がね――!」
 アレクシスの傍へと踏み込んだのは月城 ソラ(r2p001474)にエクリヤ・メサイオン(r2p005396)であった。両名共にアレクシスの厄介たる権能をなんとか封じようと――ルチル(r2p000057)と共に踏み込む。
「るー達を、舐めるななの!」
 狙うは天冠。熾天使の権能を乱さんと総力を持って突入し――
「ほう……? まさか私の権能自体を直接狙おうとでも?
 フ、フフフ、フフフフフ――あぁなんたる無謀か。
 。頭を撫でて誉めて差し上げましょうか?」
「――ッ、う!」
 しかしアレクシスは崩れない。
 超越の衝撃波シチマキノケショウを放ちレイヴンズを吹き飛ばそう――
 アレクシスの権能攻略……狙うのならば、究極の問題が一つある。

 それはアレクシス・アハスヴェールが単純にと言う事だ。

 陳腐な表現だろう。だが、そうとしか言いようがない。
 。近寄る事すら至難。権能自体を狙うなど針の穴を通すどころか、深淵の奥底にある極小点を狙いすまさなければならない様なものだ――故に。

「――準備は整った! アレクシスの余裕そのものを突き崩してみせよう」

 学園長である匠はルチル達が攻勢を仕掛けてくれて生じた間隙を突いて、準備を進めた
 第五熾天使迎撃作戦ブリーフィングで語っていた、レイライン攻撃作戦を!
 鎌倉に残留せし怨霊呪いの転用計画も準備が整った。多数のオベリスクと第五熾天使の軍勢天使級の粉砕によって叶った、無線通信によって皆に連絡を取り。
「この一撃で、奴に隙を作る! 皆は時を逃さず攻勢を――」
「――ほう? 霊峰に連なる地脈攻撃……いわゆるレイラインを活用するつもりですか」
 だが、その時。千里の果てまガルーダで見通す権能・アイズは斯様に大きな地脈の動き異変を見過ごす事は無く……
「そちらに関してはターリルが動いていた筈ですが……仕損じた、と言う事でしょうか?
 彼女を上回るとは、貴方達もそれなりにやるようですね。
 しかし……思い至りませんでしたか? 考慮しませんでしたか?
 そもそも霊峰に降臨した私が
 ?」
 同時。アレクシスが極大の神秘を顕現させる――

 ――権能名『豊穣変生・枯ウカノミタマ・渇の七つ夜セヴンズナハト
 ――権能名『第五元素・因果律干渉エーテル・パラダイム
 ――権能名『悠久たる掌握ゼロ・コントロール

 ――権能複数行使。大地浸食

「なッ――これは――」
「レイラインに蓄えた力は私が有効活用してあげましょう。
「あかん! まさかこんな……!」
「そんな事はさせないわ! 対抗措置を走らせる! 奪取前に射出定義も! 急いで!」
 無線通信の先から聞こえた慌てる声は、せをりに六華か。
 
 第五熾天使は傲慢だが、無知ではなく愚鈍でもない。自らがレイラインを確保しなかったのは、必要がなければあまり派手な動きをしたくなかったのと……万一に人が活用してきたのなら、
 端的に言えば――。アレクシスの目論見通りに事が進めば、
 K.Y.R.I.E.は奪取権能への抵抗と、ハックされるよりも先に射出を行わんと試みるが……無数の権能による力と侵食は尋常では無かった。
 事、直接的な力と力のぶつかり合いならまだしも――
 魔術や権能の技法で争うなら、第五熾天使の魔業は圧倒的なのだから!

「全部ぜんぶ、自分の掌の上で踊らせる事が出来てるつもりでしょうか?
 脚本家神様気取りの天使様。人間を……あまり舐めるなァ!!」

 であればとリーラ・ツヴァング(r2p000085)が往く。彼女は胸中にアレクシスを殴らんと。
「アレクシスを崩すぜ! 権能展開しながら人類まで排除できるか……やってみなぁ!!」
 更に紫桜 ユーナ(r2p000297)も前に出でてアレクシスの意識を逸らさんと立ち回るものだ。
 天を封ずる。と己らを名付けた面々は、果断なる覚悟をもってアレクシスへ攻勢を仕掛けよう。
「……アレクシスによる損害が大。しかしまだ。
「ハッ……あんだけ気合の入った兵隊サン達を見せられたんだ。
 こっちも燃えなきゃ嘘ってもんだろ。行くぜ、神サマ気取り……!」
「どんな敵が相手でも! 第五熾天使でも! ボク達に倒せない敵なんて――いないよ!」
 只野 白子(r2p000765)の援護も受け取りつつ、紫乃崎 栖(r2p000386)と甘咲 セララ(r2p000056)も攻勢に参戦。
 栖は魔の弓を引き絞り放てば障壁を打ち破り、その間隙を縫ってセララは跳躍。
 天雷招来。振り上げる一撃こそ、彼女の渾身!

 ギガ――セララブレイクッ!!

 轟音と共にアレクシスへ撃が迫る。無数の障壁が硝子のように割れて――
「シン、お前の花道はアタシが作ったる! ド派手に決めてこい!」
 更にナタリア・トゥオーノ(r2p000741)が続く。すぐ傍には、シン=リトル(r2p000771) とウルリーカ・ニルスドッティル=光明院(r2p003861)もいて。
「リトルさん……! 死ぬのは許さないからね……!!
 光明院・リヒト=光の娘として! 決して認められないわッ!!」
「――大丈夫。大丈夫です。。その想いは一緒ですから!」
 往く。アレクシスによって魔術の神矢千以上の殺意を放たれようと。
 シンを送り届けんとナタリアは竜の障壁を展開。
 死地への道であろうと切り拓き、シンを連れていくのだ!
「来ましたよアレクシス! アレクシス! アハスヴェール!!!」
 数多の死線を乗り越えシンは告げる。
 ……相手は強大。もしかすれば死ぬかもしれぬ。
 だが危険に臆してなんになろうか? マシロ市の子供達を救えるか?
 、行こう。
「これは、貴方に贈る、生きてきた証」
 遍く苦痛。纏め総じて奉る。
 神よ知るがいい――安楽死エウタナシアの痕跡を。
 力は顕現し、収束し、第五熾天使へ突き走れば!

