ようこそ、K.Y.R.I.E.へ。


「もう慣れて来ましたか?」
 穏やかに微笑んだのは嘉神 ハク(r2n000008)。K.Y.R.I.E.のオペレーターの一人であり、刻陽学園学友会連合ブラックシープの連合会長その人だ。
 彼は2024年当時の刻陽大学附属中学校の生徒会長であり、刻陽学園設立時から学園経営に尽力してきた功労者の一人でもある。
 年齢は40を越えたが『中学二年生』として学校に籍を置き、学友会の運営に尽力しているのだそうだ。
「何か困った事があれば声を掛けて下さいね。……思えばフレッシュの皆さんがやってきたあの4月1日から随分と時が過ぎましたね。
 それでも、マシロ市内は未だばたばたと慌ただしいことには変わりはありませんが……。
 皆さんのバイタルチェックや状況把握などは概ね出来たと報告が上がっています。能力者の皆さんはK.Y.R.I.E.に在籍して頂くので問題ではないのですが――」
 何処か歯切れの悪そうなハクに「どうした、ハク?」と声を掛けたのは忍海 幸生(r2n000010)だった。
 ロストエイジと称される2024年4月1日以後に生まれた世代は大破局を知る事は無いが、産まれた時から常識的に天使が存在し、世界は荒廃していたのだ。
 そんな彼は刻陽学園での訓練中にK.Y.R.I.E.に呼び出されてやってきたのだという。
「幸生、呼び出しですか?」
「そう。何か、課外訓練みたいな感じで外に出るんだろう?」
「はい。丁度その説明をしていました。ええと、何処まで話したかな……」
 ハクは資料をまじまじと見詰めた。そう、マシロ市という人類最後の『楽園』には無数のフレッシュがやってきた。
 ハクのような2024年から地続きに過ごす『ヴェテラン』、幸生のように2024年以後に生まれた『ロストエイジ』――それから、4月1日にやってきたフレッシュだ。
 彼等は唐突な座標消失により、2024年4月3日に姿を消し、突然、その姿を現したのである。
 当然ながら非能力者である一般人も数多く存在し居住エリアや食糧を圧迫している。何もかもが足りないという状態だ。
「フレッシュはマシロ市外に転移している可能性もありますし、それに、此の儘マシロ市に閉じこもっていることも出来ません。
 能力者の皆さんが増えた……と云う事は、戦う手が増えたという事です。この一ヶ月、突然武器を渡されて戦闘訓練にバイタルチェックと大変でしたでしょうけれども……」
「まあ、慣れてねぇのに突然武器を持て、戦えって、可笑しな話だよな。すげぇ負担だったと思う」
 幸生は「上もひでぇよな」と困ったような笑みを浮かべて見せた。
 しかし、それも仕方が無いと言い切るしかない。此の儘、痩細ってゆく事を是とは出来ないからだ。
「それで、皆さんにはマシロ市外の周辺地域だけですが、警戒やフレッシュの保護を行なって頂くという話しがあるのです。
 心の準備をお願いして置いても良いでしょうか? 勿論、僕も、ここにいる幸生もサポートしますよ」
「ああ、任せてくれよな」
 にかりと笑った彼とハクは随分と距離が近い。ふと、傍に居たフレッシュが二人の関係性を問うたか。
 顔を見合わせる幸生とハク。その光景は『刻陽中学校に通っていた一人の少女』を思い出させる。
「ん、まあ、家族みたいなもんかな。ハクは俺の兄みたいな感じ」
「兄って、随分年が離れてますよ?」
「でも、見えないんだよなあ……外見的には弟っぽいし」
「まあ、そうですね。よく言われました。君の母さんにも――っと、僕らのことは良いじゃないですか。
 あなたにも丁度K.Y.R.I.E.への呼び出しがあったみたいですよ。よければ作戦司令室を覗いてみて下さいね」
 そう微笑んだハクに促されて覗き込んだ作戦司令室では――

「食うなって話しだよ! 腹を守ってくれ、な?」
「いいや、食える」

 何故か牛の形をした変異体を食えるか食えないかを言い争う能力者の姿があった。

 ※テーマノベル『ようこそK.Y.R.I.E.へ!』が開始されました。
 ※座標消失より復帰したフレッシュが2052年のマシロ市に合流しました!
  現在、そして以後の時間軸は5/4(リアルタイム)に合流しています。

 ※参考として公式ノベルもご確認下さい!

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