。悪くない異能です。
 だが……足りませんねぇ。少なくとも

 アレクシスはせせら笑う。
 封天の総力によって放たれた一撃は尋常ならざる一閃として障壁を突き破り、果てには確かにアレクシスの身には届きを届かせた――のだが。

 ――レイライン・ハック最終段階。ソドムゴモラへの接続を開始。

 止まらない。
 このままでは奪取の方が先に行われてしまうだろう。故に……
。手立てがあるんですよね? なら……行きましょう!
 こんな時に後を押すのが『太陽の翼教』の務めなのです!!」
「ソドムゴモラ、一個人の力ではとても抗えぬじゃろうな。じゃが……K.Y.R.I.E.のレイライン攻撃もあり、我らの力もまた束になれば――道は開けよう」
 迦陵羅・ルラ(r2p000241)にエミリア・マクロプロス(r2p003477)が動く。彼女達の狙いは一点……
 であった!
「しつこい……人類は、なんとなのでしょうか」
 直後、アレクシスはを張り付け……同時に衝撃波シチマキノケショウを放つものだ。雷撃や噴石ソドムゴモラと共に襲い来る数多の悪意はレイヴンズ全てを薙がんとする程の勢い。
 それでもレイヴンズは抗う。
 倒れない。諦めない。使えるもの、出せるもの全て出し切るまでは!
「ありったけを……ここで切ります! 魔法少女は絶対に、絶対に負けないんだぁ!」
「……奪わせない。天使には、マシロも……誰も何一つ」
 直後には葉許 譲葉(r2p004149)による治癒術が巡り。
 エリザベス・ゴドウィン(r2p001968)の魔の砲撃が放たれ噴石の迎撃と成そう。
 あぁ――宇宙飛行士になるのが夢だった。
 困難に立ち向かい、真っ暗な宇宙を希望で照らす。
「私の憧れ」
 今、行こう。
 暗闇の中に跳びこみ、自らが光となって。
 大地を、皆を――照らすのだ! 
「――見えた」
 その時、エリザベスの瞳に未来が見える。
 金獅子姫の瞳きんじしひめのひとみは最善の道筋を映すのだ。
 その瞳が告げている。と――!
「ゆずちゃん、エリィ、エミリアさんにルラさん、どうか力を……!」
 であれば誰も止まらない。誰も諦めない。
 卯槻 咲月(r2p000433)は紡ごう。仲間を、友達を、戦友たちを護る為。
 そして何より約束を果たす為――

 ――思い出は今はワンダーランド遠き夢の中に・ドリームス

「無駄です。何を企もうと、私が止められないとでも……何?」
 ソレは咲月の全盛の力を一時的に引きずり出すモノ。
 地球の一片から力を借り受け――地形全てを操作する異能だ。
 その力をもってして天災引き起こすソドムゴモラに抗する……!
 想像を絶する力と力。信念と悪意の衝突は、尋常ならざる域に突入する。
 ――アレクシスには自信があったろう。人間如きが何をしようが己に届く筈はないと。
 しかし……流石のアレクシスとは言え巨大な神秘の塊であるレイラインを強奪するのは片手間とはいかない。
 其方に大部分のリソースを割かれている上で、自身の護衛群の大量損失。
 並びにレイヴンズ達の怒涛たる一斉攻撃も加わった結果――
「まさか、このような……!」
 アレクシスのが、鈍い……!
 多数の過負荷の果て。ソドムゴモラ自体は健在だがようだ。一瞬だけアレクシスの貌が固まる――このような事は前代未聞であればこそ!
 消耗を厭い、余力を残さんとする戦い方がここに来て負の貌を出して来た。
 或いは、熾天使の出力なら、そもそも全ての干渉を叩き潰していただろう。
 
 或いは、護衛の天使軍が万全であったなら話は別だったろう。
 そもそもレイヴンズを近付けさせず自身へ満足に干渉させる事すら許さなかった。

 だが、

 彼らは『焔を超えて』前に進み続けた!
 如何なる大軍であろうと。如何なる困難が待ち受けていようと。
 ルチル達の、シン達の、咲月達の……弾き飛ばされようとも諦めぬ攻勢の数々に加え。アレクシスに打ち勝ち、未来を紡がんとするの総てが――この一筋の希望を生み出したのだ!
「…………!」
 第五熾天使は表面上、極めて平静を装いながら。
 次の瞬間には――
 しかし、ほんの数秒。確かに生じえた空白の狭間が決定打となる!
『――よし! ! オール・グリーン!!』
『行けるで! 今なら奪われへん――爺ィ!!』
『承知した! 撃てェ――ッ!!』
 K.Y.R.I.E.が奪取前にレイライン攻撃の準備を整えた。間髪入れず実行に移せば。
 地脈から放たれた圧倒的な神秘の奔流がアレクシスに射出され――

「――――塵芥共がッ!」

 使


 アレクシスの戦場で、レイライン攻撃が行われたようです――!

全体シナリオ『誰が為のオラシオン』が始まりました!

浴衣2053コンテスト結果発表!

シーズンテーマノベル『鶫は鳴いていたか』

🎄クリスマスピンナップ2053🎄